静岡県清水平野の完新統にみられる古津波と安政東海地震時の隆起の地質学的 証拠 北村晃寿(静岡大学理学研究科・防災総合センター)・小林小夏(静岡大学防災総 合センター) 本研究では,清水平野沿岸域から採取した 14 本のボーリングコアと 1 地点のト レンチのデータから,地震と津波の地質学的証拠を調査する.清水平野は,ユ ーラシアプレートとフィリピン海プレートの収束境界である駿河トラフに面す る.我々は,堆積相・含有化石・放射性炭素年代測定に基づき,西暦 1854 年の 安政東海地震に伴う地震性隆起による堆積環境の急変の地質学的・古生物学的 証拠を得た.我々は,地震性隆起は最大で 1.2 mで,地震後の漸進的沈降は約 0.6 mと推定した.また,我々は,浅海(低潮線から深度 40 m)の泥質内湾堆積 物から 4 つの先史時代の津波堆積物(T-I, II, III, IV)を認定した.津波堆積物は厚 さ 20〜70 cm で,明瞭な浸食性基底面を持ち,級化を示し,リップアップクラ ストを含む.14C年代測定は,T-I が 6180-6010〜5700-5580 cal. yr BP,T-II が 5700-5580〜5520-5320 cal. yr BP,T-III が 4335-4125〜4250-4067 cal. yr BP,T-IV が 3670-3540〜3500-3360 cal. yr BP に堆積したことを示す.これら の津波の発生間隔は 500〜1000 年で,西暦 1096 年以降に清水平野に襲来した 4 つの歴史津波の発生間隔より有意に長い.本研究では,西暦 1498 年の明応地震 もしくは西暦 1707 年の宝永地震により形成された可能性のあるイベント堆積 物も確認した.
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