第8章 国際金融市場と為替レート 前回の復習 海外 円 支 払 い ( ド ル ) 財 ( 輸 入 ) A 銀行 ドル 支 払 い ( ド ル ) B 銀行 円 ドル 円 ドル 輸出メーカー 輸入業者 販 売 財 ( 輸 出 ) 円 外国為替市場では、銀行を通じて 企業や個人が自国通貨と外国通 貨を交換している。 賃 金 支 払 い ( 円 ) 2 8.4. 為替レート変動とマクロ経済 為替レートは、資産市場における投資家の思惑に左右されやすい ⇒ 国内の生産能力や、国際競争力などの水準から 為替レートが大きく乖離することも… ⇒ 国内の企業や消費者に大きな影響 ① 極端な円高: 輸出産業が減退、国内企業は(海外製品との)価格競争 ② 極端な円安: 海外からの輸入製品価格上昇、国内の石油製品の価格上昇 ⇒ 国内にインフレ 3 8.4. 為替レート変動とマクロ経済 為替レートが実体経済の水準から、大きく乖離する状態が長く続く ⇒ 為替レートの「ミスアラインメント」 ミスアラインメントの改善には、マクロ経済政策が必要 ⇒ ただし、為替レートは2国以上の通貨の交換レート ⇒ 互いの国で、マクロ経済政策で協調が必要(政策協調) ⇒ G7、G8、G20 4 8.5. 変動為替レート制の隔離効果とその限界 変動為替レート制の重要な特徴 ⇒ 海外で起こったマクロ経済の変動をある程度遮断できる ⇒ 変動為替レート制の隔離効果 例: (何らかの理由で)アメリカでインフレが起こった(10%のインフレ) ⇒ 賃金や物価が10%上昇する。 5 8.5. 変動為替レート制の隔離効果とその限界 もし為替レートに変化がなかったら? ⇒ インフレにより、アメリカの商品は割高になる ⇒ 日本からの輸出増加、 アメリカからの輸入減少 ⇒ 円高(ドル安)へ 為替レートが10%円高方向に動けば? ⇒ 日本からの輸出品は、アメリカで10%高くなる アメリカからの輸入品は元の価格に戻る ⇒ アメリカの10%のインフレをちょうど打ち消す 6 8.5. 変動為替レート制の隔離効果とその限界 アメリカで生じたインフレは、為替レートの調整によって完全に吸収 ⇒ 日本には波及してこない ⇒ 変動為替レート制のインフレ隔離効果 ただし、限界も・・・ ⇒ 海外での金利の上昇 ⇒ 日本から海外への資金の流出 ⇒ 輸入品の価格上昇 ⇒ ⇒ 円安へ 国内にインフレ圧力 7 8.6. 変動為替レート制下の財政・金融政策 海外部門を含めた“開放経済”では、マクロ経済政策の効果が異なってくる ⇒ 特に国際間の資本移動が活発なほど無視できない影響が出る ⇒ マンデル・フレミングの理論 金融緩和政策 ⇒ 景気刺激効果がさらに増大 財政拡張政策 ⇒ 景気刺激効果が打ち消される 8 8.6. 変動為替レート制下の財政・金融政策 開放経済における金融政策の効果 金融緩和 (貨幣供給の 増大) 利子率低下 海外への 資本流出 乗数プロセス 投資の増加 為替レート 円安方向へ GDPの増加 輸出増加 輸入減少 GDPの増加 9 8.6. 変動為替レート制下の財政・金融政策 開放経済における財政政策の効果 財政拡大 GDPの増加 利子率上昇 海外からの 資本流入 投資の減少 為替レート 円高方向へ GDPの減少 輸出減少 輸入増加 クラウディング・ アウト効果 GDPの減少 10 8.6. 変動為替レート制下の財政・金融政策 開放経済下での財政・金融政策の効果 財政拡張政策 ⇒ 円高方向へ ⇒ 金融緩和政策 ⇒ 貿易収支赤字 円安方向へ ⇒ ⇒ ⇒ 貿易収支黒字 輸出減・輸入増 ⇒ GDP減少 輸出増・輸入減 ⇒ GDP増加 11
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