秋津第8 次調査出土イネ種子の放射性炭素年代測定結果をうけて

秋津第 8 次調査出土イネ種子の放射性炭素年代測定結果をうけて
平成 27 年 3 月 20 日
奈良県立橿原考古学研究所
1.経緯
平成 25 年(2013 年)度の秋津遺跡第 8 次調査において、弥生時代前期水田遺構の精査中に、果皮のない
胚等の細部形状が良好に遺存した、玄米状のイネ種子(以下、
「イネ種子」と記載する)が 11 粒出土した。
平成 26 年(2014)1 月 12 日に橿原考古学研究所で開催した第 355 回研究集会(1 月は研究所関係者の懇親
会である「イノシシの会」に先だって開催している)において、イネ種子出土に触れたことを契機とし、
研究集会に出席していたマスコミ関係者からの依頼をもとに 1 月 15 日以降に事実関係についての取材を
受け、1 月 20 日以降に弥生時代前期の玄米として報道されたところである。
出土状況からイネ種子を弥生時代前期前半の水田遺構に伴うものと判断していたが、平成 26 年度に実
施した放射性炭素年代測定の結果、イネ種子は現代に帰属する可能性が高いという結果が出た。
2.放射性炭素年代測定の結果
資料についての分析の一項目として理化学的な年代観の検証を行うために、イネ種子内の同位体炭素を
用いた放射性炭素年代測定の分析をおこなった。資料の破壊を伴う分析となるため、他の分析項目を検討
した上で 2 粒を選定し、H26 年 9 月 3 日に株式会社パレオ・ラボに分析を委託したところ、2 粒とも暦年
較正年代値が 1955~1956calAD(95.4%)を示し、イネ種子の年代は現代に帰属する可能性が高いとの結果
を 10 月 20 日に得た。
放射性炭素年代測定は、試料の汚染や付着物などにより影響を受ける可能性もあるため、検証のため新
たに 2 粒を選定し、2 回目の放射性炭素年代測定分析をパリノ・サーベイ(株)に平成 26 年 11 月 4 日に委
託した。平成 27 年 1 月 22 日に得た分析報告によると、パレオ・ラボの測定結果と同様に現代のものであ
るとの測定結果となった。
分析委託先
パレオ・ラボ
パリノ・サーベイ
測定番号
PLD-27463
PLD-27464
IAAA-141901
IAAA-141902
資料番号
No.8
No.9
No.1
No.7
暦年較正年代
1σ(68.2%)
2σ(95.4%)
1956 AD-1956AD
1955AD-1956AD
1956AD-1956AD
1955AD-1956AD
1956AD-1956AD
1955AD-1956AD
1955AD-1956AD
1955AD-1956AD
3.イネ種子の年代観の訂正
弥生時代前期前半の水田遺構に伴うとした「イネ種子」について、改めて検討した結果、調査区外から混入
した可能性が高く、弥生時代水田遺構に伴うものではないと判断するに至っている。平成 26 年 1 月の報道は
この測定分析以前の見解にもとづくものであり、ここに訂正を行う。
秋津第 8 次調査
調 査 地:御所市池ノ内
調査期間:平成 25(2013)年 4 月 15 日~12 月 26 日
調査面積:5.000 ㎡
秋津遺跡8次調査位置図
弥生時代前期前半水田 完掘状況
南から
№7
№1
イネ種子試料