玩具からみる日本の子ども観の変遷 是澤博昭 Koresawa Hiroaki Otsuma Women’s University 「玩具は子どもの知的発達を促進させる」という教育観の受容は、幼児(就学未満児) 期を教育の対象としてみる、新しい子ども観の誕生の過程と連動している。 かつて日本の玩具は呪術的要素を含みながらも、子どもが楽しく遊ぶためのモノにすぎ なかった。玩具に教育的な関心が向けられるのはフレーベル思想が紹介されてからであ り、1900年前後には「教育玩具」という造語が流行し、1910年頃には、都市部 の新中間層を中心に、子どもの発達を促進させる玩具の与え方などが議論され、商品化 がすすむ。 学校制度の普及と大衆の教育要求の高まりが補いあう形で、日本の近代的子どもの観は 構築されるのである。 略歴 是澤博昭(これさわ ひろあき) 大妻女子大学家政学部児童学科准教授・博士(学術) 1959年生まれ。東洋大学大学院修士課程修了。 専攻:生活文化史・児童文化史(主に子どもに関わる生活文化・節句行事等の研究) 著書:『日本人形の美』(淡交社2008年)、『教育玩具の近代−教育対象としての子ど も誕生』(世織書房2009年)、『青い目の人形と近代日本』(世織書房、2011年)、『 子ども像の探究−子どもと大人の境界』(世織書房2012年)、『決定版日本の雛人形』 (淡交社2013年)ほか。 展覧会図録:『江戸の人形文化と名工原舟月』展(とちぎ蔵の街美術館、2005年)、『 日本人形の美と幻想』展(茨城県立歴史館、2006年)、『旧竹田宮家所蔵品受贈記念ひ なかざり』展(根津美術館、2011年)ほか。そごう美術館「日本人形の美」展(2010年) をはじめ各地の人形玩具関連の展覧会の監修指導のかたわら、近年は祭礼に使用される 山車人形の調査などにも従事する。
© Copyright 2024 ExpyDoc