ニッセイ基礎研究所 No.14-205 27 Feb. 2015 家計調査 15 年 1 月~個人消費の持ち 直しは依然として緩慢 経済研究部 斎藤 太郎 E-mail: [email protected] 経済調査室長 TEL:03-3512-1836 1.実質消費支出は減少幅が拡大 総務省が 2 月 27 日に公表した家計調査によると、15 年 1 月の実質消費支出は前年比▲5.1%とな った。減少幅は 12 月の同▲3.4%から拡大し、事前の市場予想(QUICK 集計:前年比▲4.1%、当社 予想は同▲4.3%)を下回る結果となった。前月比では▲0.3%と 5 ヵ月ぶりに減少した。月々の振 れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)も前年比▲4.7%(12 月:同▲ 2.1%)と減少幅が前月から拡大した。 実質消費支出の動きを項目別に見ると、保健医療(前年比 2.8%) 、教育(同 3.6%)は増加した が、被服及び履物(前年比▲15.9%) 、教養娯楽(同▲11.3%)が前年比二桁の大幅減少となるな ど、10 項目中 8 項目が減少した。 実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比▲0.7%(12 月:同▲0.6%)と 2 ヵ月連 続で低下した。消費税率引き上げ直後から夏場にかけての最悪期は脱したものの、持ち直しのペー スは極めて緩やかなものにとどまっており、駆け込み需要が本格化する前の水準を大きく下回って いる。 8% 消費水準指数の推移(前回増税時との比較) 実質消費支出の推移 (前年比) 10% 114 実質消費支出 (1995年、2012年=100) 112 除く住居等 前回 110 6% 消費税率引き上げ 今回 108 4% 106 2% 104 102 0% 100 ▲2% 98 ▲4% 96 ▲6% 94 ▲8% 1301 1 1304 (資料)総務省「家計調査」 1307 1310 1401 1404 1407 1410 1501 (年・月) 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 1996 1997 2013 2014 (資料)総務省「家計調査」の消費水準指数(除く住居等) 8 9 10 11 12 1 2 3 1998 (月) (年) 2015 同日、経済産業省から公表された商業動態統計によると、15 年 1 月の小売業販売額は前年比▲ 2.0%(12 月:同 0.1%)と 7 ヵ月ぶりの減少となった。季節調整済指数も前月比▲1.3%の低下と なった。商業動態統計の販売額は金額ベース(消費税を含む)となっており、ここにきて物価上昇 率が低下していることが伸び率を押し下げる一因になっている。また、13 年度末にかけて消費税率 1| |経済・金融フラッシュ No.14-205|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 引き上げ前の駆け込み需要を主因として高い伸びとなっていたため、前年と比べた伸び率はその裏 が出る形で低く出ている面もある。ただし、物価上昇分を考慮した実質ベースの季節調整済の販売 額指数(当研究所による試算値)で見ても、14 年 9 月をピークに水準が徐々に低下しており、個人 消費の回復が足踏み状態にあることを示すものとなっている。 実質・小売業販売額の推移(前回増税時との比較) 114 112 (1995年、2012年=100) 消費税率引き上げ 110 前回 今回 108 106 104 102 100 98 96 94 92 90 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 1996 1997 (月) 1998 2013 2014 (年) 2015 (注)小売販売額指数を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で実質化 3 (資料)経済産業省「商業動態統計」 2.先行きは実質所得の増加が個人消費の回復を後押し 個人消費は低調な動きが続いているが、雇用・所得環境の改善が続く中、原油価格下落を主因と した消費者物価上昇率の低下によって、実質所得の押し下げ圧力は和らいでいる。消費者物価指数 のうち、家計が実際に購入している財・サービスを対象とした「持家の帰属家賃を除く総合」は消 費税率引き上げ後の 14 年 5,6 月には前年比 4.4%の高い伸びとなったが、その後は鈍化傾向が続き 15 年 1 月には同 2.9%となった。 14 年度入り後の名目賃金の伸びは均して みれば前年比 1%程度となっており、依然と して物価上昇率を大きく下回っているが、 消 費税率引き上げの影響(2.4%)を除くと実 質賃金上昇率はほぼゼロ近傍まで持ち直し ている。先行きについては、消費者物価上昇 率がさらに低下することに加え、15 年春闘 (前年比) 5.0% 4.0% 3.0% 賃金上昇率の推移 消費者物価上昇率(持家の帰属家賃を除く総合) 名目賃金上昇率 実質賃金上昇率 2.0% 1.0% 0.0% ▲1.0% ▲2.0% ▲3.0% では 14 年を上回る賃上げが見込まれるため、▲4.0% 15 年度入り後には実質賃金上昇率が前年比 でプラスとなる可能性が高い。 1201 1204 1207 1210 1301 1304 1307 1310 (注)実質賃金=名目賃金÷消費者物価(持家の帰属家賃を除く総合) 1401 1404 1407 1410 1501 (年・月) (資料)厚生労働省「毎月勤労統計」 GDP統計の個人消費は駆け込み需要の反動を主因として 14 年 4-6 月期に前期比▲5.1%と急速 に落ち込んだ後、7-9 月期、10-12 月期ともに前期比 0.3%の低い伸びにとどまったが、実質所得の 持ち直しを主因として 15 年 1-3 月期以降は伸びを高めるだろう。ただし、消費税率引き上げによ って個人消費の水準は大きく落ち込んでおり、駆け込み需要が本格化する前の水準に戻るのは 16 年までずれ込むことが予想される。 (お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が 目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。 2| |経済・金融フラッシュ No.14-205|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved
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