<スペシャル・レポート> 2015年3月19日 レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社 ブラジルの大規模デモと政治・経済動向に関する現地情報 ブラジルでは3月15日に大統領への抗議を目的とした大規模なデモが発生し、政治的な 混乱が金融市場にも波及し不透明感が出始めています。レッグ・メイソン傘下の運用会社ウエ スタン・アセット・マネジメントのブラジル拠点、プロダクト・スペシャリスト、マルセロ・グターマン氏 からの現地情報を基に、足元での大規模デモがブラジルの政治情勢や信用格付、為替相場 に与える影響についてご紹介します。 ウエスタン・アセット マルセロ・グターマン氏 3月15日の大規模デモは平和的に進行 ルセフ大統領への支持率の低下がデモの背景 ジルマ・ルセフ大統領への抗議のため3月15日に発生し 今回の大規模デモの背景には、ルセフ大統領への国民 たブラジルの大規模デモは、参加者が約150万人へ拡大 支持率の低下があります。3月17日公表の世論調査では、 するなど予想よりも大規模なものとなりました。今回のデモ ルセフ大統領を「とても良い」あるいは「良い」とした回答は は、国営石油会社ペトロブラス社の汚職問題への十分な 13%へ急低下しました(2014年12月時点:42%、図1)。 捜査を要求することも目的とされてたものですが、大勢の ルセフ大統領は2014年10月の大統領選挙の際、低所 家族や子供もデモに参加するなど抗議運動は平和的に 得者層支援のための緩和的な政策を公約としていました。 進行しました。 しかし、2015年1月の政権発足後は、財政均衡化のため また、今回のデモは野党によって起こされた政治的な活 国民に不人気な引き締め政策を導入し、国民からの支持 動ではなく、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS) 率低下を招いています。また、ペトロブラス社の汚職問題 等を通して市民の自発的な声掛けによって人々が集まっ に与党関係者を含めた政治家の関与が疑われていること たものです。次回のデモは4月12日に実施が計画されて も、大統領の支持率の低下に影響していると考えられます。 いますが、今後、抗議運動が安定化に向かうかどうかは、 汚職問題に対する政府側の対応策や検察当局による 捜査の進展にかかっていると考えられます。 ルセフ大統領が罷免される可能性は低い 3月15日のデモではルセフ大統領の退陣が叫ばれまし たが、実際にはルセフ大統領の弾劾について、ブラジル 国民やデモに参加した人々、そして、野党の指導者の間 図1:ルセフ大統領への支持率の推移 でも皆が合意しているということではありません。 70% 「あなたはジルマ・ルセフ大統領をどう評価しますか?」 2014年10月 ブラジル 大統領選挙 60% 50% 62% その理由として、第一に、ルセフ大統領自身のペトロブラ スの汚職問題への関与は明らかにされていません。 第二に、ブラジル国民の大部分は、長期間に及ぶ政治 とても良い、良い 的混乱を伴う弾劾プロセスを実施することには必ずしも前 向きではありません。 40% 第三に、デモ参加者を含むブラジル国民の多くはよほど 30% の理由がない限り、民主的な選挙によって選ばれた大統 20% 領の弾劾を望んでいません。 とても悪い、悪い 13% 10% 弾劾プロセスが引き起こされるケースとして唯一考えら れることは、ルセフ大統領とペトロブラスの汚職問題の関 0% 2011年 2012年 2013年 2014年 (出所)世論調査会社Datafolha (期間)2011年3月16日~2015年3月17日(直近調査) 2015年 連性が認められた時ですが、現時点では、起きる可能性 は低いものと考えられています。 ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて 作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で 配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。 <スペシャル・レポート> レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社 図2:ブラジル国債の信用格付の推移 ブラジルの信用格付について 110 A 100 A法案を議会で通さなければならない重要な時期に、大統 90 BBB+ 領が弱い立場にいることは好ましいことではありません。 BBB 80 大統領への対立姿勢を強める議会は政権との交渉を通じ BBB70 て、財政健全化策の承認を行うものと考えています。 BB+ 60 実際、先週3月10日には、政権と議会の間で所得税の BB 50 最低課税水準の引き上げ等に関して合意がなされるなど、 BB40 政権と議会の間の関係には改善の兆しがみられます。ま B+ 30 た、議会との交渉を取り仕切ったレビィ財務相は議会から B 20 の信認も厚く、優れた交渉役として広く認知されています。 ルセフ政権がブラジル経済の立て直しのための様々な 不安定な政治状況はブラジルの信用格付けにとって 良いことではありません。しかし、レビィ財務相による財政 再建へ向けた取り組みを考慮すると、今後大きな政治的 な混乱が生じない限り、ブラジルの信用格付が投資適格 級未満となる可能性は低いと考えています。 自国通貨建てソブリン格付 BBB+ 投資適格級 BBB- 投機的等級 外貨建てソブリン格付 98 00 02 04 06 08 政治的な不透明感の高まりを背景に、ブラジル・レアル の下落が顕著となっています(図3)。レアルの対米ドル 相場が現在とほぼ同水準にあった約10年前と比較してみ ると、当時は商品市況が長期的な上昇局面であった一方、 71.0 (円) (レアル) レアル安 2.6 3.0 3.24 41.0 29.0 3.4 20 (%) 18 16 大統領の政権基盤の弱まりはすでに為替市場でも織り込 14 レアル相場の下支え要因となっていくことも期待されます。 4.2 (年) 図4:ブラジル3年国債の利回り推移 安定化に向かう可能性が考えられます。もっとも、ルセフ 維持や、相対的に高いブラジル債券の利回り水準などが 3.8 (出所)ブルームバーグ (期間)2001年1月1日~2015年3月17日 為替市場を安定化させるための政策余地を残していると まれているとも考えられ、中期的な財政健全化方針の 37.23 対円相場 ( 左軸) 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 一方で、外貨準備高は当時、約500億米ドルでしたが、 乗り始めれば、カントリー・リスクの低下によりレアル相場が 2.2 47.0 レアル相場の調整要因になっていると考えられます。 上述したように、レビィ財務相主導の財政再建が軌道に 1.8 53.0 35.0 言えます。 1.4 対米ドル相場 ( 右軸) レアル高 59.0 足元で商品市況が軟調な地合いになっていることは、 現在では3,750億米ドルの規模にあり、ブラジル中銀は 14 (年) 12 図3:ブラジル・レアルの対米ドル、対円相場の推移 65.0 ブラジル・レアル相場の見通しについて 10 (出所)ブルームバーグ (期間)1998年1月~2015年2月 ※格付はS&P社の長期債 13.4% 12 10 8 6 08 09 10 11 12 13 14 (出所)ファクトセット (期間)2008年1月1日~2015年3月17日 ※ブラジル3年国債は自国通貨建て 15 (年) ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて 作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で 配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。
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