栄養・食事指導

特 集
高齢者 の か ゆみ
−
食事 と 皮膚
11 (高齢者の衣食住と皮膚)
見 逃しで 痛い眼にあう前に −
1 日に摂りたい食品の目安
主な
食品名
栄養素
炭水化物
主食
穀 類
1 日の
目安量
600
エネルギー
蛋白質
脂質
1850 kcal
60 g
50 g
主な食材
食パン
うどん
そば
主な料理
デニッシュパン ロールパン 中華めん
ごはん
ラーメン
スパゲティ
チャーハン
焼きそば
g
魚介類
70
白身の魚
はんぺん うなぎ
青魚
干物
(たら・かれいなど)
(ぶり・さばなど)
さつま揚げ
焼き魚
煮魚
揚げ物(天ぷら・フライ)
g
肉 類
50
鶏ささみ 豚ヒレ ハム・ウィンナー 皮付き鶏肉 ベーコン 豚・牛の脂身付
皮なし鶏肉
そぼろ煮
ソテー
焼肉
煮込み(トマト煮) 炒め物
たんぱく質
主菜
半熟卵
卵
卵豆腐
目玉焼き
スクランブルエッグ
35
豆腐
高齢者の場合は,バランスのよい食事を整える
けられます。主食は主に米や麺類,パンなどの小
だけではなく,食形態の適合性や食環境も考える
麦,副食は肉,魚,卵,大豆製品,野菜などです。
必要があります。とくに咀嚼しにくい肉は「固い」
主食と副食では主に含まれる栄養素も違います。
「噛みきれない」と拒否されることも多くありま
主食は炭水化物が主であり,副食はたんぱく質,
す。義歯調整や適した食形態へ変更することで摂
主に動物性たんぱく質が豊富です。また脂質やビ
取量が増えることがあります。また,食事時間が
タミン類を含みます。野菜はビタミン,ミネラル,
長くなると端坐位の保持ができなくなったり,疲
食物繊維を多く含みます(
労感が現れ食事に集中できなくなったりすること
図2
)
。
がんもどき
生揚げ
納豆
油揚げ
湯豆腐
炒り豆腐
もあります。
野菜や果物から
食物繊維,ビタミン類を補う
患者さんの喫食量を主食と副食に分けて記録して
10 割,副食 2 割というケースが多々あります。主
水分を補う
食が 10 割食べられているので一見問題がないよう
45
に見えますが,副食の摂取量が不足しているため,
g
この状況が継続すると,たんぱく質や脂質,ビタ
低・無脂肪乳
牛 乳
200
一般的に主食=ご飯(お粥)
,副食=おかずに分
いると思いますが,高齢の患者さんの場合,主食
g
豆
・
大豆
製品
副食量が減る原因
入院患者さんの喫食量はどうでしょうか。入院
g
卵
主食と副食の違い
チーズ
低・無脂肪ヨーグルト
グラタン
アイスクリ-ム
たんぱく源となる料理
肉・魚・卵・大豆製品
ミン,ミネラルの不足を招きます。
シチュー
カッテージチーズ
乳製品
g
図2
じゃが芋
副菜
ビタミン
芋 類
里芋
長芋
こんにゃく
とろろ芋
70
ほうれん草 人参 南瓜 ごぼう たけのこ きのこ 海草 れんこん
野菜類
栄養・食事指導
煮物
g
ゆで野菜
350
炒め物
生野菜 (かたい)漬け物
g
バナナ
果物
リンゴ
メロン
アボカド
100
g
脂質
調味料
油脂類
12
バター マーガリン サラダ油 オイル入り マヨネーズ 生クリーム
ドレッシング
g
ゼリー
和菓子
ケーキ
その他
アルコール類
食品の選び方
ドーナッツ
クッキー
豆菓子
スナック菓子
いかに低栄養を防ぐかのポイントは,必要な食
ければ,油脂類の活用を促します。油脂類(脂質)
品を摂取してもらうことにあります。高齢者本人
は少量で高カロリーであるため,効率よくエネル
や介助者に対しては食事指導も必要です。食べや
ギーが摂取できます。マヨネーズやバターなどは
すい主食に偏らず,たんぱく質,脂質,ビタミン
乳化されているため消化しやすい食品です。また,
類が含まれるおかずを準備し,食べることを勧め
高齢者の食事は調理方法や食材が単一化しやすい
ます。また,食べる順番として,水分で口腔内を
ため,食材の選択や料理方法などのアドバイスを
潤した後,満腹感や疲労感が現れる前にたんぱく
加えることも大切です(
質,脂質を補えるおかずから食べるようにします。
本人・家族に対する指導はもちろん,病室で食事
g
その他
図1
ソフトせんべい ビスケット
菓子類
1 食の目安
バランスのよい食事が大切
表6
)
。
栄養補助食品の活用
介助をする際もおかずから食べてもらうようにこ
食事摂取の増加を望めないときや,食事だけで
ころがけましょう。退院・転院前の食事指導の際
補えないときは,栄養補助食品の利用を検討しま
には,医師から疾患に対する食事療法の指示がな
す。その際,目的に合わせた栄養補助食品を選び
2015/1 Vol.3 No.1 91