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結果
A1.イセエビ
採集具①と採取具②による稚イセエビの採集結果を表A-1(採集状況)
、表A-2(計
測結果)、表A-3に示した。なお、採集具③では稚イセエビは採集されなかった。
11 月(2回目)にはイソギンチャク域で9尾の稚イセエビ(図A-1)が採集された。採
集された稚イセエビは、頭胸甲長 20~35 ㎜、重量 11~44gであった。その他の再生藻場域
と磯焼け域などでは稚イセエビは採集されなかった。
図A-1 採取された稚イセエビ
表A-1 イセエビの採集状況
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表A-2 採集されたイセエビの計測結果
9月(2回共)と 11 月(1回目)にイセエビは採集されなかった。採集されなかった時
はいずれも設置した翌日に揚収しており、一方、採集された時は設置3日後に揚収してお
り、設置期間を長くしたことにより、稚イセエビが採集されたと考えられた。角籠とカニ
籠とも稚イセエビが採集されたが、角籠では8倍の稚イセエビが採集されており、今回使
用した角籠は稚イセエビの有効な採集具であると考えられた。導入部奥の口径別では、狭
口(5㎝)の採集数は広口(8㎝)に比べて7倍多かった。籠内に入れた餌および充填物
による違いは明かにできなかった。
表A-3 イセエビ調査時の混獲魚類
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2010 年9月と 11 月に、西海区水産研究所の吉村拓氏が稚イセエビの直接採集を行った。
その結果を図A-2(横軸:頭胸甲長CL、縦軸:尾数)に示した。
全域で稚イセエビは9月に 24 尾、11 月に 29 尾が採集され、9月と 11 月ともイソギンチ
ャク域のものが大半を占めた。9 月にはほとんど出現しなかったCL18~30 ㎜の個体が増
えているが、着底(CL7㎜)からCL20 ㎜に成長するまでにおよそ半年、30 ㎜にはおよ
そ 1 年を要することから(長崎での観察例)
、これらは 9 月以降の新規加入群ではなく、そ
れ以前の加入群と考えられた。イソギンチャク域にはCL18 ㎜(全長約 60 ㎜)より小型の
個体が出現しないことから、ポストラーバの着底場ではなく、隣接域に着底場があると考
えられた。隣接するクロメ場やクロメ・ノコギリモク場において、少数ながら着底直後の
個体が観察されたことから、周辺の藻場が着底場と考えられるが、基質の特徴からやや成
長した稚エビに適した隠れ場が少なく、イソギンチャク域に移入してくるものと推測され
た(吉村拓、私信)
。
図A-2 稚イセエビの直接採集結果
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再生藻場域では稚イセエビは 9 月と 11 月共に観察されなかった。再生藻場域には、着底
後、稚イセエビが入れる小さい穴が少ないことが関係している可能性も考えられる(吉村
拓、私信)
。
イソギンチャク域で 11 月に籠で採集された稚イセエビのCLの範囲は、直接採集したも
ののCL35 ㎜未満の範囲とほぼ一致しており(図A-2)、さらなる検証が必要であるが、
角籠で採集した稚イセエビは天然群の状態を反映している可能性が考えられる(吉村拓、
私信)
。
A2.アワビ・サザエ
アワビ・サザエの計測結果を表A-4、サザエの平均密度を図A-1に示した。
トコブシとメカイアワビは再生藻場域のみに出現し、対策域と磯焼け域には出現しなかっ
た。
サザエの地点別の3水深帯の平均密度は、再生藻場域で 0.5~0.7 個/㎡、対策域で 0.2
~1.5 個/㎡、および磯焼け域で 0.1 個/㎡であり、磯焼け域で少なかった。
表A-4 アワビ・サザエの計測結果
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図A-3 サザエの平均密度
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A3.磯魚
磯魚の種類数を表A-5、類似度(Bray-Curtis 類似度)を表A-6に示した。
磯魚の出現種類数は、8ラインで観察した5月についてみると、再生藻場域で 33 種類、
対策域で 34 種類、
磯焼け域で 36 種類と区域による差はみられなかった。
9月と 11 月でも、
区域による顕著な差は認められなかった。水深帯3mにおける再生藻場域と磯焼け域の類
似度をみると、5月と9月は相違していたが、11 月には顕著な相違はみられなかった。
表A-5 磯魚の種類数
(1)2010 年5月
(2)2010 年9月
(3)2010 年 11 月
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表A-6 類似度の計算結果
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磯魚の出現頻度(出現回数数/総観察回数数)を表A-7に示した。
磯魚の総種類数は 85 種類であり、5月 4 種類、9月 50 種類、11 月 49 種類であった。各
月とも出現し、かつ、出現頻度が高い種類はホンソメワケベラ、ホンベラ、カミナリベラ、
ソラスズメダイ、およびコウライトラギスであった。
表A-7 磯魚の種類別出現状況
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表A-8 磯魚観察時の周辺観察結果(1)
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表A-8 磯魚観察時の周辺観察結果(2)
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表A-8 磯魚観察時の海藻植生等の周辺結果(3)
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表A-8 磯魚観察時の周辺観察結果(4)
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まとめ
A1.イセエビ
・ イソギンチャク域で採集具により稚イセエビが採集されたが、再生藻場域、対策域、磯
焼け域では稚イセエビは採集されなかった。
・ 角籠型の採集具で稚イセエビが多く採集された。
・ 再生藻場域では稚イセエビは観察されなかった。着底後、稚イセエビが入れる小さい穴
が少ないことが関係している可能性も考えられた。
A2.アワビ・サザエ
・ トコブシとメカイアワビは再生藻場域のみに出現し、対策域と磯焼け域には出現しなか
った。
・ サザエの地点別の平均密度は、磯焼け域で少なかった。
A3.磯魚
・ 磯魚の出現種類数は再生藻場域とその他の区域で差は認められなかった。
・ 水深帯3mにおける再生藻場域と磯焼け域の類似度をみると、5月と9月は相違してい
たが、11 月には顕著な相違はみられなかった。
今後の課題
再生藻場域のイセエビ資源の涵養効果を高める方策を検討する必要がある。
アワビ・サザエと磯魚については、今後もモニタリングを継続する必要がある。
謝辞
本調査に協力して頂いた以下の関係機関・漁業協同組合の方々に感謝します。
大分県漁業協同組合名護屋支店、佐伯市農林水産部、大分県海洋水産センター
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