マーケットの底 流 を読 む 株式会社ジャパンエコノミックパルス Japan Economic Pulse Co., Ltd. 30 兆円に迫る国内株式買い増し余力 [email protected] 公的マネー巨像 GPIF や郵政マネー等のリスク資産投資 「アベノミクスは家計部門の貯蓄をより付加価値 の高い分野への投資に振り向けようとしている」-。 2 月末に篠原尚之 IMF 副専務理事の後任としてワシ ントンに赴任した古澤満宏前財務官の憂国の弁だ。 そしてもう一言、古澤氏の憂国の弁がは、 「資産配分 を変えることによって金融市場の層が厚くなること のみならず、世界全体を睨んだ資産投資ができる」 との巨像 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) 運用改革の意義だ。 「眠った資産」覚醒へゆうちょ銀リスク資産拡大 改めて指摘するまでもなく、日本の家計貯蓄は 1694 兆円の個人金融資産の未だ 52.5%を占める 890 兆円規模の現預金として「眠った資産」と揶揄され る。多くはゆうちょ銀行やメガバンク、地銀など銀 行預金としてゼロ金利に甘んじて滞留し、従来、国 内債偏重となって政府の借金に充当されてきた。 だが、アベノミクスの一環としてかかる「眠った 資産」をより覚醒させるべく、付加価値の高い分野 への投資に振り向けるべく働きかけが行われてきた。 ゆうちょ銀行のリスク資産拡大もまた官邸主導の 「眠れる資産」の覚醒に他ならない。保守的な運用 に甘んじた経営幹部を更迭、ゆうちょ銀行の社長人 事が焦眉の急となっていたが、日本郵政の西室泰三 社長が 4 月から傘下のゆうちょ銀行社長を兼務する ことになった。 ある官邸関係筋は、 「米銀支店長経験者などリスク テイク能力のある外資系金融機関の元幹部中心に最 終選考が行われたが、政治的な重責を担うために適 材なく、結局、西室社長がゆうちょ銀行も含めて陣 頭指揮を執ることでグループの一体感を高めること になった」と打ち明ける。 すでに、ゆうちょ銀行とかんぽ生保は今秋の同時 上場を目指し、収益構造改革の一環として国内債券 に偏重している資産配分を見直し、リスク資産を拡 大する方向で新設部署の開設や幹部更迭など体制整 備を進めている。 日本の 1694 兆円の個人金融資産は米国に次ぎ世 界第 2 位だが、株式比率はわずか 9.5%にすぎず、 うち現預金が 52.5%を占める。対照的に、米国の家 計資産は株式保有が 32%を占め、投資信託の保有比 率は 4 割超に拡大している。 「眠った資産」 (現預金)を如何に覚醒させるか、 アベノミクス船出とともに金融版「成長戦略」とし て金融・資本市場活性化有識者会合(金融庁)が論 議を重ねてきた。 昨年 12 月 13 日に「金融・資本市場活性化に向け 2015/3/20 ての提言」をとりまとめ、今年に入り「提言」の実 施状況を、 「豊富な家計資産等が成長マネーに向かう 循環確立」として以下のようにフォローアップして いる。 1)家計の金融資産等を成長企業に振り向けるため、 投資運用業の底上げを図ると共に、投資家のライ フステージやリスク特性等を踏まえた投資商品の 提供を促進すべき。 2)投資運用業の発展促進(受託者としての責務の最 大限の発揮に向けた総合的な取組) 3)中長期の資産形成に資する投資商品の提供に向け た環境整備の促進(コスト及びパフォーマンスや 運用態勢の更なる透明化を含む多面的な取組等) かかる視点で「眠った資金」の付加価値の高い分 野への投資をゆうちょ銀行が率先垂範することにな る。そこで 205 兆円の資産のうち、 「現在ほぼゼロの 国内株式比率をせめて 5%前後への引き上げの可能 性を模索している節がある」(ある政府筋)。そうな れば、ゆうちょ銀行だけで 10 兆円の株式買い増し余 力ができる。 さらに、かんぽ生命(資産 83 兆円)も秋の同時上 場に向けて株式比率の引き上げを検討しており、5% なら 3 兆円強、10%への引き上げなら 7 兆円強の株 式買い増し余力が観測される。つまり、 「鯨」日本郵 政マネーだけで 15 兆円を上回る株式買い増し余力 の拡大である。 一方、運用資産 137 兆円の世界最大の公的年金「巨 像」GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、 昨年 10 月末「ハロウィン緩和」時に前倒し公表され た国内債偏重ポートフォリオ見直しの急進的改革が 実行され、国内株式比率は 19.8%(昨年末)へと着々 と買い増しが進められている。 需給ギャップ改善で追加緩和期待が剥落 そして「巨像」GPIF に続くのが、KKR(国家公務 員共済年金)、地方公務員や大学職員組合など共済年 金であり、 「GPIF を含めた株式買い増し余地はない 10 兆円規模が観測されている」 (外資系証券幹部) さらに、日銀の ETF(上場投信)買い 3 兆円が加 わり、ゆうちょ銀行やかんぽ生命等、公的マネー総 括りの株式投資拡大余地は 30 兆円に迫る。 もっとも、元ゆうちょ銀幹部は、 「公的年金や準政 府系金融機関は、損失回避で慎重に下値を拾うスタ ンスだから基本的に上値追いはしない」と打ち明け る。確かに、GPIF の運用改革の主眼はリスク資産拡 大による年金制度の持続性を高めるのが主目的であ り、高値を掴んで含み損を抱えては身も蓋もない。 しかし、30 兆円の国内株式投資余地を抱える年金 など公的マネーによる好需給環境はすこぶる盤石で あり、海外投資家の日本株買い安心感に繋がってい ることは言を待たない。 一方、日銀の黒田総裁の 18 日会見で追加緩和期待 が剥落し、日本株上昇メガトレンドは、1)公的マネ ーによる好需給、2)円安と原油安による「交易利得」 、 3)企業業績の拡大、4)賃上げによる消費回復-等 ファンダメンタルズが主導することになろう。 黒田総裁は 17 日決定会合後の会見で、「物価は若 干のマイナスになる可能性排除できない」としなが らも、 「物価の基調は着実に改善している」と強調し た上で、 「(原油安で)2%目標達成が難しくなった訳 ではない」とし、 「2%目標は 2015 年度中心に達成す る可能性高い」と改めて「CPI マイナスでも物価基 調に影響が出る状況でない」と強弁、追加緩和期待 は剥落した。 何より、今回の黒田総裁の会見で出色だった点は、 「実質賃金見通しはプラス幅を拡大するだろう」と の好循環予想であり、実体経済について、 「企業は前 向きな投資スタンスを維持している」 、「輸出持ち直 し、先行きは緩やかに増加していく」、 「(個人消費) 全体としては底堅く推移している」と景気への強気 姿勢である。 そして景気・物価強気論に沿って、「 (株高)過熱 とか行き過ぎた期待があるとは思わない」、「企業収 益と離れて一方的に強気化していない」(黒田総裁) と 15 年振り日経平均 1 万 9400 円台乗せの株高にバ ブル懸念なしと言い切った。 <黒田日銀総裁の会見骨子> 「物価は若干マイナスになる可能性排除できない」 「物価の基調は着実に改善している」 「(2%目標)2015 年度中心に達成する可能性高い」 「(原油安)2%目標達成が難しくなった訳ではない」 「(企業)前向き循環がしっかり作用し続けている」 、 「輸出持ち直し、先行きは緩やかに増加していく」 「増税分除いた消費者物価はゼロ%台前半にある」 「予想物価上昇率は、全体として上昇している」 「物価先行きは当面ゼロ%程度で推移する」 「異次元緩和、目標目指し必要な時点まで継続する」 「賃金が上昇する環境整っている」 「CPI マイナスでも物価に影響が出る状況でない」 「実質賃金見通し、プラス幅を拡大するだろう」 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提 供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させる ことは出来ません。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありませ ん。また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を 負いません。本レポートの内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的とし たものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。
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