オーク200の失敗は誰が責任をとるのか

2015年2月10日
大阪市土地信託事業の失敗
オーク200
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受託行は、平成21年3月13日、信託勘定における借入金合計161億円を立替
処理し、平成22年3月31日、大阪市を被告として、旧信託法36条2項に基づく
建替金請求訴訟を提起した。また、受託行は、訴訟提起後も、立替処理を続行して、
大阪市に対する請求額を増額させており、最終的には、遅延損害金を除き、合計63
7億円の支払を請求した。
そして、平成25年3月7日、受託行の請求を全部認容する判決が言い渡された。
外部監察チームから出された弁天町駅前開発土地信託事業(オーク200)及び住之
江用地土地信託事業(オスカードリーム)に係る大阪市内部の責任の所在に関する報告
書(2014年12月1日)を読むと(全62ページ)、
この土地信託契約締結は昭和62年12月18日市長決裁を、同月28日に大阪市議
会の議決を経ている。平成3年5月に受託行は「総事業費は当初計画の約647億円に
325万円上乗せした972億円に」と報告。平成5年事業計画書に「総事業費は、当
初計画の645億円から381億円上乗せして1027億円に」。平成5年開業後から
平成8年までの賃料収入は毎年見積額を下回り、借入残高は当初見積額の倍、となって
いる。
平成6年9月には、本件信託事業が当初の目的を達成できないことが明らかとなり、
これ以降の資料やこれ以降担当した職員からのヒヤリングを通しても、強い危機意識を
持って抜本的改善策を模索するための取組みがなされた確たる形跡はなかった。
すなわち、本件信託事業についての大阪市と受託行との協議は、事業の改善が達成で
きず、借入金の返済ができないことによる期限の猶予等の協議や金利引き下げの交渉等
目先の運営上の協議に留まるものであった。また、当時の担当課職員においても、漫然
と受託行に対する責任追及の認識を有している者は存在するものの、大阪市全体として
は、平成18年に開始された検討会議において本格的議論がなされるまで、受託行の管
理失当(善管注意義務違反等)に関する責任追及等種々の法的手続き等について本格的
な議論がなされた確たる形跡は認められなかった。
平成12年5月12日(大阪市)監査委員報告書の第三者の意見(36から37頁)に、
・・・「信託財産の運用状況については、総事業費が647億円から1027億円に
増大したことにより借入金が700億円以上に及んでいるにもかかわらず、賃料水準の
低迷などを反映し、年額32億700万円の賃料収入に止まっている。しかも、その大
半が管理運営費用や借入金利息の支払いに費やされるため、借入金の償還はほとんど進
んでおらず、本事業の目的の一つである、公有地の運用を信託して得られる信託配当に
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至っては全く目処が立っていない状況にある」。また、平成12年度以降に予定されて
いる「修繕引当金」も計上されていないことから、新たな資金調達が必要になるなど、経
営状況は一層厳しいものとなることが予想され、信託期間満了時には多額の借入金未済
となることが危惧されるところである」と記載されている。
さらに、財政局に対する要望事項として、「本信託事業の受益者(大阪市)として、信
託事業財産の管理状況について、自らの調査権に基づき、適宜調査するなど運用実態の
把握に努めると伴に、事業主体である受託者(受託行)に対して、早期に中長期的に渡る
「収支改善計画」を作成させ、具体的な対応について協議を進められるよう強く要望す
る」と記載されている。
前記監査委員の報告を受けて、総務局長は、財政局長に対し、措置状況報告書の提出
を依頼したが、これに対する財政局の報告案として、「当該指摘事項については、受託
者(受託銀行団)に対してなされたものであり、当局(委託者)についてのものではない。
なお、要望事項については、今後、監査事務局と調整を行う」と記載されている。
結局、大阪市が受託行に対する責任追及や本件信託契約の解除を含めた抜本的解決策
の検討を始めたのは、平成18年に検討会議が開始されてからである。
大阪市としては、監査委員の指摘等複数の大きな転機となりうる事象を何度か経てき
たにもかかわらず、結果的に受託行との折衝の段階から次の段階に進めるか否かの決断
に至らなかった。決断の時期を早めていれば、本件信託事業の結末が現在のものとは違
った形になった可能性は否定できないと考える。
とある。
ここでも前々市長関氏の「市政改革推進会議」を思い出す。この会議において各局の
未収金の調査が行われ未収金総額700億円が判明したとき、関市長は「このようなデ
ーターは、今までなら出てこなかったものです」と驚を交えて自賛していた。市民から
すれば何を言っているのかと呆れたが、正に関市長の認識通り、硬直した縦割り組織等
の弊害が無責任な施策の温床となっていたことは明らかだ。
オーク200は平成5年の開業当初から破綻していた、といえる。計画段階から予算
総額は見積額を約400億円も増加させて1000億円超となるなど、度々の受託行か
らの提案や報告をみると市は全てに受託行の言いなりであったように見える。そして受
託行提案書にある見積額を下回る収益であるにもかかわらず受託行への金利は支払わ
れ、大阪市の借入金はそのまま残債された。
多額の借入金が返済できなければ当然将来的には市民負担となる。平成12年の大阪
市監査委員の意見をもとに市財政局はそのような市民負担を無くすためにしかるべき
適切な対策をとる責務があったはずだ。
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事業は市長の決済、市議会の議決を得て実施され、7年後には大阪市監査委員が財政
局にたいして、「運営実態の把握に努め、受託行に対して『収支改善計画』を作成させ
る」など早急に是正措置を取るべきと指摘している、にもかかわらず財政局はこれを放
置した、大阪市の事業実施は意図的に責任の所在を不明確にし、失敗しても責任を免れ
るようにしたと考えられるが、そうであれば市は事業などしないなど税の使い方を見直
すべきだ。
橋下市長はこの土地信託事業の失敗について、大阪市内部の責任の所在を明らかにす
ると述べて、外部監察チームが調査し報告したものだ。
二度とこのような事態を招かないよう、今後の対策として、どうするべきなのか?
誰が、どのように、このような事態の責任を取るのか?
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を市民に対して示すべきだ。