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基盤研セミナー
ITAMを介した自然免疫応答(化合物アレルギーと結核)
【日時】
11月14日(金) 15:00~
【場所】
医薬基盤研究所 大会議室
【演者】
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科免疫学分野 教授
原 博満 先生
Immunoreceptor tyrosine-based activation motifs (ITAM)は、抗原受容体や一部
のFc受容体に共通のシグナル伝達モチーフとして当初見いだされたが、骨髄系細胞
に発現するC型レクチン(CLR)やIg superfamily(IgSF) 受容体の多くがITAMシグナル
を介して細胞を活性化し、自然免疫のセンサーとして働くことが明らかになってき
た。本セミナーでは、アレルギー性化合物と結核菌の自然免疫応答に関わるITAMシ
グナルに関して議論する。
(1)化合物アレルギー
医薬品、化粧品、日用品に含まれる様々な低分子化合物(ハプテン)がアレルギー
応答を引き起こし、医療や産業現場のみならず、日常生活にも甚大な被害を与えて
いる。アレルゲンによるT細胞のプライミングには樹状細胞(DC)の成熟が必要であ
るが、ハプテンがDCを活性化する機構は不明であった。我々は、ハプテンに対する
アレルギー性皮膚炎の感作には樹状細胞によるIL-1分泌が必要であり、この産生に
ITAM-Syk-CARD9経路が必須であることを見いだした。化合物のアレルゲン性はDCに
おけるSyk活性化能と相関しており、アレルギー性化合物の自然免疫学的特徴が明ら
かとなった。
(2)結核
結核菌細胞壁の主成分であるミコール酸(MA)は、極めて長鎖の分岐アシル鎖を持つ
抗酸菌特有の脂肪酸であり、細胞壁骨格を形成するとともに、糖と結合した糖脂質
(MA糖脂質)の状態で細胞壁の最表層に発現する。また、遊離型MAはBiofilmの主成
分となり薬剤耐性にも寄与する。これらのMA含有脂質は菌の生育環境や活性化状態
によってダイナミックに変容し、宿主の免疫応答に影響を及ぼす。このうちトレハ
ロースジミコール酸(TDM)は、FcRγ会合型CLRであるMincleによって認識される。
我々は、DAP12会合型のIgSF受容体TREM2がMAを認識することを見いだした。
TREM2とMincleとでMA脂質に対する反応性を比較した結果、糖が付加したMA脂質
はMincle、糖が付加しないMA脂質はTREM2によって認識され、異なる自然免疫応答
を誘導することが明らかとなった。
連絡先: アジュバント開発プロジェクトリーダー 石井 健
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