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シンポジウム 1 認知症診断におけるタウイメージング研究の最先端
オーガナイザー:下濱 俊 札幌医科大学医学部神経内科学
石原武士 川崎医科大学精神科学
概要:Alzheimer 病(AD)を始めとする変性性認知症疾患においては、脳内に蓄積
するアミロイドやタウなどの異常蛋白質が神経障害に関連していると考えられ
ている。アミロイドイメージングの実現から遅れること 9 年、ようやく実用的
なタウイメージング技術も登場し、病理イメージングは認知症研究を推進する
うえでますます重要なツールとなっていくと思われる。ヒトでは、老化に伴っ
て脳の嗅内野に神経原線維変化と呼ばれる過剰リン酸化タウ蛋白質の凝集体が
形成される。AD では、この神経原線維変化が海馬や大脳新皮質にまで拡大し、
記憶障害から認知症を引き起こすことが知られている。タウ蛋白質をマウスの
脳に発現させる研究でも、過剰リン酸化タウ蛋白質が神経細胞死を引き起こし、
記憶障害などの機序に関与していることが確かめられた。最近、タウ病変に選
択的に結合するプローブをポジトロン断層撮影 (PET) に用いることで成体脳
におけるタウ病変を可視化することが実現し、画像病理解析に向けた多施設研
究が始まっている。タウが認知症の超早期から蓄積することや、タウ蓄積の分
布が認知症進行の指標となりうることが判明してきた。AD のみならず非 AD 型
認知症のタウ病変を可視化するプロ―ブの開発は認知症の鑑別診断に有用とな
ることも示されている。本シンポジウムでは、蓄積するタウ蛋白質と認知症の
関係をレビューした上で、タウ病理イメージングのための in vitro やモデル動物
での PET 用プローブ開発の経緯、ヒトへの応用の実例、そこから明らかになっ
てきたこととその意義、さらに今後の課題や期待されることなどについて議論
する。