農村における高齢者の役割

農村における高齢者の役割
1 調査研究のねらい
農村の農業生産力は高齢化・婦人化の方向にあって、農業生産機能の弱体化を招いている。ま
た、進行する混住化と共にむら機能が停滞しつっあり、新たな方向が求められている。
そこで、農業生産条件の改善やむらの果たす機能を見直して、そこにおける高齢老の果たす役
割を明確にし、活力あるむら再編の資を得るため、昭和60∼62年に検討した。
2 調査研究方法
u)調査対象
経済地帯を踏まえて9市町村から下記の代表的集落を選定した。
都市近郊:宇都宮市海道町、佐野市伊勢山町
平地農村:西那須野町上井口、河内町相野沢’宝井下、野木町川田
農山村:那須町大深堀・小深堀・長南寺・北条、茂木町元古沢・仲・門庭
山 村:塩原町金沢中、粟野町滝沢・出口
(2)調査方法
60年:集落調査=集落に関するアンケート
61年:高齢老組織の実態調査(6集落)、高齢者の役割に関するアンケート(60才以上)
62年:高齢者の役割に関する生活行動記録調査(60才以上の夫婦)
高齢者に期待する役割に関するアンケート(60才以下)
3 調査結果及び考察
(1)経済地帯別集落の特徹
集落規模と自治活動から経済地帯別にみると、都市近郊では集落規模が大きく非農家が80
%をしめており、班(組)の数が多い。集落運営は役員中心であり、集落の意志決定の場は総
会であるがほとんどは班長会議で処理されている。
平地農村では集落規模は40戸前後が多く、分家など親戚関係が多い。純農村で農地は多く、
農家が70%以上をしめているが、一部非農家が入ってきているところがある。集落の意志決
定は総会・臨時総会で行ない、集落運営は役員会の話し合いで進めている。
農山村は集落規模は小さく班は少ない。集尊の意志決定及び集落運営は、毎月行われる集落
の常会で行われている。
山村は集落規模は30戸程度で3∼6班である。集落運営は役員と班長との違携で行われ、
意志決定は役員会が殆んどである。
(2)高齢老の役割行動の筆態
1)年齢区分による圭な生活行動の特徴
生産年齢高齢者は家庭生活でも農業生産でも中し的役割を担っている。集落においても自
治組織のリーダーであり、地域杜会へ貢献できる知識と技術と人間関係を持つてい乱
前期高齢老は家庭や農業生産から少しづつ解放されて、一時間的に余裕ができ、老人クラブ
活動等への参加が多くなる。このことは高齢者を狐独から守り励みにつながることから・高
齢老をして組織活動で多くの役割を果している。
後期高齢老は自分の身の回りのことをするのが役割である。健康者は前期高齢考に準じた
役割が発揮できる。
2)高齢老の役割行動と時間の実態(生産年齢高齢者)
高齢老の役割行動に関する時問は1日平均6時間39分、健康者は7∼ユ0時問・障害の
ある老は3∼4時間と個人差が大きい。全体的には家庭生活に47.5%、農業生産に37.5
一31一
%、集落活動に15.1%の割合である。
男女では役割分担に差がみられ、男は農業生産が主体で集落活動に重点がおかれている。
女は家庭生活が主体で60%をしめ、農業生産30%と自家の仕密が90%である。従って
集落や組織活動は少ない。
4 結果の要約
(1)むらの活性化をにかるためには、その集落の特徴を生かした法動をする必要がある。非農家
の多い都市近郊では非農家の集落活動への誘導と参画が必要であり、平地農村や農山村では農
業生産を高めることである。山村では自然環境を生かした都市住民との交流などがあげられる。
(2)高齢者の役割は、年齢別にみると家庭生活では70才前半まで、農業生産では60才代、集
落の自治活動に期待される年齢層は60才代前半までで、いずれも体力に応じた役割が期待で
きる。
(3)集落において高齢者に期待される主な役割は、地域・集落・農業面での調整や支援であり、
福祉面での貢献や文化の保存・伝承、生活環境の整備等がある。’さらに集落の先輩としての集
落後継老の百成やよい人問関係の醸成等がある。
表一1 経済地帯別むらの特徴(60集落調査)
項目
経済地帯
都市近郊
集落の
戸数規模
20行
農家
率
%
’戸当り
経営耕地
aユ31.5
21.5
農業就業人口率
班(組)
男(60才以 女(60才以
上)
上)
38.O%
62.0%
(21.9%)
(21.9%)
37.8%
622%
平地農村
70
71.4
283.9
(10.4%)
農山村
18
83.3
187.9
43.5%
56.5%
(16.6%)
(20.3%)
山 村
34
705
94.3
(18.7%)
33.4%
66.6%
(13.9%)
(22.1%)
自 治 組 織
数’ 会 議
ユ5誓
役員会 5 0
中 心
家庭
生活
生産年齢高齢老
5㈹0
1.3
全体会
3(ト60
役員会
50∼’ 話し合い
5.0
(常会)
中 心
1
前期高齢者 後期高齢老
(60−64才)
(65−74才)
(75才以上)
徐々に家計を譲る
庭木の手入れが中
男:家の代表者
補助者としての仕
心
事
体の動く範囲内で
女:家庭運営の
3ユ
中心者
農業
生産
農作業全般担い手
話し合い
ト15
1〔ト15
むら仕事
鯛
7.5回
7.8
5.9
3.7
1家庭生活30.8%
2農業生産43.8%
集落活動254%
の仕事
・際
農業経営の中心者
予算
規模
推せん十
10
話し合い
話し合い 5ト
100
選 挙
役員会十
臨時総会
家庭生活の責任者
としての交
役員選出
6.5
表一2 年齢区分による主な生活行動の特徴
項 目
役員
年A
経営は若い世代に
農業の忙しい時に
譲る
手伝う
手作業の部分を担
家碇菜園の管理
女
1家庭生活62.3%
2農業生産31.9%
3集落活動 5.8%
当
集落
活動
男:集落の自治活
老人クラブ活動へ
老人クラブ活動へ
動・生産組織
の参加
の参加
図一1 高齢者の役割行動時間
の活動
公共施設へ管理
神仏講への参加
(1日平均)
女:組織活動は少
神仏講への参加
(担当者 企画経営部
木館八重子)
ない
一32一