大学 学部 全体概況

2015 年度 慶應義塾大学
理工学部
物理
全体概況
試験時間 物理・化学で 120 分
大問数・解答数
難易度の変化(対昨年)
大問数:3 題
○ 難化
○ やや難化
解答数:28 問
● 変化なし
問題の分量(対昨年)
○ 多い
● 変化なし
出題分野の変化
○ あり
● なし
出題形式の変化
○ あり
● なし
新傾向の問題
○ あり
● なし
○ やや易化
○ 易化
○ 少ない
総評
例年大問3題で、力学と電磁気学が必ず1題ずつ含まれており、残りの1題は、今年は熱力学であっ
た。原子分野は出題されず、入試要項に記載されているように、「旧教育課程履修者に配慮した出題」
であった。昨年は、
(例年波動と熱力学が隔年で出題されていたのに)2 年連続で波動が出題され、受験
生を驚かせたが、今年は順調に熱力学で、多くの受験生は「ホッ」としたことだろう。題材も、過去に
様々な大学で出題されているものばかりで、図を見たときに安心感があり、取り組み易いという印象を
受ける。ただし、昨年同様に符号処理に慎重さが必要な問題が多く含まれていた。
問題の分量は、昨年が「描図を1つ含む 27 問」だったのに対し、今年は「描図を1つ含む 28 問」で
あった。今年の方が計算力を要する問題を多く含むが、描図は、おなじみの「圧力-体積グラフ」で描
き易く、分量は昨年と同程度である。解答時間 60 分で 28 問を完答するのは、実験条件を慎重に読み取
らなければならない設問も含まれるため、かなり手ごわいことは例年通りである。しかし、力学と電磁
気学では、重心・相対運動について深く理解していれば、処理が楽になる問題だったので、物理の力を
正しく身につけた受験生なら、
(化学の解答時間を奪うことなしに)全問正解も夢ではないことも、昨
年同様である。
大問1の力学は、典型的な相対運動の問題である。問題文中にも明記されているように、
「弾性衝突
では反発係数=1」つまり、「衝突前の近づく相対的速さ=衝突後の遠ざかる相対的速さ」に注意して
解けばよい。大問1だけ「適切な式、または数字を記入」と文頭に書かれていることは、
(ウ)を答え
る時の安心材料となる。
(キ)は相対加速度から求めるように誘導されているが、結局、小物体と容器
の相対運動エネルギーを動摩擦力で割った値となる。
大問2の電磁気学は、導体棒が磁場を切ることによる電磁誘導に関する頻出問題である。導体棒の役
割を電池に置き換えてしまうと、短時間に処理できる。2)は、近年では一昨年に東工大が類題を出題
している。東工大では、2つの導体棒の運動量が保存することを定量的に証明する誘導となっていたが、
慶應大学は、定性的に1行で運動量保存成立(重心運動エネルギー不変)に説明を与えている。結局(キ)
は、2つの導体棒の初めの相対運動エネルギーを抵抗に比例するように分配すればよい。
大問3の熱力学は、熱サイクルの標準問題である。ばねを縮めた状態でピストンに接触させる条件は
目新しい。2012 年度に出題された熱サイクルでは「圧力-体積グラフ」を与えて、熱効率を計算させ
ていたが、今年は受験生自身に「圧力-体積グラフ」を描かせて、熱効率を計算させている。与えられ
た図は見やすく、最後に特別な条件もあるので、どんな現象かをしっかり読み取れば描図に手間取るこ
とはない。
慶應大学の問題を解けば、
「物理は何が大切なのか」がはっきりとわかる。物理は、数学の演習問題
というわけではなく、まずどんな現象なのかを定性的に感じることが、その本質である。それを常に大
切にしながら、定量的な演習も繰り返せば、必ず良い結果を手にすることができる。たとえば、今年の
大問2の2)を例にとると、「運動量保存則成立の理由をひとことで説明できるようにしておく勉強」
こそが、合格にとって最も重要である。
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