マーケットの底 流 を読 む 株式会社ジャパンエコノミックパルス Japan Economic Pulse Co., Ltd. 給与と人員増でリスク資産に積極投資 GPIF、国内株式比率 25%の年内達成サプライズ 弊社顧問を兼任する米系証券幹部による年初恒例 「今年の 10 大サプライズ」のひとつに、GPIF(年金 積立金管理運用独立行政法人)の国内株式構成比率 25%の年内達成がある。可能性が低いが起これば市 場インパクトが大きいテールリスクのようなサプラ イズだが、年収 3000 万円超の理事を二人体制とし給 与増と人員拡大で運用成績向上を目指す GPIF だけ に有り得ない話ではない。 公的マネーの買い VS 海外投資家の売り 16 日のユーロ圏財務相会合のギリシャ第 2 次金融 支援延長を巡る債務協議は、EU とギリシャ双方が歩 み寄りを見せないまま物別れに終わり、市場の楽観 ムードを覆した。 2 月 28 日の期限前に 20 日にも特別会合を設ける 可能性があるとユーログループ議長が示唆するも、 ギリシャ問題を巡るテールリスクは高まり、CFTC の ユーロ・ショートは依然として高水準にある。 もっとも、2011 年のギリシャ債務危機時にも同様 の経験をしているだけに市場には「デジャブ(既視 感) 」があり、16 日の独 DAX 先物は協議決裂を受け て下落するも下げ幅は前日比-1.09%と限られた。つ まり、ギリシャ懸念も最終的には軟着陸するだろう と過度な悲観ムードには至っていない。 17 日の日経平均株価は東証株価指数(TOPIX)と JPX 日経 400 がともに上昇し、実需の日本株買いに よる日本株の「質」の向上が先高期待となって 1 万 8000 円をうかがう局面があった。 日本株の相場付きの良さは、約 130 兆円の年金資 金を運用する GPIF はじめ共済年金に日銀の ETF 買い 等による下値不安の後退がある。折しも、GPIF は理 事をもう一人増やし、二人体制にする。自民党の厚 生労働部会が 17 日審議した独立行政法人改革の厚 労省所管の案件について高鳥修一部会長(衆院議員) が明らかにした。 運用担当(CIO)の理事に加え、総務担当の理事を 追加するのは体制強化に他ならない。つまり、運用 担当理事は運用に専念し、総務担当は組織運営に特 化する。そもそも、従来の理事一人体制は無理があ った。 さらに、GPIF は年明け 1 月に理事長、理事と運用 担当者の「賃上げ」に踏み切った。これまでは公務 員の待遇に連動し、年収は理事長でも約 1900 万円だ った。理事長の新たな年収は 3100 万円と大幅に引き 上げられた。日銀総裁の約 3500 万円を超えないよう に設定され、新設の最高投資責任者(CIO)は 3000 万円だ。新たに設けた運用専門職の月給は最高 145 [email protected] 2015/2/20 万円で、成績好調なら成果給が膨らみ理事長の年収 を上回る可能性もある。 緊縮財政の折、独法である GPIF が大幅な年収引き 上げを許されるのは、2013 年度にかけ 2 年続けて 10 兆円規模の高収益を稼ぎ出したからだ。むろん、人 件費以上に収益が伸びれば年金財政にプラスとなる。 大幅給与引き上げで優秀な人材を獲得、昨年 10 月末に見直された国内株式及び外国株式・外債投資 などリスク資産投資の拡大で GPIF は運用成績の飛 躍に邁進しようとしている。 折しも、東京証券取引所の 1 月の投資主体別売買 動向によれば、海外投資家の売り越し 1 兆 2686 億円 (現物株 8932 億円・株式先物 3754 億円)に対し、 公的年金を代行する信託銀行が 6818 億円(現物・先 物)の買い越し、日銀も ETF(上場投信)を 1 月だ けで 3443 億円も購入している。2 月第 1 週も 2364 億円の海外投資家の売り越しに対し、信託銀行は 654 億円の買い越しが続く。海外投資家の売りに対 して GPIF や他の共済年金に日銀の ETF 買いなど疑似 公的資金が買い向かう構図が鮮明化している。 こうした公的年金と日銀に支えられた円安・株高 アベノミクス相場に、TPP 交渉「大団円」や農業・ 医療など岩盤規制崩しのアベノミクス「三の矢」成 長戦略が具現化すれば、 「バイオンリーの海外年金基 金やミュチュアルファンド(投信)など長期海外投 資家の日本株選好が本格化しよう」 (米系証券幹部) 。 ましてや弊社顧問を兼任する米系証券幹部の「今 年の 10 大サプライズ」のひとつ、GPIF の国内株式 比率 25%の年内達成が加われば、日経平均 2 万円へ の上昇が現実味を帯びよう。 銀行株にネットモール事業進出論議の追い風 一方、日本株の背骨であり内需の柱として銀行株 の上昇に繋がる銀行業界によるネットモール事業へ の進出論議が活発化しつつある。 これまで銀行は金融業以外の事業兼業を禁止され てきたが、近年の決済代行会社やインターネット業 者によるネットモール事業に関わる決済業務や貸出 業務の拡大が銀行業の領域を脅かしつつある。 銀行によるネットモール事情など銀行業以外への 事業進出論は、こうした経営環境の激しい変化を踏 まえて、すでに金融庁の金融審議会で活発化してい る。金融庁の審議会は年明け 1 月 29 日に第 9 回、2 月 5 日には第 10 回金融審議会で「決済業務等の高度 化に関するスタディ・グループ」を開催、ネットモ ール事業など金融業以外への銀行進出が論議されて いる。 例えば、一部の電子商取引事業者、モール事業者 は傘下に銀行を持ってサービスを展開、消費者の購 買プロセス効率化や利便性の向上に繋がっているが、 現行銀行法で厳格に制限され、銀行の電子商取引事 業やネットモール事業への進出が遅々としている。 電子商取引と親和性の高いネット決済ビジネスは 有望な成長分野であり、事業会社の参入によって決 済中心に銀行業務の「アンバンドリング化」ともい うべき構造変化が進行しているにも拘わらず、であ る。 そこで近年の環境変化を踏まえ、業務範囲規制が 時代環境に則したものか、点検、見直し論議と共に 伝統的な銀行業務領域を超えたサービス検討の必要 性が叫ばれつつある。 金融庁の金融審議会では、2000 年代初頭にネット 決済ビジネス強化で「Virtual Mall」運営に参入、 新たな収益源を獲得した米銀の例などが論議、検討 されている。 実際、米国では 2000 年代前半にネット決済ビジネ ス等を巡る環境変化を踏まえ、銀行業務の一部であ る 「 Finder Activity 」 の一 環 と し て 銀 行 に よる 「Virtual Mall」運営が解釈上認められた。 潜在的な売り手と買い手の発掘、関心の有無に関 する照会、売買の引き合わせ、取引の場の提供、そ の他当事者自身による契約交渉および契約締結に資 する行為等が明文化されている。他方、日本の銀行 法上、同業務の可否が必ずしも明確になっていない。 これまで自前主義が強かった金融業界でも足許決済 分野を中心とした IT 技術の取込みを目的にベンチ ャーへの出資や買収が活発化しつつある。 投資可能額に何らかの上限を設けることや限定列 挙業務以外の業務のリスクの性質や大きさ、銀行業 とのシナジー効果の有無など、個別に検証して認可 する枠組みが必要とされる。 特に、人口減少が進む地方にあって、経済規模縮 小が懸念される地銀の決済関連業務のコスト構造見 直しの一環としてネットモール事業等への進出は朗 報である。 そもそも、銀行が金融業以外への分野への進出を 厳格規制されてきたのは一般企業に対し優越的な地 位に立ちやすいという競争政策上の理由からだ。進 出分野での事業失敗など元本保証の預金者の安全性 が損なわれかねないという理由もある。 実際、銀行は証券会社に限り 100%小会社方式の 進出に限られ、ベンチャー出資などの事業会社の株 式保有は原則 5%に制限されている。だが、 「資産効 果」経済の浸透により安倍政権が唱える成長戦略の 実現には内需株の柱である金融機関の収益向上は欠 かせない。 銀行のネットモール事業への進出へ向けた金融庁 金融審議会の論議が実れば銀行株の上昇にとって強 力な追い風となろう。 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提 供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させる ことは出来ません。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありませ ん。また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を 負いません。本レポートの内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的とし たものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。
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