週次レポート 平成 27年 3月 23日 ドル全面高反動、ドル安の持続性にらむ 米指標、ギリシャ、期末需給、原油など焦点 今週の為替相場は、ドル全面高の反動調整によるドル安の持続性をにらんだ展開が想定されよう。週間予 想はドル/円が 11 8.20-121.50円、ユーロ/ 円が 129 .2 0-131.80円。18日 FOMCを契機に米 FRBの 6月利上 げ観測が後退しており、広範な通貨に対して膨張してきたドルロング(買い持ち)の巻き戻し持続が注目さ れる。材料面では米国の指標やギリシャの経済改革案、国内外の期末需給、原油動向が焦点となる。ただし、 ドル/円は、国内の輸入企業や機関投資家などによる「ドル買い遅れ」の押し目買い需要が根強い。 調整のドル安・原油高、いずれ米債金利の上昇に 「18日の米 FO MCでは完全雇用の概念である NAI RU (インフレ加速を伴わない失業率)が実質的に 5 .0%方 向へと下方修正されており、FRBの利上げは早くても 1 0月以降に先送りされる公算が高まってきた。年後半 にかけて NYダウは 2万ドル方向を目指す可能性が出てきた一方、ドルはドル/円を含めてレンジ横這いに移 行しよう」――。 大手米系証券の元調査部長でもある海外ヘッジファンド幹部は、このような見通しを示す。1 8日 FOM Cで の参加メンバーによる長期的な失業率の見通しは 5 %から 5.2%となり、昨年 12月予測の 5. 2-5.5 %から改 善低下となった。それでも失業率が 4 .8-5. 1%のレンジに低下すると予想される 2017年まで、2%のインフ レ率は実現しないと見なされており、FRBでは利上げの後ズレを可能にさせる低インフレ長期化に安心感を 強めている。 FRBによる 6月利上げ観測の後退を受けて、前週からは広範な通貨に対して積み上がってきたドルロング・ ポジションの巻き戻しが後押しされている。前週はギリシャ追加支援を巡る協議も進展が見られ、ユーロ安 の流れが一服。さらに原油相場は中国などの世界的な景気刺激策への期待感や、米国を始めとした原油減産 の進捗、春以降の世界的な資源エネルギー需要の見込みなどから反発へと移行している。目先は海外勢の 1 -3月決算に向けたポジション手仕舞いなどもあり、調整ドル安とユーロ反発、原油反発、資源国通貨反発( 豪 ドルや NZドル、カナダ・ドル、南アフリカ・ランドなど)の賞味期限を吟味していく展開となる。 ドル/ 円の週足テクニカルでは、一目均衡表の転換線 119.34円前後(23日東京市場時点、以下同)、13週 移動平均線 1 19.24円前後などでの下げ止まり攻防に直面してきた。各ラインともに方向性は横這い化してお り、こうしたラインを中心としたレンジ横這い化とドルの値固め相場の持続が示唆されている。ただし、完 全に割り込むようなら、短期的にドルの下値余地が拡大。日足・一目均衡表の雲の上限 1 18.71 -74円や雲の 下限 118.19円割れなどへの下押しオーバーシュートの余地が残されている。 もっとも F RBによる利上げ後ズレ期待は、米国株を始めとした世界株高や原油を始めとした商品相場の上 昇を支援するものだ。ギリシャ不安の一服とあいまって、グローバルなリスク選好相場を後押しさせる。ク ロス円では円安要因となり、ドル/ 円から派生するドル安・円高の圧力を制御していく。 同時に米国債市場では、これまでの原油安・ドル高によるインフレ押し下げや、安全逃避による金利低下 (債券価格は上昇)の圧力を緩和させる。その意味で現在の調整的な原油高・ドル安は、米国での過度な低 インフレ懸念に歯止めをかけ、いずれ米債金利の上昇とドル反発に作用する潜在余地が残されている。その 他の注目ポイントは以下の通り。 <米国の経済指標> 米国の経済指標は伸び悩みが相次いでおり、今週も下振れが警戒されやすい。24日の 2月消費者物価指数 (CPI)は改めてインフレ低下の可能性が残るほか、2 4日の新築住宅販売は寒波や賃金低迷などが打撃とな る。25日の 2月耐久財受注についても、ドル高や世界減速、資源エネルギー関連の設備投資削減などが悪材 料となりそうだ。 ただし、27日の 1 0-12月 GDP確定値は、オバマケア(医療保険改革)に伴うヘルスケア関連の家計支出 増加などが上方修正を支援する。27日の 3月ミシガン大学消費者信頼感指数に関しても、寒波反動や雇用回 復などによる堅調さが注目されよう。 <ギリシャ経済改革案と追加支援> 前週末のユーロ高・ドル安は、ギリシャが経済改革案の適切なプログラムを提示すれば、 「ユーロ圏諸国の 財務相らはギリシャへの救済資金支払いを承認することがあり得る」という EU当局者の発言が一つの材料と なった。23日以降もギリシャとドイツの首脳会談で詰めの調整が予定されており、ギリシャによる独自の改 革案提示と EUによる追加支援の実行が目先のユーロ反発材料として注目されやすい。 さらにユーロについては 20日、米国のルー財務長官が「もし欧州の成長が改善すれば、相対的な通貨の価 値に変動がみられる」、「欧州の成長が上向けば、為替市場に反映される」などと発言した。すでに欧州の指 標はユーロ安や資源安、欧州中銀(ECB )の量的緩和などで下げ止まりつつあり、今後は経済ファンダメンタ ルズに即したユーロ安の行き過ぎ反動調整が焦点となる。今週については、25日の 3月ドイツ IFO景況指数 の改善が注目されやすい。 <国内外の期末要因> 海外勢は 1 -3月の四半期末が迫っており、ポジション調整や期越えドル調達の一服などによるドル全面高 の巻き戻し余地が残されている。一方、日本企業は 3月に年度末決算が迫ってきた。1-3月からは輸出が復 調しており、月末に向けて輸出企業によるドル売り・円買いがドルの上値を抑える可能性をはらむ。もっと も国内勢全般の為替需給動向では、「圧倒的にドルの買い遅れが旺盛」(財務省幹部)という。日本では輸出 復調でも貿易赤字が続いており、3月期末や 4月以降の新年度明けを見据えて、ドルの下落局面では輸入企 業のドル押し目買いが想定される。 さらに日本では公的年金や関連共済、郵政マネーなどが、運用改革によって先行き外債・外国株投資を拡 大させる計画だ。新年度明けからは民間生保なども外貨建て資産の拡大方針を示しており、3月段階からド ルの下落局面では、「ドルの仕込み買い需要」が漸増していく余地がある。 その他、日本企業は外国企業の買収を急増させている。米商務省が 19日発表した 2014年の外国直接投資 統計では、企業買収を含めた日本からの対米投資額は年間 377.25億ドル(約 4.5兆円)となり、国別ではトッ プとなった。今後も 3月期末に向けた駆け込み手当てを含めて、外国企業買収に伴う外貨支払いが潜在的な 円の戻り売り要因となる。 <中国指標と資源国通貨> 今週は 24日に中国の 3月 HSBC製造業 PMIが公表される。中国では景気刺激策や地方債務支援策への期待 感などから株価が反発しており、経済指標も改善が期待されやすい。中国の減速が一服すると、改めて商品 相場や資源国通貨(豪ドル、NZドル、カナダ・ドル、南アフリカ・ランド)などの自律反発が後押しされる。 週足テクニカルで NZドル/円は、18週移動平均線 90. 6 3円前後(23日東京市場時点、以下同)の上抜け回復 に直面。豪ドル/円は一目均衡表の雲の下限 9 3.46円前後、ランド/円は 52週線 9 .9290円前後といった重要 節目ラインの上抜けと、各ラインなどを下値メドとした下限切り上がりへの回帰の攻防となっている。 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報によ って生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの内容は、 投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最 終判断はお客様ご自身でお願いします。 ---------------------------------Japan Economic Pulse Co.,Ltd. ----------------------------------
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