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ホットトピック徹底討論 テーマ オリゴマーって何だ
オーガナイザー:鈴木利治 北海道大学大学院薬学研究科
宮坂知宏 同志社大学 神経病理学
概要:アミロイド β、タウをはじめとする疾患関連タンパク質は病態脳において
凝集・蓄積し、それぞれ特異な病理像を形成する。いずれも遺伝学的証拠から
神経変性疾患の病態形成に深く関わっている事に疑いの余地は無い。これらの
タンパク質(ペプチド)の分子種にはモノマーから大きな凝集体に至るまで無
数の分子形態が想定されるが、はたしてどのような分子種が神経毒性の本体な
のか?これは神経変性疾患メカニズムの研究のみならず、創薬、バイオマーカ
ーなど広い研究分野に共通した general question といえよう。
かつてアミロイド β の毒性は β シート構造をとった線維状凝集体によるもの
と考えられていた。しかし現在では、線維状凝集体自体よりも Aβ オリゴマーこ
そが毒性の本質であるとの認識が浸透している。一方タウに関しても、アミロ
イド β で展開された論争を模倣するかのように毒性分子種としてオリゴマーが
提唱されている。いずれも線維状の凝集体形成と神経機能障害の解離を説明す
る上で実に理にかなった仮説といえる。ただし、オリゴマーといえど論文や研
究者によってその概念は大きく異なり、統一的な概念で科学的検証がなされて
いるとは言い難い。本シンポジウムでは4人の演者をお招きし、とくにアミロ
イド β とタウについてオリゴマーの実体とは何なのか?その毒性はいかなるも
のなのか?解説して頂く。さらに質疑応答を通し、神経変性疾患におけるオリ
ゴマーの意義や重要性について徹底討論したい。