第9講 『看護ケアⅡ(口腔ケア、浮腫のケア)』 要約 がん患者にとって苦痛な身体症状は、その人の暮らしに影 響を及ぼし、自分らしくあることを阻む要因の一つとなる。医 療者はこれらの症状が患者の日常生活やQOLに及ぼす影 響を適切に捉え、患者におこっている問題に対し丁寧にア セスメントし、ケアを行っていかなければならない。 本講では、これまでの講義をふまえて緩和ケアにおける口 腔ケア・浮腫ケアについて学んでいく。 終末期がん患者は全身状態の悪化やセルフケア能力の 低下から口腔トラブルが生じやすい。口腔トラブルは食べる ことや話すこと、コミュニケーションなどを困難にし、患者の QOL低下を招く。そのため口腔トラブルを最小限にとどめ、 少しでも口腔内を良好な状態にする事は、患者の尊厳ある 死を迎えるための大切なケアと言える。 終末期にあるがん患者の浮腫は、全身状態や予後が不良 であること、全身性の浮腫や廃用症候群、静脈性浮腫なども 混在することが多く、浮腫を軽減するための技術は制約され ることも多い。 しかしそのような状況であっても、浮腫に対するケアは最期 の瞬間まで可能である。患者は触れられる感触を通し、大切 にされているという感覚を得、人とのつながりを感じることがで きる。外見的な浮腫を軽減することにとらわれることなく、的確 な病態アセスメントに基づき、患者の状態に応じてどのような ケアが最適であるかを見極め、実践することが大切となる。 あさひかわ緩和ケア講座 2014
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