プラチナ抗ガン剤はなぜ効くか? (ガン細胞のなきどころ・ゲノム守護神)

演題名:シスプラチンの作用における RECQ5/QE の働き
プラチナ抗ガン剤はなぜ効くか?
(ガン細胞のなきどころ・ゲノム守護神)
摂南大薬
○川崎勝己、平尾知之、大喜田法子、伊藤文昭
理研
中山 実
ガン細胞は正常な細胞から変化して生物個体の中で勝手に増殖するようになった細胞
です。このガン細胞を抑えつけ正常な細胞を生かすひとつの鍵はガン細胞が勝手に増殖
するようになった原因を逆手にとる方法です。ガン細胞ではゲノム不安定性がみられま
す。"ニワトリと卵のどちらが先か"に似ている問題ですが、まずゲノムの不安定化がお
こり次に雪だるま式にガン細胞への道を加速する説が有力です。ガンになりやすくなっ
た細胞ではゲノムを安定に守っていた守護神の力が衰えていてガンへの決定的な引き
金が引かれるという考え方です。とすれば、このゲノム守護神の力無きことこそがガン
細胞の弱点かもしれません。ヒトゲノムの遺伝子数(約 2 万 2 千個)とあまり差がなく
良く保存されているハエ(遺伝子数約1万6千個)は体の大きさでは百分の一以下、成
長(10 日で成虫)や寿命(約 70 日)では百倍以上早いモデル動物です。このハエで抗
ガン剤の効き方のメカニズムに迫り、一方でゲノム守護神に迫ることでガンになりにく
いことについて考えたいと思います。