1 1 NC工作機械とは

1 1 NC工作機械とは
第1章
NC工作機械を使ったとしても、誰でもが簡
単に精密加工をできるようになるわけではあり
ません。
して、刃物やワーク
(工作物)
の位置を正確に動かしながら機械加工を進めてい
動かしはじめれば
NC工作機械は
加工が早い
といいます。
く工作機械を
「NC 工作機械」
NC 工作機械は、工具交換を含めて加工時間を短縮できること、NC プログ
ラムを作成することで自動運転ができることなどの優れた特徴があり、最近の機
械加工の主流になっています。 NC 工作機械には、NC 旋盤やワイヤ放電加
NC工作機械の種類と特徴
NC(Numerical Control)
とはコンピュータ制御のことです。その技術を利用
工機、マシニングセンタなどがあります
(図 1.1)
。
コンピュータ制御の NC 工作機械に対して、手動で刃物やテーブルを動かす
工作機械を汎用工作機械といいます。
それぞれの工作機械には、メリットとデメリットがあります。汎用工作機械は、
基本的な操作を覚えれば多くの種類の部品をつくれること、加工をはじめる前
の段取りが短時間ででき、単品加工であれば NC 工作機械よりも短時間で部
品をつくれることなどのメリットがあります。ただし、同時に複数の軸を正確に動
かす加工が難しく、球面や曲面の形状の加工が苦手です。
図1.1 マシニングセンタの操作
一方、NC 工作機械は、NC プログラムを準備して、工具やワークの段取り
高精度な機械加工
では段取りが重要。
それは汎用工作機
械でも、NC工作機
械でも同じ
さえ終えれば、加工が早く、量産加工に適した工作機械です。また、2 軸以上
を同時に動かすことができるため、円弧などの曲面や複雑な形状の加工が得意
な工作機械です。
では、NC 工作機械を使えば、機械加工の初心者であっても短時間で高精
度な部品をつくることができるのでしょうか。たしかに工具やワークの取付けと
NCプログラムの準備ができていれば、機械加工の初心者であっても熟練技能
者とまったく同じ部品をつくることができるかもしれません。しかし、実際の NC 工
作機械による加工は、段取りや NC プログラムの開発が難しく、使いこなすた
めには多くの経験と高い技能が必要になります
(図 1.2)
。
図1.2 機械加工では段取りが重要
8
9
1 2 汎用旋盤とNC旋盤
第1章
NC工作機械の種類と特徴
旋盤とは、回転しているワークにバイトと呼ばれる刃物を当てて、刃物を前後
汎用旋盤では
いくつものハンドルや
レバーを操作して
加工条件を
調整する
左右に動かしながらワークの形状を仕上げていく工作機械です。 円柱形状の
部品を加工するための工作機械であり、最も代表的な工作機械の 1 つといえま
す。
図 1.3に示す汎用旋盤(普通旋盤)には、多くのハンドルやレバーがあり、そ
れらを操作して刃物台を動かしたり、加工条件を調節したりします(図 1.4)
。そ
れに対して、NC 旋盤にはそれらがありません。 NC 旋盤では、主軸の回転速
度や刃物台の送り速度の設定や主軸の運転・停止は、NC プログラムあるい
は操作盤のスイッチで指示します(図 1.5)
。操作方法はまったく違いますが、ど
ちらも工作機械としての機能は同じです。
図1.4 汎用旋盤の操作
汎用旋盤とNC旋盤とでは、操作方法はまっ
たく違いますが、
どちらも工作機械としての機
能は同じです。
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図1.3 汎用旋盤の外観
NC旋盤の
操作は操作盤で
行う
図1.5 NC旋盤の操作
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1 3 汎用フライス盤と
マシニングセンタ
NC工作機械の種類と特徴
フライス盤とは、主軸にドリルやエンドミルなどの刃物
(切削工具)
を取り付けて、
第1章
NC工作機械は
複雑な形状を
加工できます。
切削工具とワークに相対運動を与えながら、ワークの形状を仕上げていく工作
機械です
(図 1.6)
。
(自動工具交換機能)
マシニングセンタは、切削工具を自動で交換できるATC
を装備した NC 工作機械です。マシニングセンタにはいくつかの形式がありますが、
比較的小型の部品を加工する場合には、主軸が鉛直方向にある立形マシニン
グセンタがよく使われます
(図 1.7)
。
汎用フライス盤は、汎用旋盤と同様、ハンドルやレバーを操作して、加工条
件を調節したり、テーブルや工具を動かしたりします。それに対して、マシニング
センタでは、それらの操作を操作盤や NCプログラムで行います。
図 1.7 のマシニングセンタは、立形フライス盤の運動をコンピュータ制御とし
図1.7 立形マシニングセンタ
、Y 軸(前後方向)
、Z 軸(高さ方向)の 3 軸を動
た形式であり、X 軸(横方向)
かすことができます。マシニングセンタでは、複数の工具を使い分けながら、コ
ンピュータ制御によるテーブルの正確な運動によって加工を進めていきます(図
主軸
1.8)
。
切削油
ワーク
図1.8 マシニングセンタによる加工
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図1.6 汎用フライス盤の操作
マシニングセンタは、複数の工具を使い分けながら、
コンピ
ュータ制御によるテーブルの正確な運動によって加工を進め
ていきます。
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