たたらが日本遺産に認定 - 日本美術刀剣保存協会

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然資本」としての潜在的かつ歴史的地
今回日本遺産認定がなされたこと
力が認識できることと思います。
で、地元はさらに活気づき、世界遺産
と、たたらはこの地域の一大産業とし
ども輩出されました。そして単なる鉄
認定へと歩みを進めることとなるでし
て大いに繁栄し、多くの山林大地主な
づくりだけではなく、地域一帯となっ
ょう。日刀保たたらもその一角に名を
と思います。その認定に 向 け て ま ず は
があることは、以前もお 伝 え し た こ と
「たたらを世界遺産に」という動き
出雲地域ならではの「美」をなしてい
はソバの栽培も行われ、その景観は奥
の跡地は棚田として整備され、さらに
今日にまで残してきました。鉄穴流し
筆すべき技術と「ものづくり文化」を
生産のための山林保護などからは、特
砂鉄採取のための鉄穴流しや、木炭
ます。
日刀保たたら運営に全力を挙げて参り
その重みをさらに咀嚼しつつ、今後も
も言えることです。この事実を踏まえ、
値を日々再生産していることの証左と
らが現在進行形で、文化財としての価
連ねていることは、まさに日刀保たた
世界発信への第一歩
〝 た た ら 〟が 日 本 遺 産 に 認 定
てたたらという文化を守っていこうと
地歩を固めようという意 図 の も と 、 日
ます。また、木炭生産に関わる森林保
いう歴史が刻まれてきました。
刀保たたらが所在する島 根 県 の い く つ
護政策は、『文明崩壊』や『銃・病原菌・
かんな
かの自治体が、日本遺産 へ の 認 定 手 続
鉄』を書いたジャレド・ダイアモンド
黒 滝 哲 哉 きを進めていました。そ の 成 果 が 本 年
によって高く評価され、環境問題解決
四月二十五日に結実し、 つ い に 「 日 本
「絲原家住宅」
「奥出雲たたら製鉄およ
街並み」「金屋子神社」「櫻 井家住 宅 」
が残されています。さらに時代が降る
史的には『出雲国風土記』にその記述
鉄の生産は神話時代から語られ、歴
先進性、そして奥出雲地域のもつ「自
の各所を回れば、
たたら文化の奥深さ・
と言っても過言ではないでしょう。こ
(たたら・伝統文化推進課長)
遺産」への認定がなされ ま し た 。 こ こ
とが明らかとなってきました。
への大きなトピックが含まれているこ
日本遺産の手続きは、「出 雲 国 たたら
では、その内容をお伝え い た し ま す 。
繫 が っ て い き ま す。 い わ ゆ る「 秘 境 」
び棚田の文化的景観」など総計三十箇
日本遺産へ認定された「日刀保たた
として語られがちの地域です。しかし
所におよび、たたら文化を語る上での
風 土 記 ― 鉄 づ く り 千年が生んだ物語」
町の三市町村です。そこ で は 、 た た ら
ながら、その「秘境」の持つポテンシ
ら」以外での構成文化財としては、「菅
を通じて奥出雲地域一帯 が 繁 栄 し て き
ャルの高さを語り尽くしてくれるのが、
谷たたら山内」「田部家土蔵群と吉田の
た歴史が語られ、単なる 鉄 造 り の 技 術
必要十分条件は、ほぼ網羅されている
というタイトルで申請さ れ 、 申 請 者 は
のみならず、たたらを中 心 に し て 形 成
たたら製鉄なのです。
地元自治体の雲南市・安 来 市 ・ 奥 出 雲
された文化や社会のあり 方 な ど が 強 調
この三市町村は島根県 で も 東 部 に 位
されています。
置しており、山間部は広 島 と 岡 山 へ と
13 刀剣美術2016.10(717号)