平成 24 年度 家庭用品規制基準調査 特定芳香族アミン類の毒性及び暴露評価に関する調査 国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部 河上強志、伊佐間和郎、五十嵐良明 -------------------------------------------------------------------------------概要 特定芳香族アミン類の一つである 4-chloro-o-toluidine について、国際がん研究機関 (International Agency for Research on cancer: IARC)および米国カリフォルニア州環境 保護局(California Environmental Protection Agency: Cal.EPA)の発がん性評価書を中 心に毒性情報と暴露情報の収集を行った。4-Chloro-o-toluidine は、主に有機色素(染料お よび顔料)や殺ダニ剤(または殺虫剤)である chlordimeform の製造で使われていたが、 chlordimeform は現在多くの国々で製造および使用中止となっている。4-Chloro-o-toludine の 職 業 性 暴 露 は 、 4-chloro-o-toluidine の 製 造 に 携 わ る 労 働 者 お よ び 有 機 色 素 や chlordimeform の製造で 4-chloro-o-toluidine を使用する労働者で非常に多く認められた。 一般消費者は、chlordimeform を処理した農産物、有機色素を用いたフィンガーペイント および baby sling の様な繊維製品から 4-chloro-o-toluidine に暴露される可能性が考えられ た。4-Chloro-o-toluidine に暴露された労働者を対象とした小規模コホート研究では、膀胱 がんリスクの増加を示唆するものがあったが断定はされていない。4-Chloro-o-toluidine 混 餌で長期飼育した雌雄のマウスにおいて、血管肉腫(hemangiosarcoma)および血管腫 (hemangioma)の著しい増加が認められたが、マウスでは発がん性物質であると確認され なかった。4-Chloro-o-toluidine に対する細菌を用いた変異原性試験では、ほとんどの試験 では陰性であったが、培養哺乳類細胞を用いた試験では陽性の結果が認められた。生体内 では、4-chloro-o-toluidine は肝細胞 DNA に結合するが、その損傷は迅速に修復され、そ の付加体の構造は解明されていない。陽性が報告された in vivo 変異原性試験は、マウスス ポットテストのみであった。また、ヒトにおける 4-chloro-o-toluidine の毒物動態学あるい は遺伝的影響に関するデータはない。IARC では 4-chloro-o-toluidine を、おそらくヒト発 がん性の可能性がある(グループ 2A)と分類し、Cal.EPA では雌雄のマウスにおける血管 肉腫(hemangiosarcoma)および血管腫(hemangioma)発症を基に、発がんスロープフ ァクターを 2.7 (mg/kg/day)-1 としている。
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