Document

シンポジウム 17 認知症研究のブレークスルーとモデル動物
オーガナイザー:西道隆臣 理化学研究所・脳科学
森原剛史 大阪大学医学系研究科精神医学
概要:モデル動物は認知症研究の強力なツールの一つであり、これまでに多く
の重要な知見をもたらし、創薬研究にも用いられてきた。しかしながらモデル
動物には、ヒトとの種差のみならず、10 年以上の経過を経て出現するアルツハ
イマー病理を短期間に再現させるための人工的なしかけがあるのも事実であり、
各モデル動物の有用性とともに限界についても深い理解が必要である。
約 20 年前、家族性アルツハイマー病の変異遺伝子を内因性の数倍以上過剰に
発現させることで Aβ の脳内蓄積を疑似的に再現することに成功した。その後、
様々な家族性アルツハイマー病の遺伝子変異について同様のモデル動物が作成
された。さらに複数の変異を同時に導入することなどにより、病理出現までの
期間をさらに短縮化したモデル動物も登場した。その一方、神経変性やタウ病
理だけでなく正確なアミロイド病理も含め、ヒトのアルツハイマー病理を十分
に再現できていない面があるという課題は残り続けた。一方、アルツハイマー
病治療薬の治験では、期待された結果が得られない状態が続いている。この状
況を突破するためには、疾患バイオマーカーの開発等に加え、次世代のモデル
動物の開発も必要と考えられている。このような状況の中、これまでとは発想
の異なる新世代のモデル動物が登場した意味は大きい。本シンポジウムでは、
認知症モデル動物の新たな展開について第一線の研究者に集まっていただき、
最新の成果の発表と議論を行う。