労働争議の種類別件数の推移

農業雇用改善推進事業
経営者と働く人を応援する
“農業の雇用と労務”ガイド
64
Vol.
2015 年 2 月号
労働争議の種類別件数の推移
(件)
1,000
900
872
800
争議行為を伴わない争議
争議行為を伴う争議
737
780
708
700
662
636
682
657
612
600
500
400
総争議
596
507
698
564
300
579
551
480
545
688
597
555
517
57
79
200
100
0
174
173
129
111
156
112
92
85
436
71
平成15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 (年)
出典:
「厚生労働省 平成25年労働争議統計調査」
平成25年の労働争議は、
「総争議」の件数は507件、総参加人員は128,387人となっており、前
年に比べ、件数は89件(14.9%)減、総参加人員は2,395人(1.9%)増となり、
「総争議」の件数
は、比較可能な昭和32年以降、最も少なかった。
このうち、
「争議行為を伴う争議」の件数は71件、行為参加人員は12,910人となっており、前年に
比べ、件数は8件
(10.1%)
減、行為参加人員は549人(4.4%)増となった。
特集
労使間のトラブルを未然に防ぐには①
採用から退職まで円滑なコミュニケーションをとろう
労使間のトラブルを
未然に防ぐには ①
特 集
1.
コミュニケーション不足が原因
最近は 、 書 籍 や イ ン タ ー ネ ッ ト の 普
及等によ り 、 誰 も が 簡 単 に 労 使 間 ト ラ
ブルや労 働 法 ・ 判 例 等 の 情 報 を 入 手 で
きるよう に な り 、 ま た 、 労 働 者 の 権 利
意識の高 ま り 等 の 影 響 も 強 く 、 年 々 雇
用に係る ト ラ ブ ル は 増 加 し て い ま す 。
トラブル の 原 因 は 様 々 で す が 、 労 働 条
件が不明 確 ・ 不 明 瞭 な こ と が ト ラ ブ ル
の原因と な っ て い る こ と が 多 い よ う で
す。これ は 突 き 詰 め れ ば 、 経 営 者 と し
ての意識 や 知 識 が 不 足 し て い る こ と に
起 因 し ま す。 ト ラ ブ ル は、 表 沙 汰 に
なってか ら で は 手 遅 れ と な る ケ ー ス も
あり、経 営 者 と し て は 労 働 法 等 の 勉 強
をはじめ と し て 、 日 頃 か ら 様 々 な 努 力
月刊かわらばん Vol.64
従業員を雇用することは、その従業員の労務提供に対して
経営者が賃金を支払う労働契約で成り立っています。経営者
は従業員に対して賃金を支払うことだけでなく、業務災害へ
の補償や従業員の安全と健康へ配慮する必要があるなど、従
業員に対して様々な責任を負うことになります。
特に、近年では労働条件が不明瞭であることを原因とした
労使トラブルが増加傾向にあります。設定した労働条件で労
使双方が納得しているかは職場内でのコミュニケーションも
重要です。今号では、こうした労使トラブルを防ぐために経
営者がすべき準備や解雇に踏み切る場合の注意点などについ
てポイントを特集します。
2.採用時に注意すること
従業員を募集、採用し、入社してし
ばらく経ってから、この新人従業員が
「労働条件が事前の話と違う」と言っ
てくるトラブルは、農業の労使間トラ
ブルの典型的なケースで言ってよいで
しょう。
こ う い う ト ラ ブ ル を 防 ぐ た め に は、
採用決定後、入社日前に一度面会する
ようにし、経営者自らが賃金等の労働
条件を新入社員となる者に対して直接
丁寧に説明することです。従業員の採
用 に あ た っ て は、 労 働 基 準 法 に よ り、
重要な労働条件の書面による明示が義
務付けられています。これは、
正社員、
またはパートタイマーやアルバイト等
の非正社員を問わず、経営者は、雇用
契約書か労働条件通知書を作成し、こ
が必要となっています。
れを新たに従業員となる者に手交しな
ければならないということです。
また、「従業員との間に十分なコミュ
ニケーションを取っていない」という
労働条件は、とくに賃金、労働時間、
のが、従業員とのトラブルが頻繁な経
休日の3点が重要です。たとえば農業
営者の特徴です。雇用に係るトラブル
で は、 労 働 基 準 法 で 労 働 時 間 や 休 憩、
を 未 然 に 回 避 す る た め の ポ イ ン ト は、 休日などが適用除外とされていて、法
従業員との日々のコミュニケーション
律による規制はありませんが、書面で
を欠かさないことだともいえるでしょ
労働時間関係の労働条件を通知するこ
う。日頃から労使の間でコミュニケー
とは適用除外とはなっていません。労
ションが密な事業所は雇用に係るトラ
働時間や休憩、休日をどのようにする
ブルが少ないものですが、それでも万
かは、経営者の判断に任されているも
が一問題が発生したときは、冷静に従
のの、雇用の際に重要な労働条件を書
業員の話を聞くことが重要です。感情
面にて通知することは、絶対に遵守し
的になると、まとまる話もこじれて大
なければなりません。労働時間を例に
きな問題へと発展していきます。
とれば、始業時間及び終業時間と休憩
時間を定めることにより1日の所定労
採用から退職まで円滑なコミュニケーションをとろう
働時間が決まりますし、休日を定める
ことにより1か月(1年)の所定労働
時間が決まります。
また、賃金を例にとれば、仮に初任
給を残業代込み20万円で設定し、契
約時にそのことは経営者も本人に口頭
で伝えたとしても、雇用契約書や労働
条件通知書を交付せず、給与明細書上
も「基本給20万円」としか表示され
ていないのであれば、後々トラブルに
発展する可能性は高いと言えます。こ
の 場 合、 た と え ば、
「 基 本 給( 月 平 均
所定労働時間170時間分)
17万円」
と「固定残業手当(残業時間30時間
分)3万円」と記載した書面を契約時
に交付しておくことが重要です。
労働条件は、雇用される側にしてみ
れば非常に重要なものですから、後か
らトラブルにならないよう、初めにき
ちんと説明し、納得してもらったうえ
で、気持ちよく働いてもらうことが何
より重要なのです。
具体的には、
書面で明示する方法は、
雇用契約書を作成するか労働条件通知
書を交付することになります。法的に
はどちらでも構いませんが、より効果
的なのは、
雇用契約書の作成でしょう。
部ずつ所持
労使双方で記名捺印し 1
するため、
労働条件の透明性が高まり、
誤解や不信感が生じにくくなります。
3.不向きな従業員には退職を促す
「何度いっても勤務態度が改善しな
い 従 業 員 を 解 雇 し た い 」「 何 を や ら せ
てもまと も な 仕 事 が で き な い 従 業 員 を
解雇した い 」 と い う 相 談 を よ く 受 け ま
す。こう い う 場 合 、 客 観 的 に 見 て 解 雇
もやむを得ないケースも多いのです
が、私は 、 な る べ く 解 雇 す る こ と は 避
け、従業 員 が 自 ら 自 主 的 に 退 職 す る よ
う働きか け る こ と を 勧 め て い ま す 。 具
体的には 、 当 該 従 業 員 本 人 の 将 来 に つ
いて、労 使 で 腹 を 割 っ て 率 直 に 話 し 合
う場を設 け 、 新 し い 道 を 選 択 す る こ と
が本人の た め に な る こ と を 説 得 す る こ
とを提案 し ま す 。 話 し 合 い は 、 一 度 で
すまなけ れ ば 、 何 度 で も 、 た と え 時 間
がかかっ て も 本 人 が 納 得 す る ま で 根 気
強く続け ま す 。 こ の 話 し 合 い の ポ イ ン
トは、従 業 員 に 自 分 の 将 来 に 目 を 向 け
させ、退 職 が 人 生 の 転 機 と な る こ と を
悟らせる こ と で す 。
双方が 感 情 的 に な り 、 建 設 的 な 話 し
合いが困 難 な 場 合 も あ り ま す が 、 雇 用
し た 経 営 者 の 責 務 と し て、 自 分 か ら
去ってい く 従 業 員 が 、 そ の 後 よ り 幸 せ
に生きて い く こ と が で き る よ う に 努 力
64
左の者が14日を超えて使用されるに至った
場合
試の使用期間中の者
左の者が1か月を超えて引き続き使用される
に至った者
日々雇入れられる者
適用除外者に解雇予告が必要となる場合
解雇予告の適用除外者
解雇予告の例外
解雇の予告
解雇制限の例外
解雇制限
イ 業務災害による休業期間とその後の30 ⅰ)使用者が打切補償を支払った場合
日間
労働基準法81条では、療養補償を受ける
ロ 女性労働者が産前・産後の休暇を取得し
労働者が、療養の開始後3年を経過しても
ている期間とその後の30日間
負傷・疾病が治らない場合に、使用者は、
(労働基準法19条)
平均賃金の1,200日分の打切補償を支払
労働者が解雇された後、再就職するのが困難
えば、その後の補償義務を免れるとしてい
な場合、たとえば出産などにより労働が困難
る。この打切補償をしたときは、業務上の
な場合の解雇を制限することによって、労働
傷病の休業期間、その後の30日間であっ
者が安心して養生・休業することができるよ
ても解雇できることになる。
うにしたもの
ⅱ)天災その他やむをえない事由のために事
業の継続が不可能となった場合
この場合は、所轄労働基準監督署長の認定
を受けなければならない。
イ 少なくとも30日前に予告する
ⅰ)天災その他やむをえない事由のために事
ロ 30日以上の平均賃金を支払わなければ
業の継続が不可能となった場合
ならない
ⅱ)労働者の責めに帰すべき事由で解雇する
(労働基準法20条)
場合
労働基準法では、労働者に再就職のための時
この場合は、所轄労働基準監督署長の認定
間的・経済的余裕を与えるため、使用者が解
を受ければ、30日前の予告や30日分の
雇をする場合には、労働者に対して上のイま
平均賃金の支払義務を免れることができま
たはロを義務づけている。
す。
2か月以内の期間を定めて使用される者
左の者が所定の期間を超えて引き続き使用さ
季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用 れるに至った場合
される者
することは、経営者の重要な仕事だと
思います。
4.解雇予告を忘れずに
ところで、労働基準法では、労働者
に再就職のための時間的・経済的余裕
を与えるため、①少なくとも30日前
に予告(解雇予告)するか、②30日
以上の平均賃金(解雇予告手当)を支
払わなければならないと定めていま
す。少し前に解雇された者が「私は解
雇予告をしてもらえなかった」といっ
て、
「代わりに解雇予告手当を支払え」
と訴えるケースは後を絶ちません。
「 解 雇 は、 客 観 的 に 合 理 的 な 理 由 を
欠き、社会通念上相当であると認めら
れない場合は、その権利を濫用したも
の と し て、 無 効 と す る 」
(労働契約法
第16条)
「 使 用 者 は、 期 間 の 定 め の
ある労働契約について、やむを得ない
事由がある場合でなければ、その契約
期間が満了するまでの間において、労
働者を解雇することができない(労働
契約法17条)
」 と さ れ て い る の で、
一般的に「解雇」すること自体が経営
者にとってはなかなか容易なことでは
ないのですが、それでも先にのべたよ
うに、解雇に至るようなケースは、従
業員の側がそれなりの理由を抱えてい
る場合が多く、それゆえに解雇を選択
するわけですが、解雇に関するトラブ
ルは、むしろ本来されるべき解雇予告
がなされなかったという「手続上の瑕
疵」によるものが多いのです。
ニ� �ス
とのつながりの希薄化だ。子ども
たちもスマホ画面ばかり見てい
る。農業は人や地域とのつながり
があって初めてうまくいく。子ど
もたちが、地方に夢を持って残れ
るベースを教育を通じて築ければ
いい。
豊かな自然就農しませんか
充実した研修用意
平成27年2月6日(金)全国農業新聞掲載
愛媛県松野町
北宇和郡松野町は県西南部に位
置し、県内で最も人口規模が小さ
な山間部の町として、きらりと光
る町づくりに取り組んでいる。
松野町内に事務所を構える唯一
の 農 業 生 産 法 人、
(株)松野町農
林公社では、新たに農業業に取り
組む若者に対する支援として農業
研修生を受け入れている。
研修生は基礎研修としてさまざ
まな野菜苗や花壇苗の育成に取り
組みながら、収穫や防除など日々
の作業を経験すためトマトの水耕
栽 培 を 担 当。 同 社 の ア グ リ レ ス
キュー事業に参加し、一般農家の
圃場で防除作業や剪定作業の指導
を受ける。2年目には播種から収
穫、出荷販売までの一連の作業を
研修生専用の農場で実践する。
2年間の研修期間終了後、町内
に就農することが条件で、これま
で4人の研修生が就農した。就農
者からは「研修期間中から地域住
民や営農者と交流する機会があっ
たため、独立しても地域に溶け込
みやすかった」との感謝の声が寄
せられている。
就農に際して生産基盤となる農
地や資金などは、農業委員会や町
などの関係機関が連携して相談に
応じている。同町では「充実した
研修制度を用意している。豊かな
自然の中で農業経営をやりたい意
欲のある若者をお待ちしていま
す」と話している。
月刊かわらばん 2月号
発行元:全国農業会議所・全国新規就農相談センター 〒102-0084 東京都千代田区二番町9-8 中央労働基準協会ビル2階
TEL:03(6910)
1126 FAX:03(3261)
5131 Eメール:[email protected]
農業雇用改善推進事業ホームページ http://www.nca.or.jp/Be-farmer/roumu/
デザイン制作:株式会社あーす
こんなニュースがありました
地域一体で
実業校から人材を
熊本県南阿蘇村(有)木之内 農 園 取 締 役 会 長 木 之 内 均
平成26年11月21日(金)全国農業新聞掲載
を求めるなら、実業高校や実業大
学 校こそ、地 域 と一体 になった 取
り 組 み が 必 要 だ。 農 業 に 限 ら ず、
地元からこうした生徒がほしいと
いった意見も取り入れ、カリキュラ
ムなどの再編成も提案してきた。
そ う し た シ ス テ ム が で き れ ば、
雇う側はすぐに採用できるし、最
適な人材の確保もできる。将来方
向がはっきりと見えれば、実業校
に来る生徒たちも目的意識が明確
になり、進路指導も変わってくる
のではないか。
こんな発言が蒲島知事などの目
にとまり昨年10月、教育委員に
任命されたのだろう。委員になっ
てまず実現させたのが、農業フェ
アへの県内全農業高校の参加。生
徒に良い意味での刺激になる。県
農業の行く末を考えるには非農業
分野も含めた連携が必要だ。極端
に言うと工業高校にはロボコンが
あって視野が全国、世界に広がる。
一方、農高には農業クラブの大会
はあるが、一般にあまり知られて
いない。
委員長としては最大の問題のイ
ジメをなくしたい。原因は人と人
農業の雇用と労務に関するご相談や質問をお寄せください
の
N
E
W
S
熊 本 県 南 阿 蘇 村・ 有
( 木
) 之内
農 園 会 長 の 木 之 内 均 さ ん( 5 3)
が4 日 、 熊 本 県 の 教 育 委 員 長 に 選
任さ れ た 。 同 教 委 発 足 以 来 、 農 業
者の 委 員 長 就 任 は 初 。 教 育 界 へ の
新風 と し て 期 待 さ れ る 。 木 之 内 さ
んに 抱 負 な ど を 聞 い た 。
教育への関心は長男の農業高校
進学 が き っ か け 。 生 徒 の 過 半 が 非
農家 出 身 だ が 、 卒 業 後 に 農 業 を 始
めた い と 言 っ て も 、 先 生 方 に は 就
農 を 指 導 す る 技 能 も 経 験 も な く、
担任 か ら 「 農 家 出 身 で な い か ら 難
しい」と言われるケースが大半
だっ た 。
教 育 界 は 試 験 で 良 い 点 を 取 り、
良い 学 校 へ 進 学 と い っ た 気 風 が 強
い。 そ れ は そ れ で 大 事 だ が 、 実 業
高校は忘れ去られていた面があ
る。 卒 業 後 、 地 元 に し っ か り と し
た就 職 先 が あ る の か と い っ た こ と
が希 薄 に な っ て い た 。
地方の再生が叫ばれ、良い人材
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