東芝臨界実験装置 (Toshiba Nuclear Critical Assembly: NCA) NCA

東芝臨界実験装置
(Toshiba Nuclear Critical Assembly: NCA)
東芝臨界実験装置NCAは、研究用原子炉の一種で「臨界実験装置」と呼ばれるもので、発電用原子炉の燃料や制御棒に関する研究など
に使用しています。
○NCA 施設の概要
名称
NCA(東芝臨界実験装置)
型式
臨界実験装置(軽水減速 非均質型)
使用の目的
動力用原子炉並びにその燃料要素の研究のための原子
炉物理実験に使用
初臨界
昭和 38 年 12 月
出力
最大熱出力 200W
燃料の種類
二酸化ウラン(濃縮度:1~4.9%)
「臨界実験装置」とは、研究用原子炉の一種で、原子炉に関する基礎的な研究を行う
ための装置です。出力は極めて低く、発電などはできないものです。国内では日本原子
力研究開発機構や京都大学も所有して、研究に使用しています。
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NCA 施設の外観
○特徴: 出力が低く、冷却する必要がありません。
放射能が低く、燃料は手で扱えます。
燃料棒
・出力
最大熱出力は 200W で、研究用原子炉の中でも出
安全板
力が大変低いものです。運転中も温度や圧力は上
がらず、発電の装置もありません。出力が低いため、
運転中も温度の上昇は測れないほど小さく、冷却す
炉心タンク
る必要がありません。燃料の崩壊熱はさらに低いの
で、使用した燃料はプールなどの水中で保管する必
要はなく、燃料室に(空気中で)保管しています。
NCA の炉心
・燃料と放射能
燃料は棒状の形状で燃料棒と呼んでいます。実験を行う場合には必要な燃料棒を炉心タンク内に装荷し、一連の実験を終了すると
また燃料室に戻して保管します。出力が低いため燃料は減らず、繰り返して使用することができるので、使用済燃料は発生しません。
燃料の中で発生する核分裂生成物の量が少ないので、燃料からの放射線量が低く、燃料室と炉心タンク間で燃料を移送する際に、所
員が燃料棒を直接、手で取扱うことができます。
(注)NCA の許可上の最大熱出力は 200W ですが、普段の運転では 0.1W 以下が多くなっています。発電用の原子炉と比べると 1000 万分の1~100 億分の 1 程
度になります。
→「発電用原子炉と臨界実験装置 NCA の比較」参照 (6 ページ目に記載)
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○稼動状況
NCAでは長時間の連続運転を行うことはなく、起動から停止まで2時間程度の運転
を1日に数回行うのが普通です。
最近の稼動状況は、運転日数が年間 50 日程度、運転時間は 200~300 時間くらいに
なっています。NCAは、2014 年 6 月から施設の定期検査を開始し、運転は行っていま
せん。
*最近の運転実績
2011年度 運転日数 35 日
2012年度 運転日数 52 日
2013年度 運転日数 54 日
2014年度 運転日数 0 日
運転時間 184 時間
運転時間 309 時間
運転時間 293 時間
運転時間
0 時間
NCA 装置の模式図
(注)NCAの運転中の出力や時間について
NCAの運転中の熱出力は 0.1W 以下の場合が多く、実験の目的により出力を上げる場合
もありますが、最高で 50W 程度のものです。
前項の運転時間数は、1 日のうちで起動から最終的な停止までの全体の時間数を積算し
たものです。臨界状態で一定の出力となっている時間数は、上記の時間数よりかなり少ない
時間になっています。
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NCA の制御盤
○保守、検査
・定期検査
NCA では原子炉等規制法に基づいて1年ごとに定期検査を通常3~4ヶ月程度の期間で行います。定期検査では、機器の点検、校
正、作動検査、補修や更新などを行い、国による立会検査も受けて、これに合格すると1年間の運転が許可されます。毎年これを繰り返
して施設の健全性を維持・確認しています。
・国による検査
原子炉等規制法などの法令に基づく国による検査は、定期検査以外に、保安規定遵守状況の検査(3ヶ月に1回)や保安検査官によ
る運転管理巡視(毎週1回)が行われ、運転や管理の状況が現場や書類の検査により確認されています。また、国による核物質防護検
査や IAEA による核燃料の査察も行われています。
○放射線量の監視
敷地内の放射線量や排気や排水中の放射能濃度を測定、監視しています。
・モニタリングポスト
敷地境界付近の放射線量をモニタリングポスト(2基)で監視しています。測定
結果はウエブサイトに載せています。
また敷地の近くには神奈川県が設置したモニタリングポストもあり、神奈川県は
測定結果を公開しています。
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放射線量を常時監視するモニタリングポスト
・排気や排水中の放射能濃度の測定
施設からの排気や排水中の放射能濃度を測定し、監視しています。測定結果は定期的に国と自治体に報告しています。
・土壌や河水等の放射能濃度の測定
事業所内の土壌、事業所排水口付近の河水や河土などを定期的に採取して放射能濃度を測定しています。同様な測定を自治体も独
自に行い、結果を公開しています。
○原子力人材育成への取組み
・最近の活動
NCA では、次世代の人材育成のため、主に原子力関係の
学生を臨界実験に受け入れ、原子炉の原理を理解し、制御方
法などを学習する活動を支援しています。
2014 年度までに 350 人以上の学生と若手技術者を受け入
れました。
若手技術者の受入れ風景
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○発電用原子炉との臨界実験装置 NCA の比較
原子力発電所は発電を目的として大きな出力で長期間の運転を行うものですが、臨界実験装置は研究のためのデータを取得する装置で
す。運転は短時間で、出力は極めて低いものです。出力が非常に小さいだけでなく、温度や圧力も上がらず、もちろん発電機はありません。
運転中も冷却する必要がありませんし、崩壊熱の影響がないので、燃料を水中で保管する必要もありません。
以下の表に原子力発電所の原子炉と臨界実験装置の比較を示します。
項目
発電用原子炉
東芝臨界実験装置 NCA
(110 万 kW 級 BWR)
出力
熱出力
3,300,000kW
最大 200W
(運転時の出力は 0.1W 以下~50W、
0.1W 以下の運転が主)
電気出力
1,100,000kW
-(発電装置なし)
燃料棒内部
平均温度
常温(温度上昇なし)
(冷却)水
約 280℃
常温(温度上昇なし)
圧力
炉心内
約 70 気圧
大気圧(圧力上昇なし)
運転
運転時間
定格出力で長期間運転
実験のため短時間の起動→停止
(定期検査期間以外は連続運転)
(1 ケース 2 時間程度が主)
二酸化ウラン(低濃縮度)
二酸化ウラン(低濃縮度)
運転中
強制循環水と蒸気による冷却
-(温度上昇なし)
停止中
水冷却(炉心内又は燃料プール内
-(燃料室で保管;温度上昇なし)
温度
燃料
種類
冷却
約 600℃
で循環水により崩壊熱を除去)
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