貿易統計 16 年 7 月

ニッセイ基礎研究所
2016-08-18
貿易統計 16 年 7 月~円高が進む中、
輸出数量は横ばい圏で踏みとどまる
経済研究部
斎藤 太郎
E-mail: [email protected]
経済調査室長
TEL:03-3512-1836
1. 原油安の影響で貿易収支は前年に比べ大幅改善
財務省が 8 月 18 日に公表した貿易統計によると、16 年 7 月の貿易収支は 5,135 億円と 2 ヵ月連
続の黒字となり、事前の市場予想(QUICK 集計:3,052 億円、当社予想は 3,154 億円)を上回った。
円高の影響で輸出入ともに前年比で二桁の減少となったが、原油価格の大幅下落を反映し輸入の減
少幅(6 月:前年比▲18.8%→7 月:同▲24.7%)が、輸出の減少幅(6 月:前年比▲7.4%→7 月:
同▲14.0%)を大きく上回ったため、貿易収支は前年に比べ 7,749 億円の大幅改善となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲2.5%(6 月:同 3.1%)、輸出価
格が前年比▲11.8%(6 月:同▲10.1%)
、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲4.0%
(6 月:同 0.4%)、
輸入価格が前年比▲21.5%(6 月:同▲19.1%)であった。
(前年比)
30%
貿易収支の推移
(前年差、10億円)
2,000
1,500
20%
1,000
10%
500
0%
0
▲500
▲10%
▲1,000
貿易収支・前年差(右目盛)
輸出金額
輸入金額
▲20%
▲30%
▲1,500
▲2,000
1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410 1501 1504 1507 1510 1601 1604 1607
(資料)財務省「貿易統計」
(前年比)
20%
(年・月)
輸出金額の要因分解
輸出金額
15%
(10億円)
貿易収支(季節調整値)の推移
1,600
1,400
1,200
1,000
800
輸出(右目盛) 輸入(右目盛)
600
400
200
0
▲200
▲400
▲600
▲800
▲1,000
▲1,200
▲1,400
▲1,600
▲1,800
貿易収支(季節調整値,左目盛)
▲2,000
1201
1207
1301
1307
1401
1407
1501
1507
(資料)財務省「貿易統計」
(前年比)
30%
数量要因
価格要因
輸入金額の要因分解
数量要因
価格要因
25%
20%
輸入金額
15%
10%
1601
(10億円)
8,000
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
-1,000
-2,000
-3,000
-4,000
-5,000
-6,000
-7,000
-8,000
-9,000
-10,000
1607
(年・月)
10%
5%
5%
0%
0%
▲5%
▲10%
▲5%
▲15%
▲10%
▲20%
▲25%
▲15%
1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410 1501 1504 1507 1510 1601 1604 1607
(資料)財務省「貿易統計」
(年・月)
1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410 1501 1504 1507 1510 1601 1604 1607
(資料)財務省「貿易統計」
(年・月)
季節調整済の貿易収支は 3,176 億円の黒字となり、6 月の 3,366 億円から黒字幅が縮小した。円
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高の影響で輸出入ともに減少したが、数量の落ち込みが大きかった輸出の減少幅(前月比▲1.8%)
が輸入の減少幅(同▲1.6%)を若干上回ったことが貿易黒字の縮小につながった。
2. 輸出数量は横ばい圏の動きが継続
7 月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比 0.5%(6 月:同 2.9%)
、EU 向けが前
年比 4.1%(6 月:同 8.0%)
、アジア向けが前年比▲0.0%(6 月:同 1.9%)となった。
季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比▲0.3%(6 月:同 10.1%)、EU 向
けが前月比▲1.6%(6 月:同 10.3%)、アジア向けが前月比▲1.7%(6 月:同 4.9%)
、全体では前
月比▲1.6%(6 月期:同 1.6%)となった。7 月
(2010年=100)
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移
120
は全ての地域向けが前月比でマイナスとなった
米国向け
が、6 月に非常に高い伸びとなった後としては落
110
ち込み幅は小さい。
100
16 年初から大幅な円高が進む中、輸出数量は今
全体
90
のところ横ばい圏で踏みとどまっている。ただし、
80
為替変動の影響が輸出数量の変化に現れるまで
EU向け
アジア向け
70
1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410 1501 1504 1507 1510 1601 1604 1607
にはタイムラグがあるため、円高による下押し圧
(年・月)
(資料)財務省「貿易統計」
力は今後強まる可能性が高い。
4-6 月期のGDP統計では財貨・サービスの輸出が前期比▲1.5%となり、外需寄与度が前期比▲
0.3%と 4 四半期ぶりのマイナスとなった。円高に伴うインバウンド需要の鈍化からサービス輸出
も弱い動きが続いていることを合わせて考えると、7-9 月期も外需が成長率の押し下げ要因となる
可能性が高いだろう。
3. 貿易黒字(季節調整値)は縮小へ
7 月の通関(入着)ベースの原油価格は 1 バレル=47.8 ドル(当研究所による試算値)となり、
6 月の 45.3 ドルから上昇した。足もとのドバイ原油は 40 ドル台半ばとなっているが、当研究所で
は 16 年度末にかけて 50 ドル程度まで上昇すると予想している。
円高は輸出価格、輸入価格をいずれも押し下
げるが、先行きは原油価格持ち直しの分、輸入
(ドル/バレル)
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移
130
120
ドバイ原油
110
入着ベース
価格の低下幅のほうが小さくなる公算が大きい。
100
90
一方、数量ベースでは輸出が円高、海外経済の
80
70
減速から弱めの動きが続く一方、輸入は国内需
要の回復に伴い持ち直しに向かうことが見込ま
れる。このため、貿易収支(季節調整値)は黒
60
50
40
30
20
1204 1207 1210 1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410 1501 1504 1507 1510 1601 1604 1607
字幅の縮小傾向が続き、16 年度末には小幅なが
ら赤字に転落すると予想している。
(注)入着ベースは円/キロリットルをドル/バレルに換算したもの。ドバイ原油の8月は8/1~8/17の平均
(年・月)
(資料)財務省「貿易統計」
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