演習問題

問題1 数値積分
問題2 振り子
問題3 楕円振動
問題4 v 2 に比例する抵抗
問題5 ファン・デル・ポールの方程式
問題6 人工衛星
問題7 花火
問題8 太陽,火星,地球
問題9 フーコーの振り子
問題10 r−3 に比例した引力下での運動
問題11 共振とうなり
注意事項
数値積分や数値微分については,いろいろな方法を試して方法による精
度の違い,刻み幅を変えて精度がどのように変化するのかについても考
察するように。
1
問題1 数値積分
以下の場合について,分割数の増加と真の値との誤差,近似方法と誤差に
ついて考察せよ。
(1) 密度が一様な半円形の薄い板の重心
√
a2 − x2 , (0 ≤ x ≤ a) をそのまま用
いて数値積分せよ。なお,重心の定義は
∫
∑
~rdm
mj ~rj
∑
~rG = (xG , yG , zG ) =
= ∫
mj
dm
数値積分の練習なので,関数 f (x) =
である
(2) ∫∞
0
f (x)dx,f (x) = x3 /(exp(x) − 1)(注)の値を求めよ。正確な値
は,π /15 である。数値積分のポイントは,x ≈ 0 の近傍をどう扱うか,x の
4
上限をどうするか,である。
(注)格子比熱のデバイ・モデルに出現
問題2 振り子
長さ ` の糸の先におもりをつけ,他端を固定し,鉛直面内でおもりが円弧
を描いて運動するものを単振子という。糸が鉛直線となす角度を θ,糸の張
力を S ,おもりの質量および速さを m,v とする。
(1) 糸の方向(動径方向)およびこれに垂直な方向(接線方向)の運動方程
式が,以下のようになることを示せ。
動径方向 接線方向 2
m v` = S − mgcosθ
m dv
dt = −mgsinθ
(2) 振幅が極めて小さい(θ が微小)場合は,振動の周期は糸の長さのみに
依存し,おもりの質量や振動の振幅には無関係であること(振り子の等時性)
を示せ。
(3)θ = 0 においておもりに初速 v0 を接線方向に与えた。v0 ≤
√
2g` であ
ればおもりは振動することを示せ。
(4) おもりが振動するとき,正確な解と sinθ ≈ θ と近似した場合の解を比
較し,sinθ ≈ θ なる近似はどれくらいの振幅まで許せるのか考察せよ。
(5) 余裕があれば,以下のことを考えてみよ。
√
√
2g` < v0 < 5g`
√
(5.2) 5g` ≤ v0
(5.1)
途中から放物運動(自由な運動)となる
鉛直面内で円運動する
2
問題3 楕円振動
(1) 質量 m の質点が原点からの距離に比例する引力を受けて平面上を運動
する場合を考える。物体の運動方程式は,
m
となる。ω =
d2 x
d2 y
= −kx, m 2 = −ky
2
dt
dt
√
k/m とすれば,
x = asin(ωt + α), y = bsin(ωt + β)
が解である。
x
y
xy
( )2 + ( )2 − 2( cos(α − β) = (sin(α − β))2
a
b
ab
となることを示せ。
(2)(1) を少し一般化して,
x = asinω1 t, y = bsin(ω2 t + δ)
であるとする。以下の場合について運動の軌跡(物体が描く曲線,リサージュ
図)を図示せよ。簡単のために,a = b とせよ。
(2.1)
ω1 = ω2
(2.2)
ω1 : ω2 = 2 : 1
(2.3)
ω1 : ω2 = 3 : 1
δ = 0, 0.25π, 0.5π, 0.75π, π
δ = 0, 0.25π, 0.5π, 0.75π, π
δ = 0, 0.25π, 0.5π, 0.75π, π
(2.4)
ω1 : ω2 = 3 : 2
δ = 0, 0.25π, 0.5π, 0.75π, π
(3) リサージュ図を得るための実験を考えよ(調べよ)。
(4) 余裕があれば,以下のことを考えてみよ。
ω1 = ω2 であるとき,(2.1) で見たように,物体は一般的には楕円運動をす
る。惑星が太陽の周りを回るときも楕円運動をする。両者の違いについて考
察せよ。
問題4 v 2 に比例する抵抗
質量 m の物体が次のような方程式で与えられる運動,即ち,速さの 2 乗に
比例する空気抵抗を受けて運動する場合を考える。

m du = −mkV 2 u
dt
V
m dv = −mkV 2 v − mg
dt
V
3
ここで,鉛直方向を y ,水平方向を x とし,u =
dx
dt ,v
=
dy
dt ,V
=
√
u2 + v 2
とした。
k = 0, 0.008, 0.01 の場合について,以下の問いに答えよ。
(1) 初速 v0 = 45m/s で水平と 45 度の方向に物体を投げたとき,投げてか
ら地面に落ちるまでの物体の軌跡を図示せよ。
(2) 物体を水平との角度 θ で投げる。いろいろな θ について物体の軌跡を
求め,それを図示せよ。また,物体が最も遠くまで到達する角度をもとめよ。
初速は v0 = 45m/s とする。
(3)k の値について調べよ。(実際の現象について k の値を見積もった例を
調べよ。)
(4) ここでは速さの 2 乗に比例する空気抵抗を受ける場合を考えたが, 物体
が流体中を運動するするとき受ける抵抗は速さの1乗に比例する場合もある。
1乗に比例する場合,2 乗に比例する場合の条件を調べよ。
問題5 ファン・デル・ポールの方程式
ファン・デル・ポールは真空管の回路の振動について,
d2 y
dy
= −y + (1 − y 2 ) dt2
dt
の形の微分方程式を研究した。
= 0.1, 1.0.20.0 の場合について,(t, y) および (v, y) の関係を図示せよ。た
だし,初期条件は t = 0, y = 0.02, v =
dy
dt
= 0 とする。
問題6 人工衛星
人工衛星(質量 m)が地球(質量 M )からの引力を受けて運動する場合
を考える。地球は静止しているとし,衛星の運動する面を xy 平面として答
えよ。
(1) 衛星が従う運動方程式を示せ。つぎに,衛星が地球すれすれに回るとき
√
の速さ V0 が V0 = GM/R0 ≈ 7.91 × 103 ms−1 となること,地球の表面す
T0
) とすれば, 2π
= τ0 = 0.807 × 103 s
となることを示せ。ここで,G は重力定数,R0 は地球の半径である。
さて,
れすれに回るときの周期を T0 (=
2πR0
V0
GM = 1
長さの単位
時間の単位
地球の半径(R0 ) 地球の表面すれすれに回るときの周期の
4
1
2π (τ0 )
のような単位系を採用した場合の方程式を示せ。
(2) 人工衛星が地球表面上の 1 点からから V0 で水平と(接線方向と),15
度,30 度,45 度,60 度,75 度の角度で発射したときの軌道をもとめ図示
せよ。
(3) 高度 1.5R0 の地点から水平に以下の速度 u で発射した場合の軌道をも
とめ図示せよ。
直線
u=0
楕円
u = 0.38V0
u = 0.72V0
u = V0
u = 1.23V0
u = 1.41V0
u = 1.55V0
u = 1.63V0
楕円
円
楕円
放物線
双曲線
双曲線
問題7 花火
(1) 地上 h = 100m の地点から初速 v0 = 40ms−1 でいろいろな方向に質量
m の物体を投げた。
(1.1)
(1.2)
地上に到達するまでの物体の軌道を求め図示せよ。
物体が到達できない領域と到達できる領域の境界の曲線は,
y=
v0
2g
−
g
2
2v0 x
となることを示せ。ここで,y 軸を鉛直方向に,
x 軸を水平方向にとった。
(2) 物体の放物運動を利用して,打ち上げ花火をシミュレーションせよ。
(初
期条件等を工夫して花火らしくなるようにせよ。)
問題8 太陽,火星,地球
太陽,火星,地球が万有引力のみを受けて運動する場合を考える。
(1) 太陽を固定して,太陽の周りを火星と地球がまわるとする。太陽と火星
の間に働く力の大きさを f01 ,太陽と地球の間に働く力の大きさを f02 ,火星
と地球の間に働く力の大きさを f12 とする。f01 /f02 ,f12 /f02 を見積もれ。
(2) 地球の太陽からの平均距離 R0 = 1.4960 × 1011 m を1天文単位という。
√
地球が太陽の周りを等速運動するとしたとき,その速さは V0 = GM/R0 =
5
2.978 × 104 ms−1 ,1 周する時間の 1/(2π) は T0 = R0 /V 0 = 5.024 × 106 s で
あることを示せ。ここで,G,M は万有引力定数,太陽の質量である。
さて,以後次のような単位系を採用する。
GM = 1
長さの単位
1天文単位(R0 ) 時間の単位
T0
(3) 簡単のために,以下では火星と地球の間に働く引力は無視し,惑星は
xy 平面上を運動するものとして答えよ。
(3.1)
(3.2)
太陽を中心として,地球と火星の運動を図示せよ。
(3.3)
これらの結果について考察せよ。
地球を中心として,地球と太陽の運動を図示せよ。
問題9 フーコーの振り子
地理学的緯度(その地点の鉛直方向と赤道面の作る角)が λ である地点に
長さ ` の糸に質量 m のおもりをつるす。糸の張力を S ,地球の自転の角速度
を ω とすれば,振り子の水平方向の運動方程式は,
d2 x
x
dy
= −S + 2mωsinλ
dt2
`
dt
d2 y
y
dx
dz
m 2 = −S − 2mω(sinλ
+ cosλ ) dt
`
dt
dt
m
(9.1a)
(9.1b)
となる。ここで,振動は微小で, dz
dt ≈ 0,S ≈ mg という近似を用いれば,
以下のような式を得る。
g
dy
d2 x
= − x + 2ωsinλ
dt2
`
dt
d2 y
g
dx
= − y − 2ωsinλ dt2
`
dt
(9.2a)
(9.2b)
(1) 以下の初期条件のもとでおもりの軌道を求め図示せよ。簡単のために,
g
`
= 1, 2ωsinλ = 0.05 とせよ。
6
dy
dt = 0
dy
dt = 0
1, dy
dt =
(a) t = 0, x = y = 0, dx
dt = 1,
(b) t = 0, x = 1, y = 0, dx
dt =
(c) t = 0, x = y = 0.5,
dx
dt
=
0
(2)(1) では, g` = 1, 2ωsinλ = 0.05 としたが,この値の妥当性について考
察せよ。
問題10 r−3 に比例した引力下での運動
質量 m の物体が,仮想的な力,距離の 3 乗に反比例する引力をうけて運動
する場合を考える。このとき,引力を F (r),ポテンシャルを V とすれば,こ
れらは次のようになる。
cm
2r2
物体は xy 平面上を運動するとして以下の問いに答えよ。
(1) 物体の位置を,x = rcosθ, y = rsinθ と極表示すれば,力学的エネル
F (r) = −cm/r3 (c = 定数), V (r) = −
ギー保存の式は
dr
dθ
1
mv 2 + V (r) = E = 一定, v 2 = ( )2 + r2 ( )2
2
dt
dt
面積速度一定の法則は,
r2
dθ
= h = 一定 dt
となることを示せ。
(2) 物体の運動方程式は,
dx
dy
du
x
dv
y
= u,
= v,
=− 2
,
=− 2
2
2
dt
dt
dt
(x + y ) dt
(x + y 2 )2
となる。ただし,c = 1 とした。次のような初期条件のもとで運動方程式
を解き物体の軌道を図示せよ。初期条件は,
t = 0 で x = x0 = 1, y = y0 = 0, u = u0 , v = v0
とし,E ,u0 ,v0 は以下のようにする。
(注)オイラー法とルンゲ・クッタ法で解き結果について考察せよ。
問題11 共振とうなり
7
(a)
(b)
E > 0, u0 = 0, v0 = 1.02
E > 0, u0 = 0, v0 = −1.02
(c)
(d)
(e)
E > 0, u0 = −0.2, v0 = 0.99
E > 0, u0 = 0.2, v0 = −0.99
E > 0, u0 = −0.2, v0 = 1.0
(f)
(g)
E > 0, u0 = 0.2, v0 = −1.0
E < 0, u0 = 0, v0 = 0.95
(h)
E < 0, u0 = 0, v0 = −0.95
(1)2 階の常微分方程式,x
¨ + ax˙ + bx = f (t)(式1)の一般解は,
(式1)
を満たすひとつの解(特解)x = g(t) と x
¨ + ax˙ + bx = 0 の一般解 h(t) の和
x = h(t) + g(t) で与えられることを示せ。
(2)x 軸上で単振動する物体(質量は m)に外力 mf cosωt が働く場合,す
なわち,運動方程式が,m¨
x + kx = mf cosωt(式 2)となる運動を考える。
(2.1)
外力がないときの一般解は,x = Acos(ω0 t + α) であることを示せ。
√
ただし,ω0 = k/m,A と α は定数である
(2.2)
ω0 = ω であるとき,x = Acos(ω0 t + α) + Bsin(ωt) は(式 2)の解であることを示せ。
ただし,B = f t/(2ω0 ) である。
(2.3)
ω0 6= ω であるとき,x = Acos(ω0 t + α) + Ccos(ωt) は(式 2)の解であることを示せ。
ただし,C = f /(ω02 − ω 2 ) である。
(2) は共振(共鳴),(3) はうなりの現象を表している。それぞれについて振幅と時間
(2.4)
の関係を視覚化せよ。(現象がよくわかるように定数を設定せよ。)
(2.5)
自然現象のなかから,(2),(3) に相当するものを見つけ出し解説せよ。
8