2015 年度 早稲田大学 文化構想学部 (日本史) 解答解説

2015 年度 早稲田大学 文化構想学部 (日本史) 解答解説
Ⅰ
解答
1=ウ
2=若草伽藍
3=オ
4=エ
5=エ
6=イ
7=ア・オ
8=平重衡
9=勧進
10=イ
解説
《古代~中世の仏教建築》
富岡製糸場の世界遺産登録を受け、出題が予想されていた世界遺産に関する問題。2014 年度は伊勢神宮の式年
遷宮を受けた神道や国家祭祀の問題、2013 年度はロンドンオリンピックを受けた交通史の問題が出題されるなど、
文化構想学部は時事に即した出題が多くみられる。
1のウは当時の新羅との関係を考えれば誤りであると気が付く。 2の「若草伽藍」は山川出版社(以下、山
川)の『詳説日本史B』の脚注の用語であるが、本学受験者であればしっかり解答したい用語である。 3の不
空羂索観音像が安置されている東大寺「法華堂」は基本問題。法華堂改修が 2013 年に終わり、不空羂索観音像の
両脇に安置されていた日光・月光菩薩像が東大寺ミュージアムに移転したことでも話題になった。 4のエの『行
歴記』が円珍の著書であるということは難しいが、消去法で判断できる。 5の「法住寺」は山川の『詳説日本
史B』の脚注に掲載はされているが難問である。 6の「蓮華王院」は平清盛が建立し、後白河法皇に寄贈した。
7・8は基本問題である。 9の「勧進」とは寺社や仏像などの建立・修繕などに寄付をすることを指す。受験
者にとって「勧進」を記述させることは難問に感じるかもしれないが、本学部の 2011 年度に選択問題で既出であ
る。本学を受験するにあたって、過去問学習にはしっかりと取り組みたい。 10 の天文法華の乱から「延暦寺」
と一向宗の対立を導き出すのは容易である。
Ⅱ
解答
1=エ
2=碧玉
3=ウ
4=伴造
5=たたら
7=長船
8=イ・エ
9=イ
10=ウ
11=エ
6=イ
解説
《原始~近代における鉄器と鉄生産の歴史》
各時代の鉄器や鉄の生産方法について問う問題で、平易な問題と難解な問題の差がはっきりしていた。平易な
問題は確実に得点しておきたい。
1の「大鋸(おが)
」は難問。大鋸とは室町時代に中国から輸入された鋸(のこぎり)である。
「鉄鏃」は鉄製
の矢じりであり、弥生時代から使用がみられるようになった。
「刀子(とうす)
」とは小刀のことで、弥生時代か
ら鉄製の刀子の使用が確認されている。 2の「碧玉」も難問である。山川の『詳説日本史B』には腕輪型石製
品とあり、
「碧玉」の用語はみられない。山川の『日本史用語集』には記載があるが、これを記述で解答するのは
難しい。 3・4・5は基本問題。5の「たたら」は本文8行目の「送風装置のある炉」や9行目の「出雲の砂
鉄」などから判断できる。また、設問文にも「平仮名3字」とあり、本学ではよく文字指定のある設問が見受け
られるが、その設問もヒントになることを意識しておこう。 6はやや難であるが、山川の『詳説日本史B』に
も記載があり、
「たたら」の図を用いて大々的に取り上げている。本学受験者は、教科書の脚注にもよく目を通し
ておきたい。 7は基本問題。 8のアは北条高時の建長寺船の派遣などにみられるよう、元との私貿易は行わ
れていたので誤り。ウは足利義持は父の義満が開始した日明貿易を中断しているので誤り。オは「室町幕府によ
る統制がとれず」が誤り。倭寇の禁圧を積極的に行ってきた対馬の宗貞茂が死去すると、倭寇の活動が活発とな
り、応永の外寇の要因となった。 9の「銀」は南蛮貿易の主要な輸出品である。17 世紀初頭の日本の産銀量は
世界の総産銀量の約3分の1に当たった。 10・11 は基本問題である。
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Ⅲ
解答
1=えみし
7=イ・ウ
2=ア
8=イ・エ
3=ウ
9=開拓使
4=イ
10=華族
5=那覇
11=ア・オ
6=朝鮮
解説
《古代~現代における琉球と蝦夷の歴史》
テーマ史としては王道の琉球・蝦夷史ではあるが、意外にも本学部で大問のテーマとして扱われるのは初めて
である。平易な問題が多いので、2以外は全問正解を狙いたい。3・4の設問に正答できるかどうかで差がつく
だろう。
1は基本問題。 2は俊寛が「鬼界島」に配流となったことは本学受験者であれば覚えておきたいが、薩摩国
の鬼界島が現在の硫黄島であると判断するのは難しい。 3の「志苔館」は山川『詳説日本史B』の脚注に掲載
されている語句ではあるが、本学受験者ならば正答したい。 4のアは朱元璋は元を滅ぼして明を建国したので
誤り。ウは足利義昭ではなく、義満である。エの足利義教は義持が中断した日明貿易を再開させた。ただし、オ
の選択肢は微妙である。明の太祖である洪武帝は、懐良親王を日本国王に冊封し、倭寇の取り締まりを要求した
が、懐良は文章不遜としてしりぞけた。オの文は懐良親王が何を拒絶したのかが明記されていないため、判断に
迷う。しかし、イの選択肢は山川の『詳説日本史B』にも「明は中国を中心とする伝統的な国際秩序の回復を目
指して、近隣の諸国に通交を求めた」とあるので正文である。 5は基本問題。漢字で記せるかどうかが勝負で
ある。 6は設問に倭館が置かれた国とあるので「朝鮮」と判断できる。 7の「クナシリ・メナシの戦い」は、
山川の『詳説日本史B』にも「1789 年に国後島で起きたアイヌによる蜂起」としか記載がなく、やや細かい知識
ではあるが、コシャマインの戦いが室町時代の出来事であるので、消去法で正答は導き出せる。 8のウの表記
には一瞬戸惑うが、イは千島ではなく樺太の放棄であり、エも廃藩置県で琉球は鹿児島県に編入されたことを考
えると正答はイ・エとなる。 9・10 は基本問題。10 は多少悩むかもしれないが、設問の「漢字2字」をヒン
トにするとよいだろう。 11 のオはベトナム戦争は 1965 年~1973 年まで続いているので、1972 年の沖縄返還よ
りも戦争終結は遅いので誤り。アの「吉田茂が沖縄の日本復帰交渉を進めた」かどうかは判断がつかない生徒も
いると思うが、イ・ウ・エはすべて正文であると判断できるので消去法で解答できる。
Ⅳ
解答
1=エ
7=イ
2=ウ
8=ア
3=オ
9=ア
4=ア
10=食糧管理法
5=徴兵告諭
11=不在地主
6=農会法
解説
《近世~現代にかけての農村社会と農村に対する政策》
農村をテーマとした社会経済史。五節句を答えさせるなど細かい語句まで問われているが、農村をテーマとす
る社会経済史は早稲田大学の頻出テーマなので、過去問学習を繰り返しながら知識を蓄えておきたい。
1のアは北前船は東回り航路ではなく、西回り航路を就航しているので誤り。イは内海船は渥美半島ではなく、
知多半島を拠点としているので誤り。ウは樽廻船と菱垣廻船が逆である。オは樽廻船は酒荷専用の船なので誤り。
2は消去法で判断しよう。 3の五節句に該当しない用語を選ぶ問題はやや難しい。正しくは「月待」ではなく、
「重陽(9月9日)
」である。ただし、
「五節句」
「日待・月待」
「庚申講」が当時の庶民信仰であると知っていれば、
消去法で解答は導き出せる。 4のアの『農政本論』は宮崎安貞ではなく、佐藤信淵の著作である。 5は本文
7行目に「血税」の語句がみられるので「徴兵告諭」であると判断できる。 6はやや難。最難関大学では時折
出題がみられるが、記述問題となると難しい。
「農会法」は 1899 年に農事改良を図る目的で公布された。 7は
基本問題。
「1932 年5月」
「挙国一致内閣」
「農山漁村経済更生運動」などから斎藤実内閣を導き出そう。 8は
まず消去法を用い、イ・ウ・エが誤りであると判断したい。イ「国民精神総動員運動」やエ「産業報国運動」は
日中戦争勃発後に開始された運動である。ウは国体明徴声明を岡田啓介内閣が発表した。アとオで悩むが、オ「満
蒙開拓青少年義勇軍」は 1938 年に国民精神総動員運動の一翼をになった組織である。 9のアの「小作料統制
令」とは、戦時下に米の生産力を増大させるために、地主の小作料引上げ停止を命じた法令である。一般的には
難問にあたるが、当校の【最難関大日本史選抜S】テキストには小作料統制令の内容に関しての記載があるため、
城南予備校生は解答を導き出すことができたはずである。 10 の「食糧管理法」とは、1942 年に制定された、
乏しい食糧を国民に公平に配給するための法律である。 11 は基本問題。
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