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ニッセイ基礎研究所
2015-04-13
3月マネー統計
~貸出市場でも存在感を高める日銀
経済研究部
上野 剛志
E-mail: [email protected]
シニアエコノミスト
TEL:03-3512-1870
1.貸出動向: 伸び率は小幅に拡大
日銀が 4 月 10 日に発表した貸出・預金動向(速報)によると、3 月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前
年比 2.7%と前月(2.6%)から小幅に拡大した。引き続き、M&A 資金や不動産向けなどが好調であったとみ
られるほか、前年比で見た円安ドル高幅の拡大によって、外貨建て貸出の円換算額が押し上げられたこと
も伸び率拡大に寄与した。中小企業向け(2 月まで)も堅調に推移している。
業態別の内訳では、地銀(第2地銀を含む)の伸び率は前年比 3.9%(前月も 3.9%)と横ばいであったが、
都銀等が前年比 1.5%(前月は 1.3%)と持ち直した(図表 1~4)。
銀行貸出は、勢いが明確に強まっているわけではないが、緩やかな増加が継続。3 月の貸出残高は前
年同月と比べて 11.2 兆円高い水準にある。個別の理由は上記のように多々挙げられるが、背景にある日
銀の影響も見逃せない。日銀は「貸出支援基金」として、日本経済の成長基盤強化に資する投融資を行
(図表1) 銀行貸出残高の増減率
(%)
(兆円)
5
5
425
4
420
3
415
2
410
1
(図表2) 業態別の貸出残高増減率
(前年比、%)
都銀等
貸出残高(右軸)
4
430
前年比
地銀
信金
3
2
1
0
405
0
400
-1
395
-2
390
-3
385
-4
380
-5
200901
-1
-2
-3
200901
201001
201101
201201
201301
201401
201501
(年/月)
(資料)日本銀行
(図表3)貸出先別貸出金
(前年比、%)
(%)
20
201001
201101
201201
201301
201401
201501
(資料)日本銀行
(年/月)
(図表4) 銀行貸出とドル円レート(月次平均の前年比)
(%)
3.0
30
2.0
20
1.0
10
大・中堅企業
中小企業
15
地方公共団体
10
5
0
-5
銀行貸出
ドル円レート(右軸)
-10
0901
1001
(資料)日本銀行
1|
1101
1201
1301
1401
(注)2月分まで(末残ベース)、大・中堅企業は「法人」-「中小企業」にて算出
1501
(年/月)
0.0
0
13/1
4
7
10
14/1
|経済・金融フラッシュ 2015-04-13|Copyright ©2015 NLI Research Institute
4
7
10
15/1
(年/月)
(資料)日本銀行
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(図表5)貸出支援基金による資金供給残高
(兆円)
(図表6)国内銀行の新規貸出金利
(%)
30
1.3
貸出増加支援資金供給
新規/短期(一年未満)
成長基盤強化支援資金供給
25
1.2
20
1.1
15
1.0
10
0.9
新規/長期(一年以上)
0.8
5
0.7
0
13/3
6
9
12
14/3
6
9
12
15/3
(年/月)
(資料)日本銀行
12/1
(資料)日本銀行
7
13/1
7
14/1
7
(注)3ヵ月移動平均値(直近は15年2月分)
15/1
(年)
った金融機関への資金供給(成長基盤強化資金供給)と、貸出を増加させた金融機関への資金供給(貸
出増加支援資金供給)をかねてより実施している。ともに日銀による低利(0.1%)・長期(4 年)資金
のバックファイナンスなのだが、これらの利用がこの一年で大きく拡大している。とりわけ、14 年 6
月から「貸出増加額の 2 倍まで(従来は 1 倍まで)
」に借入可能額が拡充された後者を中心に、資金供
給額の伸びは 1 年間で 15 兆円に達する。この低利・長期固定マネーが貸出増加に一定程度寄与してい
るとみられ、マーケット同様、貸出市場でも日銀の存在感が強まっている(図表 5)
。
なお、2 月の新規貸出金利については、短期(一年未満)が 0.699%(前月は 0.862%)
、長期(1 年
以上)が 0.906%(前月は 0.972%)とともに前月から低下した。毎月の振れが大きい指標ではあるが、
市場金利の低迷や厳しい貸出競争環境、日銀による低利資金供給など金利抑制要因は多く、貸出金利が
浮上するイメージは当面持てない(図表 6)
。
2.マネタリーベース: 順調に拡大中
4 月 2 日に発表されたマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中のお金)
を示すマネタリーベースの 3 月平均残高の伸び率は前年比 35.2%(前月は 36.7%)と前月から縮小した。
日銀当座預金の伸び率が 59.7%(前月は 63.6%)と縮小したためである(図表 7~8)。
マネタリーベースの伸び率縮小は 3 ヵ月連続となっているが、比較対象となる前年のマネタリーベースが
増加している影響が大きく、この間の対前年差(金額)では、73~75 兆円で安定して推移していることから、
増勢が鈍化しているというわけではない。
一方、3 月のマネタリーベース月末残高は 295.9 兆円と、前月末(278.9 兆円)を大きく上回り、過去最高
を更新した。月間増加額は 17 兆円に達しているが、3 月は季節柄、財政資金の支払いが多いうえ、国債の
発行超過額が少なく、日銀当座預金が増加しやすいという事情がある。従って、あくまで追い風参考値で
あり、実際、季節調整済みのマネタリーベース平均残高は前月比で 4.0 兆円の増加に留まっている。
現行の金融政策におけるマネタリーベース増加ペースは「年間約 80 兆円増」であり、単純計算で月当た
り 6.7 兆円増が必要になる。季節調整踏みのマネタリーベース平均残高は、1-3 月において月平均 7.2 兆
円の増加となっており、今のところは金融政策に沿った順調なペースでの拡大が続いている(図表 9)。
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6
(図表7) マネタリーベース伸び率(平残)
(前年比、%)
(前年比、%)
日銀券発行残高
貨幣流通高
マネタリーベース(右メモリ)
5
60
50
4
40
3
30
2
20
1
10
0
(図表8) 日銀当座預金残高(平残)
(兆円)
(前年比、%)
200
180
日銀当座預金残高
180
160
同伸び率(右軸)
160
140
140
120
120
100
100
80
80
60
60
40
40
20
20
0
0
-1
-10
0901
1001
1101
1201
1301
1401
(図表9)マネタリーベース残高と前月比の推移
300
季節調整済み前月差(右軸)
(兆円)
-20
0901
(年/月)
(資料)日本銀行
(兆円)
1501
0
1001
1101
1201
1301
1401
1501
(年/月)
(資料)日本銀行
14
マネタリーベース末残(原数値)
280
12
260
10
240
8
220
6
200
4
180
2
160
0
140
-2
120
-4
100
-6
80
-8
0901
1001
1101
1201
1301
1401
1501
(年月)
(資料)日本銀行
3.マネーストック: 投資信託の勢いが際立つ
日銀が 4 月 13 日に発表した 3 月のマネーストック統計によると、市中通貨量の代表的指標であ
る M2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比 3.6%(前月は 3.5%)
、M3(M2 にゆうちょ
銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)は同
3.0%(前月は 2.9%)と、それぞれ小幅ながら前月から
伸び率が拡大した。ともに伸び率拡大は 2 ヵ月連続であり、伸び率の水準(小数点以下第 2 位まで
見た場合)は 1 年 1 ヵ月ぶりの高水準となる。M3 の内訳では、準通貨(定期預金)などの伸び率拡
大(0.7%→0.9%)が寄与した(図表 10~11)
。
一方、M3 に投信や外債といったリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率は前年比 3.3%(前
月改定値は 3.4%)と小幅に縮小した。投資信託(元本ベース、8.2%→10.1%)の伸び率は引き続
き拡大したものの、国債(▲11.3%→▲12.0%)の減少幅が拡大したほか、外債(12.1%→11.7%)
、
金銭の信託(4.7%→3.1%)の伸び率鈍化が響いた。結果的に、リスク性資産の中で投資信託の伸
び率拡大が目立つ結果になっている(図表 12~13)
。
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(図表10) M2、M3、広義流動性の動き
(前年比、%)
5
M2
広義流動性
M3
4
(図表11) 現金・預金の動き
(前年比、%)
7
M1
6
現金通貨
預金通貨
5
4
3
3
2
2
1
1
0
0
-1
-1
0901
1001
1101
1201
1301
1401
1501
-2
0901
(年/月)
(資料)日本銀行
(図表12) 投資信託と準通貨の動き
(前年比、%)
4.0
投資信託
1301
1401
1501
(図表13)広義流動性 主な内訳の伸び率
15/3
10
準通貨(右メモリ)
10
1201
15
15/2
12
1101
(年/月)
(前年比:%)
(前年比、%)
14
1001
(資料)日本銀行
3.0
5
8
2.0
0
6
4
1.0
-5
-6
-2.0
0901
1001
(資料)日本銀行
1101
1201
1301
1401
1501
(年/月)
(資料)日本銀行
(注)直近残高10兆円以上の項目を抜粋
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情
報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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外債
国債
投資信託
-15
金銭の信託
-1.0
-4
CD
-10
準通貨
(定期預金など)
-2
0.0
預金通貨
(普通預金など)
0
現金通貨
2