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再生藻場の水産涵養効果の評価
目的
モデル地区において、再生藻場の生物多様性とアワビ、イセエビなどの水産有用種の棲息
量をモニタリングすることにより、再生藻場の水産涵養効果を客観的に評価・解析し、再
生藻場の機能向上の方策について検討する。
方法
大分県佐伯市名護屋地先をモデル地区として、イセエビ、アワビ・サザエ、および磯魚を
対象として以下の調査を実施した。名護屋地先では、平成 19~21 年度に「岩礁域における
大規模磯焼け対策促進事業」が実施され、磯焼け海域にヨレモクモドキの藻場が再生され
ている。なお、水深は全てD.L.を基準とした値である。
調査方法A1/イセエビ
調査海域
大分県佐伯市名護屋地先
調査時期
2010 年9月、11 月、12 月
調査方法
イセエビは、5~10 月頃に着底し
(7、8 月がピーク)
、その後、藻場
内の小穴内で単独で過ごし、およ
そ1年後に穴から出て、岩礁域に
分散する。着底して1年程度経過
した稚イセエビを対象として、下
図に示す再生藻場域(水深 2~6
m)、磯焼け域(4m)、天然藻場域
(8m)、およびイソギンチャク域
(7~8m)の 4 区域に、2種類の
稚 イセエビ 用の採 集具を 設置し
た。なお、イソギンチャク域は、
巨礫が優占する海底にサンゴイソ
ギンチャクが広範囲に分布してい
るところで、着底直後から成体ま
でのイセエビが棲息しているとこ
ろであった。午後に設置し、翌日または3日後の午前中に揚収した。
採集具①角籠:鉄筋(φ10 ㎜)の枠(100 ㎝×60 ㎝×40 ㎝)を網地(目合9㎜、
ナイロン製)を張り、導入部(目合5㎜)を付けたものである(次頁写真上)
。
導入部の最奧部の口径は5㎝(狭口)と8㎝(広口)であった。内部には、9
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月調査時には全てにイセエビコレ
クター用の人工海藻を、11 月調査
時には一部にクロメを充填した。
誘因用の餌としては、オキアミま
たは粗く潰したムラサキイガイを
用いた。この採集装置は、西水研
の吉村拓室長に小型イセエビ(体
長 14~15 ㎝)を対象として水槽実
験を 6 月に行って頂き、装置内部
に若齢エビが導入されることを確
認した。採集時には、混獲された
魚類を記録した。
採集具②カニ籠:漁業で使われて
いる折りたたみ式のカニ籠(90 ㎝
×60 ㎝×H80 ㎝、写真中)を使用
した。
採集具③:角形ペットボトル(容
量2㍑)をカットし、上部を逆さ
まに押し込んで固定し、下側に鉄
筋φ9㎜×15 ㎝を2本取り付けた
ものを使用した(約 20 ㎝×約 10
㎝×約8㎝)
。内部に餌としてオキ
アミを入れた。採集具③は採集具
①に各6個をPPロープで結びつ
けて設置した。
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調査方法A2/アワビ・サザエ
調査海域
大分県佐伯市名護屋地先
調査時期
2010 年5月
調査方法
再生藻場域の 3 ラインと対策域 3 ライン、磯焼け域 2 ラインを設定し、各ライ
ンの水深 3m、6m、9mに 10mラインを無作為に設置し、両側1mの範囲(20
㎡)内のアワビとサザエを採集し、大きさを測定した。
同時にウニの種類別個体数を記録した。
調査方法A3/磯魚
調査海域
大分県佐伯市名護屋地先
調査時期
2010 年5月、9月、11 月
調査方法
アワビ・サザエ調査と同一地点で、5 分間静止し、360℃全方位に出現する磯魚
の種類、おおよその尾数(CR法)および視程で記録した。5 月調査時は透明
度が悪かったため、ライン沿いに出現した磯魚を対象として観察を行った。
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