2014年度後期 数学 C レポート問題2 1 フーリエ変換

2014 年度後期 数学 C レポート問題2
2015 年 1 月 6 日 配布
作成者:若杉 勇太
レポート作成上の注意
• 学籍番号と名前を各ページに書くこと.また全体をホッチキス等で止め,ばらばらにならないようにす
ること(紛失を防ぐため).各ページにページ番号と,全体で何ページあるかも書くこと.
(例:学籍番号:123456 氏名:若杉勇太 ページ:2/3 等を各ページの上に書く)
• 以下の問題から5問選んで解答すること(5問以下でもよい).1問につき 3 点満点で採点し,15 点満
点でレポート点を付ける.(注:小問1つを1問と数えないように)
• 提出期限は 2 月 10 日(火)17 時 とする.
• 提出は講義の時間(講義終了時)に直接提出するかまたは,基礎工学部 J 棟 6 階のレポート BOX へ提
出すること.
• レポートの用紙は基本的には何でもよい.また両面ともに解答を書いてよい(資源の節約のため).
• 今回は成績処理の都合上,提出期限を過ぎた場合はレポートを受け取らないので注意すること.
• もちろん6問以上解いてもよい.基本は 15 点満点だが,より多くの問題を解答したり,良い解答を作
成するとそれに応じてさらに加点される.
• 解答は丁寧に書くこと.あまりにも雑で判読できないような場合は,大幅に減点されることがある.
• 全く同じレポートが複数あったり,明らかに不正が見受けられる場合は,大幅に減点されることがあ
る.友人と相談して解くのはもちろん構わないが,解答は自分の言葉で書くこと.
1 フーリエ変換
ここでは,関数 f (x), g(ξ) のフーリエ変換およびフーリエ逆変換を
1
fˆ(ξ) = F[f ](ξ) = √
2π
∫
∞
f (x)e−ixξ dx,
−∞
1
F −1 [g](x) = √
2π
∫
∞
−∞
で定義する.
問 1.1 次の関数のフーリエ変換を求めよ.
(i)
{
f (x) =
(ii)
{
g(x) =
1, |x| ≤ π,
0, |x| > π.
π − |x|, |x| ≤ π,
0,
|x| > π.
問 1.2 R 上絶対可積分な関数 f, g と実数 a, b に対し,次が成立することを示せ.
F[af + bg](ξ) = aF[f ](ξ) + bF[g](ξ)
1
g(ξ)eixξ dξ
問 1.3 関数 f = f (x) は R 上で絶対可積分かつ微分可能で,f ′ も R 上絶対可積分であるとする.さらに
limx→±∞ f (x) = 0 を仮定する.このとき次が成立することを示せ.
F [f ′ ] (ξ) = iξF[f ](ξ).
問 1.4 関数 f = f (x) は R 上絶対可積分とし,さらに xf (x) も R 上絶対可積分であるとする.このとき次が
成立することを示せ.
F [xf (x)] (ξ) = i
d
F[f ](ξ).
dξ
問 1.5 関数 f = f (x) は R 上絶対可積分とする.実数 a を一つとり,g(x) = f (x − a) とおく.このとき次が
成立することを示せ.
F[g](ξ) = e−iaξ F[f ](ξ).
問 1.6 関数 f, g は R 上絶対可積分とする.このとき次が成立することを示せ.
F[f ∗ g](ξ) =
√
2π fˆ(ξ)ˆ
g (ξ).
問 1.7(プランシュレルの等式)関数 f (x) は絶対可積分かつ2乗可積分とする.このとき次が成立すること
を示せ.
∫
∫
∞
−∞
|f (x)|2 dx =
∞
−∞
ˆ 2
f (ξ) dξ.
2 フーリエ変換の応用:微分方程式
問 2.1 次の熱方程式の初期値問題を考える.

2
 ∂u (x, t) − ∂ u (x, t) = 0, t > 0, x ∈ R,
∂t
∂x2

u(x, 0) = f (x),
x∈R
これをフーリエ変換を用いて解き,
∫
u(x, t) = G ∗ f (x) =
∞
−∞
G(x − y, t)f (y)dy
と表されることを示せ.ただしここで,G は熱核
1 −x2 /(4t)
e
G(x, t) = √
4πt
である.
(講義中に示した補題や例は用いてよいものとする)
2
問 2.2 R2+ を上半平面,すなわち R2+ = {(x, y) ∈ R2 |x ∈ R, y > 0} とし,次の上半平面上のラプラス方程式
の境界値問題を考える.


∂2u
∂2u
(x,
y)
+
(x, y) = 0, (x, y) ∈ R2+ ,
∂x2
∂y 2

u(x, 0) = f (x),
x∈R
∆u(x, y) =
ここで,f (x) は R 上絶対可積分で,有界かつ一様連続であるとする.
(i) 上の問題を x 変数に関するフーリエ変換を用いて常微分方程式に変換し,limy→∞ u
ˆ(ξ, y) = 0 を満たす
解は
u
ˆ(ξ, y) = fˆ(ξ)e−|ξ|y
で与えられることを示せ.
(ii)
F
−1
[
e
−|ξ|y
√
]
(x) =
を示せ.この右辺に現れる関数を
√
P (x, y) =
2
y
π x2 + y 2
2
y
2
π x + y2
と表し,ポアソン核とよぶ.
(iii)
1
1
u(x, y) = √ P (·, y) ∗ f (x) = √
2π
2π
∫
∞
−∞
P (x − z, y)f (z)dz
を示せ.
問 2.3 問 2.2 で求めた解 u(x, y) =
√1 P (·, y) ∗ f (x)
2π
(i)
1
√
2π
∫
が境界条件 u(x, 0) = f (y) を満たすことを確かめよう.
∞
P (x, y)dx = 1
(y > 0)
−∞
を示せ.
(ii) 任意の δ > 0 に対して,
∫
lim
y↓0
P (x, y)dx = 0
|y|≥δ
を示せ.
(iii)
lim |u(x, y) − f (x)| = 0
y↓0
を示せ.
問 2.4 金融商品の価格付けに現れるブラック・ショールズ方程式は

2 2 2
 ∂c (s, t) + σ s ∂ c (s, t) + rs ∂c (s, t) − rc(s, t) = 0, s > 0, 0 < t < T,
∂t
2 ∂s2
∂s

c(s, T ) = f (s),
s>0
で与えられる.c = c(s, t) はコールオプション価格,t は時間,s は原資産価格,r は安全金利,σ は予想変
動率とよばれる(r, σ は定数である).ここで,x = log s,τ =
3
σ2
2 (T
− t),a =
1
2
−
r
σ 2 ,b
=−
(1
2
+
)
r 2
,
σ2
c(s, t) = eax+bτ u(x, τ ) と変換すると,上の問題は熱方程式の初期値問題に帰着されることを示し,これから,
ブラック・ショールズ方程式の解が
∫
e−r(T −t)
c(s, t) = √
2πσ 2 (T − t)
∞
0
( (
)2 )
log(s/s′ ) + (r − σ 2 /2)(T − t)
exp −
f (s′ )ds′
2σ 2 (T − t)
で与えられることを示せ.
3 フーリエ変換の応用:その他の問題
問 3.1(ポアソンの和公式)関数 f = f (x) は C 1 級で,適当な定数 M > 0 に対し
|f (x)| + |f ′ (x)| ≤
M
,
1 + |x|2
|fˆ(ξ)| ≤
M
1 + |ξ|3
を満たしているとする.このとき,
∞
∑
f (x + 2πn) =
n=−∞
∞
∑
fˆ(n)einx
(1)
n=−∞
が成立することを次の手順で示そう.ここで両辺とも周期 2π の関数であることに注意する.
(i) 任意の m ∈ Z に対して
1
√
2π
∫
(
π
−π
)
∞
∑
f (x + 2πn) e−imx dx = fˆ(m)
n=−∞
であることを示せ.
(ii) C 1 級かつ 2π 周期を持つ二つの関数 F (x), G(x) に対し,F と G の全てのフーリエ係数が一致していれ
ば,F (x) = G(x) となることを確かめよ(ヒント:F, G のフーリエ級数がそれぞれ F, G 自身に収束すること
を用いる).
(iii) 等式 (1) を示せ.(ただし,(1) の両辺の関数がそれぞれ C 1 級になることは認めてよいことにする).
注意 1. 等式 (1) で x = 0 とおくと,
∞
∑
f (2πn) =
n=−∞
∞
∑
fˆ(n)
n=−∞
という式が得られる.これをポアソンの和公式という.
問 3.2(ハイゼン ベルグの不 確定性原理)関数 ψ = ψ(x) : R → C は C 1 級かつ2乗可積分である
∫∞
|ψ(x)|2 dx < +∞).さらに xψ(x) と ψ ′ (x) も2乗可積分,lim|x|→∞ |x||ψ(x)|2 = 0 かつ,
ψ(x)dx = 1 を満たすと仮定する.
−∞
とする(
∫∞
(i)
−∞
∫
∞
−∞
|ψ ′ (x)|2 dx =
∫
∞
−∞
2
ˆ
ξ 2 |ψ(ξ)|
dξ
を示せ(ヒント:プランシュレルの等式を使う).
(ii)
∫
1=−
∞
(
)
xψ ′ (x)ψ(x) + xψ ′ (x)ψ(x) dx
−∞
4
d
を示せ(ヒント:|ψ(x)|2 = |ψ(x)|2 dx
x と表して部分積分).
(iii)
∫
∞
−∞
(∫
′
|x||ψ(x)||ψ (x)|dx ≤
∞
−∞
)1/2 (∫
x |ψ(x)| dx
2
∞
2
−∞
′
)1/2
|ψ (x)| dx
2
を示せ(ヒント:シュワルツの不等式(レポート問題1の問 2.8)を使う).
(iv)
(∫
) (∫
∞
x |ψ(x)| dx
2
−∞
2
∞
−∞
)
2
ˆ
ξ |ψ(ξ)|
dξ
2
≥
1
4
が成立することを示せ.この不等式をハイゼンベルグの不確定性原理という.
問 3.3(シャノンのサンプリング定理)関数 f = f (x) は R 上連続かつ絶対可積分とする.また f のフーリエ
変換 fˆ(ξ) は C 1 級かつ,ある定数 A > 0 が存在して,
fˆ(ξ) = 0
(|ξ| > A)
が成立すると仮定する.このとき,
f (x) =
∞
∑
f
n=−∞
( nπ ) sin(Ax − nπ)
A
Ax − nπ
(2)
が成立することを次の手順で示そう.
(i) fˆ(ξ) は |ξ| > A で 0 となるので,区間 [−A, A] での fˆ(ξ) のフーリエ級数展開を考えることができる.そ
の複素フーリエ係数を an とおく.すなわち,
fˆ(ξ) =
∞
∑
an e
inπξ/A
n=−∞
これより,
,
1
an =
2A
∫
A
fˆ(η)e−inπη/A dη.
−A
√
2π ( nπ )
an =
f −
2A
A
であることを確かめ,
1
f (x) = √
2π
(√
)
2π ( nπ ) inπξ/A+iξx
f −
e
dξ
2A
A
−A n=−∞
∫
A
∞
∑
を示せ.
(ii)
∫
A
einπξ/A+iξx dξ =
−A
2 sin(Ax + nπ)
x + nπ/A
を示せ.
(iii) 等式 (2) を示せ(ただし,積分と無限和の順序交換は認めてよいことにする).
5