生物工学的手法を用いた無病こんにゃ くの計画的増殖法 ー

生物工学的手法を用いた無病こんにゃくの計画的増殖法
1.試験のねらい
生物工学的手法を用いて無病こんにゃくの計画的な増殖を図るための培養条件を検討し、将来、
県内こんにゃくのウィルスフリー種球の生産供給体制確立に資するものとする。
2.試験方法
在来種の生子を殺菌して茎頂培養を行った。無菌的に生育した培養個体の葉の一部を用いてこ
んにゃくモザイクウィルス(KMV)の検定(EL I SA法)を行い、KMVフリーを確認した
培養個体を増殖のための元株とした。
増殖のために無菌個体の葉柄、塊茎、根をそれぞれ用いた。
葉柄は5㎝程度に切取ったものを約7㎜の長さに細切し、シャーレの培地に置床した。1か月
後葉柄の切断面から形成したカルスを約10㎎の大きさで目的とする数に細切し培養すると約3
か月で馴化可能な幼苗となった。この間20日ごとに継代し、シュートが形成してからは発根用の
培地に移植した。塊茎は約50∼100㎎の大きさに細切しシャーレで培養した。培養の初期に目
的の数に分割しその後は2週間ごとに継代しながら塊茎を肥大させ、シュートが形成してからは
発根用の培地に移植し、馴化可能な幼苗とした。
根は約5mの長さに細切し培養後工か月後に形成したカルスを増殖培地に移し、増殖したカル
スを不定胚誘導培地に移行した。移行後約1か月ごろから胚様体が形成し、それらは数日のうち
に塊茎になるとシュートを形成しながら発根した。根から形成したカルスの一部は5℃で30日間
保存し、増殖をほぼ停止させた後、再び25℃の増殖条件に移行させた。
馴化したユ,017個体の中から28個体の葉についてKMVの検定を行った。
3 試験結果およぴ考察
培養条件を検討した結果、それぞれの培養に最も適した条件を表一1に示した。また、無菌母
株の葉柄、塊茎、根を用いた増殖フローを図一1に示した。それぞれの培養系の長所と短所を示
したものが表一2である。根から形成した胚様体は不定胚としては不完全であるため今後さらに
検討する必要がある。また根から形成したカルスを低温で増殖をほぼ停止させ、3か月後に再び
増殖、再分化能を有していることが確かめられた。今後、保存期問の延長を図ると共に凍結法、
乾燥法など他の保存方法についても検討する必要がある。大量増殖の手法は増殖の向上を図ると
同時に無菌個体の保存法が確立されて増殖の制御が可能となることによってさらに実用に即した
増殖技術に発展すると考えられる。
なお、馴化した個体のKMV検定結果は全てウィルスフリーであることが確認された。
4 成果の要約
こんにゃく在来種の茎頂培養により得られた無菌個体のうちKMVフリーを確認した個体を培
養元株としてその葉柄、塊茎、根からの計画的な増殖法を開発した。
(担当者 生物工学部 小林光子)
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表一1 培養条件’覧
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根から形成したカルスと胚葉体
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10月 11月
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12月 1月 2月
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図一ユ
こんにゃくの増殖フロー
(1本の母株から1,000個体を増殖すろ場合)
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