輪換畑における有機物施用による土壌化学性の変化

輸換畑における有機物施用による土壌化学性の変化
1 試験のねらい
水田の汎用化は養分の溶脱や地カの減退が予想され、特に火山灰土壌では透水性が大きく保肥
カが弱いので、積極的な肥沃度改善対策が必要となる。そこで有機物の処理方法の違いにより、
輸換畑と連用水田の土壌の化学性に及ぼす影響を検討した。
2 試験の方法
大豆・ビール麦を作付している場内輸換畑(厚層多腐植質多湿黒ボク土)および水稲連作水田
において有機物を以下の処理により施用して検討した。各年ともおおむね大豆は6月下旬に播種
し10月中旬収穫、ビール麦は10月下旬に播種6月上旬収穫、水稲は5月上旬に移植し9月中旬に
収穫した。
有機物無施用区、前作の稲わら及び表わらの鋤込み区、前作わら十牛ふん区、牛ふん区、前作
わら牛ふん堆肥区の5処理とし、全面全層に施用した。牛ふんは夏作1回、前作わら牛ふん堆肥
は年2回施用した。施用量は牛ふんは200㎏■a(現物)、前作わら牛ふん堆肥は150㎏■a(現
物)とし、水分はおおむね60%であった。分析は夏作跡地土壌(ユ0月採土)について行い、可分
解性有機態窒素は速度反応論的手法による金野らのプログラムにより算出した。
3.試験結果および考察
(工〕地.力窒素の指標の一つと考えられる可分解性有機態窒素は、輸換畑の場合、前作わら牛ふん
堆肥施用区で最も増加し、前作わら十牛ふん区、前作わら鋤込み区がこれに続き、牛ふん区で
は変化がなカ)った。有機物無施用区では減少した(図一1)。連用水田の場合、前作わら牛ふ
ん堆肥施用区で最も増加し、前作わら十牛ふん区、牛ふん区、前作わら鋤込み区の順となり、
有機物無施用区では変化がなかった(図一2)。
(2)交換性カルシウムは、輸換畑の場合、昭和63年から平成2年の間に全体的に減少傾向を示し、
前作わら牛ふん堆肥区で特に著しかった。連用水田の場合、牛ふん区で減少が著しかった(図
一3,4)。
13)交換性マグネシウムは、輸換畑、連用水田とも牛ふん区で減少しており、特に連作水田で昭
和63年から平成2年の間の減少は著しかった(図一5,6)。
(4)交換性カリウムは、輸換畑の有機物無施用区で減少したが、その他の処理区では増加傾向に
あり、輸換畑、連用水田とも前作わら牛ふん堆肥区で増加が大きかった(図一7,8)。
以上から連用水田と輸換畑を比較すると、輸換畑は可分解性有機態窒素の低下がみられ、地力
の消耗が考えられる。また連用水田、輸換畑とも有機物の施用で塩基バランスに変化が生じ得る
ことが考えられる。
4 結果の要約
有機物の処理方法が、輸換畑と連用水田の土壌の化学性に及ぼす影響を検討した。可分解性有
機態窒素は、輸換畑では有機物を還元しないと低下するので、鋤込みや堆肥化して施用する必要
性がある。有機物の施用により交換性カルシウム、マグネシウムの減少、カリウムの増加が認め
られ、塩基バランスの変化が示唆されたことから、石灰、苦土の施用が必要と考えられる。
(担当者 土壌肥料部 小林靖夫)
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