不動産コンサルティング業務の概要 第1章

不動産コンサルティングとは
第1章 不動産コンサルティング業務の概要
第 1章
不動産コンサルティング業務の概要
Keyword
⃝不動産コンサルティング制度検討委員会報告書において、宅地建物取引業務の報酬とは別にコンサル
ティング報酬を受領するための「内容要件」と「手続要件」が整理された。
⃝不動産コンサルティング業務の類型は、どの段階までコンサルティングを実施するか、いつ報酬を受領
するかにより「企画提案型」「事業執行型」「成功報酬型」に大別される。
⃝弁護士、税理士等の「法定資格士」でなければ行うことができない業務領域は、これら法定資格士との
連携が必要である。
1.不動産コンサルティングとは
本書では、
「不動産コンサルティング業務」を次のように定義している。
『不動産コンサルティング技能試験・登録制度に基づく公認 不動産コンサルティングマ
スターが、依頼者との契約に基づき、不動産に関する専門的な知識・技能を活用し、公正か
つ客観的な立場から、不動産の利用、取得、処分、管理、事業運営及び投資等について、不
動産の物件・市場等の調査・分析等をもとに、依頼者が最善の選択や意思決定を行えるよう
に企画、調整し、提案する業務。』
この定義は、後に説明する「不動産コンサルティング制度検討委員会報告書」(平成11年
9月)において整理された内容である。
2.不動産コンサルティング業務の要件
⑴ 不動産コンサルティング制度検討委員会での検討内容
A.不動産コンサルティングに関しては、以前から一部の企業等により、土地の有効活用
に関する事業提案などを中心に実施されていたが、その内容・契約形態は不動産コンサル
ティングを行う者により様々であり、業務体系も整備されていなかった。
受領する報酬についても、当然に宅建業法上の制約はなく任意とされるべきと考えられ
ていたものの、どのような業務内容・契約形態とすべきかなどの明確な基準は、以下で説
明する「不動産コンサルティング制度検討委員会報告書」によって初めて明示されたもの
といえる。
B.不動産コンサルティング技能試験・登録制度は平成4年に発足し、平成5年から試験が
実施されたが、その後、不動産コンサルティングを業として行うことにより報酬を受領す
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第1章 不動産コンサルティング業務の概要
る場合、それが宅建業に関する報酬と実態上は同一とみなされ、宅建業法による報酬の上
限規制が適用されるのではないかとの問題が生じてきた。
不動産コンサルティングが新たな業務として社会的認知を得て広く定着するためには、
何よりも業務や報酬のあり方・要件等の整理が必要であるとされ、平成10年6月より「不
動産コンサルティング制度検討委員会」において検討・議論された。
C.具体的には、同委員会は、建設省(当時)、都道府県の行政担当者、不動産業団体代表
者及び学識経験者からなる11名の委員をもって構成され、
不動産コンサルティング業務に係る
① 制度の現状と問題点
② 報酬を受領した事例と分析
③ 業務の独立性と報酬のあり方
④ 制度の発展のための諸方策
⑤ 公認 不動産コンサルティングマスターの資質の向上と人材育成のあり方
等について検討が行われた。
さらに、その具体的な検討を進めるため各分野の専門家21名による専門委員会が設置さ
れ、業務・契約・報酬・企画提案・教育の各部会での検討を経て、集大成としての「不動
産コンサルティング制度検討委員会報告書」が、平成11年9月21日付でまとめられた。
この報告書において提示された不動産コンサルティング業務の要件を満たせば、宅建業
法上の報酬とは別にコンサルティング報酬を受領できることとなり、本書ではこれを、企
画提案型コンサルティング業務としている。
⑵ 企画提案型コンサルティング業務の要件
A.
「不動産コンサルティング制度検討委員会」による検討の結果として、宅建業務上の報
酬との関係整理のうえで、不動産コンサルティング業務は、実質的な内容として宅建業務
などの他の業務から分離独立した固有の業務であることが必要とされた。また、これを担
保し明確にするためには、業務手続という形式面においても業務委託契約書の締結や、成
果物たる企画提案書の書面化などが必要と明示された。
以下の①・②が、宅建業等の報酬とは別に不動産コンサルティング業務による報酬を受
領するための要件として、
「不動産コンサルティング制度検討委員会報告書」において整
理された内容である。
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