第1章 都市づくりの主要課題

第1章
都市づくりの主要課題
第1章
第1章
都市づくりの主要課題
都市づくりの主要課題
1−1 「広域的位置づけ」に関する主要課題
1.生活拠点の強化
本市が属す弥富都市計画区域は、県西部に位置する優良農漁業地、工業・流通業務地となっ
ています。都市計画区域において本市は、工業拠点であるとともに、JR・名鉄弥富駅と近鉄弥
富駅(以降総称して「弥富駅」とします。)を中心とする生活拠点になっていることから、県
西部の生活拠点として広域的な交流を促進する必要があります。
2.国際物流拠点の支援
本市南部の工業地域は、名古屋港臨港地区の西部に位置し、コンテナ等の物流業務地となっ
ています。国際的物流拠点である名古屋港の一角として、拠点機能を支援することから、港湾
機能の整備、交通ネットワークの強化を促進する必要があります。
3.地震防災対策における広域連携の強化
本市では、大規模地震による災害が予想され、東海地震に係る「地震防災対策強化地域※」
と「東南海・南海地震防災対策推進地域※」に指定されています。市域を越えた広域的な被害
が想定されることから、周辺都市との連携や対応の検討を進める必要があります。
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弥富市都市計画マスタープラン
1−2 「人口・都市機能の指標」に関する主要課題
1.無秩序な市街地の拡大の抑制
市街地内の人口は増加傾向にありますが、市街地縁辺部においても同様に人口が増加傾向に
あり、市街地の拡散による非効率的な基盤整備※や優良農地の減少が懸念されます。都市基盤
整備の集約や秩序ある土地利用を行うため、新たな人口が市街地内に集約するように規制や誘
導を行い、無秩序な市街地の拡大を抑制する必要があります。
2.定住人口の確保
本市は、東名阪自動車道や伊勢湾岸自動車道路の2本の高速道路があるほか、(都)国道1号西
線や国道23号を始めとする広域幹線道路や、JR関西本線、名鉄尾西線、近鉄名古屋線といった
鉄道などが結節する交通の要衝となっており、名古屋市など大都市近郊に位置することから、
居住地としての機能が求められています。人口減少時代を迎え、人口増加の期待が難しいなか、
本市を取り巻く自然環境の良さや、交通の利便性を活かし、定住人口の確保を目指すとともに、
永く住み続けられる住環境の形成に向け、高齢化に対応した都市施設や方策の整備などを進め
る必要があります。
上記文中の「(都)」は、都市計画道路※の略。以後、道路名称については(都)を用います。
3.適正な機能分担
旧弥富町と旧十四山村の合併により誕生した本市は、購買動向や通勤・通学などの人口移動
が弥富駅の周辺地域に集中しており、本市の中心拠点となっています。また、臨海部に広がる
工業地域は、市内だけでなく周辺都市の就業の場としての機能を有しています。こうした地域
にあった機能を適切に分担し、それら機能の連携を図る必要があります。
市民アンケートの結果では、
◆「市街地・集落地周辺での住宅の立地」を感じるという回答が、7 割程度となっていま
す。
◆「市街地の拡大」について、周辺地域での開発は抑制すべきだという回答が全体の半数
以上を占めています。
◆「自然・緑の豊かさ」「子どもを育てる環境」に満足という回答が多く、上位になって
います。
◆「日常の買物の利便性」に満足という回答が最も多くなっています。
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第1章
都市づくりの主要課題
1−3 「産業指標」に関する主要課題
1.地場産業の振興
本市の地場産業は金魚の養殖や稲作といった農漁業が愛知県の平均に比べ高くなっていま
すが、全国と同様に衰退傾向となっています。これら地場産業は、本市を象徴する養殖池のあ
る風景や田園風景を形成しており、防災、景観、環境などの観点からこうした農地を保全する
とともに就業環境を確保するため、農漁業の振興を図る必要があります。
2.商工業の活性化
商品販売額や製造品出荷額等からみた本市の商業及び工業は停滞しており、市街地内には空
き店舗が目立ってきています。商工業はまちの活力であり、地域の活性化につながることから、
商工業の活性化を図る必要があります。ただし、市街地内においては、周辺住環境への影響や
金魚の養殖池、農地などの環境への影響が懸念されるため、適正な配置、誘導を図る必要があ
ります。
市民アンケートの結果では、
◆「農地や身近な緑の減少」を感じるという回答が 6 割以上となっています。
◆「空店舗が目立ってきた」と感じるという回答が 6 割以上となっています。
◆「幹線道路沿道の利用」について、開発を抑制すべきという回答が半数以上を占めてい
ます。
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弥富市都市計画マスタープラン
1−4 「土地・建物の利用指標」に関する主要課題
1.ゆとりと特徴ある住環境の形成
市街地内には、田や畑、空地といった低未利用地※が点在し、一部ではまとまってみられま
す。良好な市街地の形成を図ることから低未利用地を活用し市街化を促進する必要があります
が、市街地内に残る金魚の養殖池や農地などの身近な緑の保全方策を講じ、ゆとりと特徴ある
住環境の形成を図る必要もあります。
2.土地利用状況を踏まえた適切な土地利用の誘導
弥富駅の周辺及び西側に広がる商業系用途地域※内には、商業地とともに住宅地が多く混在
し、用途の指定と現実の土地利用に乖離(かいり)がみられます。また、弥富駅周辺では戸建
住宅とともに交通の利便性を活かしたマンションなどの集合住宅もみられます。良好な住環境
を保全し、商業の活性化を図ることから、現状の土地利用を踏まえた適切な土地利用の規制や
誘導を図る必要があります。
3.幹線道路沿道の適正な土地利用
本市の過去20年間で土地利用は、宅地が増加傾向、農地が減少傾向となっており、幹線道路
沿道では、利便性などから農地の転用が進んでいます。良好な住環境や背後に広がる農地への
影響を考慮し、適切な規制や誘導による、幹線道路沿道での無秩序な開発を抑制する必要があ
ります。
市民アンケートの結果では
◆「市街地内の土地利用」に対して、農地や金魚の養殖場を保全すべきという回答が 7 割
程度となっています。
◆「住宅地としての静けさ、雰囲気」に満足という回答が多く、上位になっています。
◆「市街地周辺へ住居系土地利用が拡散」と感じる人が 7 割以上となっています。
◆「幹線道路沿道での店舗等の増加」を感じる人が半数以上となっています。
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第1章
都市づくりの主要課題
1−5 「都市施設の指標」に関する主要課題
1.道路ネットワークの強化
市街地内において弥富駅や市役所などの公共公益施設、並びに住宅地、商業地などを結ぶ軸
として、都市計画道路が格子状に計画されています。その整備状況は5割程度に止まっており、
市街地内のネットワーク強化や市街地の骨格形成に向け、整備の促進が必要です。
市全域における道路状況では、市街地と市街地外の地域を連携する軸が判りにくくなってい
ます。特に市域が南北に長いことから、まちづくりを一体的に進めるため、南北軸をはじめと
する市内のネットワークの強化が必要です。
2.高齢化に対応した交通ネットワークの形成
本市では高齢化が進み、今後高齢者をはじめとする交通弱者の増加が予想されます。こうし
た住民の生活を支える公共交通の維持・強化を図り、利用しやすい公共交通を形成する必要が
あります。また、歩道のバリアフリー※化などの歩行環境の改善も図り、高齢化社会に対応し
た交通環境を整える必要があります。
3.身近な河川の整備
本市には一級河川の木曽川や鍋田川をはじめ多くの河川が流れており、市民の身近な場所に
河川が存在しています。これらの河川については、水害に対する安全性を高めるとともに、豊
富な河川環境を活かし、親しみがあり生態系にやさしい河川整備を進める必要があります。
4.公園・緑地の整備の促進
本市は大きな公園や緑地が市全域で配置されており、市内を流れる河川を活かした公園・緑
地もみられますが、都市公園の整備状況は、愛知県平均に比べ低くなっています。今後も引き
続き公園・緑地の整備を進める必要があります。
5.生活排水対策の促進
本市における生活排水の処理施設の整備状況は、日光川下流流域下水道に含まれ、第1期供
用開始に向け整備が進められているものの、市街地を含め未整備の地域が多くなっており、農
業集落排水は一部の地域で整備されています。衛生的な生活環境の形成を図るため、生活排水
対策の促進が必要です。
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弥富市都市計画マスタープラン
6.施設の集積を活かしたまちづくり
弥富駅の周辺や十四山支所の周辺は、社会教育施設など行政機能をはじめとする公共公益施
設が集中し、地域の中心的な役割を担っています。こうした既存の施設の集積度を活用したま
ちづくりを進める必要があります。
市民アンケートの結果では、
◆「病院・診療所の充実」に対する満足という回答が多く、上位になっています。
◆「夜道の安全性」に対する不満という回答が最も多くなっており、次いで「歩行環境」
に対する不満が多くなっています。
◆「公共下水道事業などの生活排水対策」に対する不満という回答が多く、上位になって
います。
◆「公園・子どもの遊び場の充実」に対する不満という回答が多く、上位になっています。
◆「道路・交通施設の整備」については、道路整備よりも公共交通整備に取り組むべきと
いう回答が多くなっています。
◆「公園・緑地の整備」については、6 割程度の人が身近に利用できる小さな公園の整備
を選んでいます。
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第1章
都市づくりの主要課題
1−6 「その他特徴的要素」に関する主要課題
1.優れた生態系の維持
低湿地帯である本市は、渡り鳥の中継地、渡来地であり多くの野鳥が生息できるような優れ
た自然環境、生態系が広がっています。今後もこうした優れた自然環境を維持することが必要
です。
2.水郷文化の保全
市域のほとんどが海抜0メートル地帯であり、干拓と水害の歴史からなる独特の水郷文化を
築いており、輪中や樋門など歴史的な施設が残されています。過去の水害を教訓に災害に強い
まちづくりを進めるとともに、水郷地帯としての歴史や文化を保全し活かしたまちづくりを進
める必要があります。
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