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床ずれ
じょくそう
~ 褥 瘡について~
監修 柏市立柏病院 栄養サポートチーム
入院される患者さんの中には 「床ずれ」の症状がある方が増えています。床ずれがあ
ると痛みを感じて食欲がなくなり栄養不良になることがあります。また床ずれの部分
から感染し、発熱して体力を消耗してしまうこともあります。今回は、床ずれとは何
か、そして床ずれができたら栄養は何をとったらよいかをお伝えします。
じょくそう
★床ずれ(疾病名= 褥 瘡)とは?
自分で体位を変えることができず、体重の集中する部位の骨と寝具に挟まれた皮膚組織が圧
迫され「血の流れが悪くなり、皮膚やその下にある内部組織が死んでしまう外傷」を言います。
床ずれは、表面から見えない皮膚の内部組織のダメージが発生初期には目で確認できない
ため、発症に気がつかないうちにキズの状態が急速に悪化してしまうことがあります。
★なぜ床ずれになるの?
直接的な要因
自分で寝返りができないため、体重が骨と寝具の接触する部
分に集中し、皮膚組織が圧迫されて血の流れが悪くなり、皮膚
やその下にある内部組織が壊死して床ずれになります。つまり
長時間の圧迫が直接的な要因と考えられます。
間接的な要因
★床ずれの治療とは?
床ずれの治療では、薬剤などによる治療に加え、床ずれになった原因を取り除く必要が
あります。
① 摩擦、ずれの原因 ⇒骨突起部にかかる体圧を分散する。
② 皮膚湿潤、低栄養状態⇒スキンケアを行うなど患部の栄養状態を整える。
続いて、床ずれに必要な栄養についてお話します。
床ずれの多くは、皮膚が圧迫された状態が続き、血の流れが悪くなり、皮膚に栄養が行
き届かなくなることが原因の1つです。皮膚への圧迫を減らす一方、必要な栄養をしっ
かり摂ることが大切です!
★床ずれに必要な栄養は何?
床ずれの治療過程によって必要な栄養が異なります。
受傷/炎症期
しんしゅつき
滲出期
(※1)
肉芽形成期
(※2)
エネルギー
鉄・銅
収縮・成熟期
再発予防期
たんぱく質
ビタミン C・E
亜鉛
カルシウム
しんしゅつき
(※1) 滲出期
:
ビタミン A
傷から膿(うみ)の出ている時期
(※2) 肉芽形成期 : 外傷や炎症により欠損を生じた部分に、肉芽(小さくて
柔らかい顆粒)ができてくる時期
エネルギー
摂取目標量
30~40kcal/kg(理想体重)/日
(日本褥瘡学会)
* 必要なエネルギー量は褥瘡の深達度により異なります。
摂取エネルギーの不足は体重減少・るいそう(※3)につながり、骨突起部の皮膚や皮
下組織の圧迫の原因となります。また、エネルギー不足の解消のために、たんぱく質異
化(※4)が起きるため、細胞形成に必要なタンパク質の不足にもつながります。
(※3)るいそう : やせ過ぎ、標準体重より 20%以上少ない状態
(※4)たんぱく質異化 : たんぱく質が分解する作用
たんぱく質
床ずれの患者の摂取目標量 1.0~2.0g/kg(理想体重)/日(日本褥瘡学会)
* 必要なたんぱく質量は褥瘡の深達度により異なります。
【多く含まれる食品】
魚 肉 大豆製品 卵
毎食、魚や肉、大豆製品、卵のいずれかを摂取するようにしましょう。
たんぱく質は皮膚細胞の再生に不可欠な栄養素です。
亜鉛
摂取目標量 15 ㎎ (牡蠣 約 10 個)
【多く含まれる食品】
牡蠣 牛肉
亜鉛は体内で 50 種類以上のたんぱく質代謝酵素の成分として働いています。亜鉛
が不足するとこれらの酵素が不足して、体内でたんぱく質が作られなくなります。
皮膚は主にたんぱく質でできています。このため、亜鉛不足は皮膚障害や床ずれの
治癒遅延の原因となります。また、味覚障害にも関係があり、亜鉛が不足すると味
を感じる細胞も作られなくなり、食欲低下の原因となります。食事が摂れなくなる
と栄養状態はさらに悪くなり、床ずれの治癒遅延にもつながります。
銅
摂取目標量
1.3~2.5 ㎎ (牛レバー 約 40g)
【多く含まれる食品】
レバー、いか、かに、えび、納豆
床ずれの治癒とは新しい皮膚が形成されることです。皮膚は細胞同士がつながってで
きており、このつなげる役割を担っているのが「コラーゲン」というたんぱく質です。
銅は「コラーゲン」の合成に必要な栄養素で、不足すると治癒遅延につながります。
体重や持病により必要な栄養、水分、エネルギーは変わってきますので、医師にご相談
ください。