第 5 回 入試で使える数学小技 和の期待値(数学 A)

第 5 回 入試で使える数学小技
○和の期待値(数学 A)
数学嫌い泣かせな問題の 1 つに, 期待値の計算がある.期待値の定義自体は,
定義
ある試行 X において,起こりうる事象が X 1 , X 2 ,…, X n のうちのただひとつで
あり, X k (k = 1,2,L, n ) にてとる値を xk , X k の起きる確率を pk としたとき, X
の期待値を E ( X ) とすると,
E ( X ) = x1 p1 + x 2 p 2 + L + x n p n
( p1 + p2 + L + pn = 1)
と, 堅苦しい書き方をしているが,つまりは
(得られる数値)×(その確率) の総和
ということである. さて, この期待値とは一体何を意味している値なのであろうか?
具体的な例を用いて考えてみよう.
例1
さいころを 1 回投げたときに出る目の値の期待値 E を求めよ.
さいころの各目の出る確率は
1
であるから, 定義から期待値を計算すると
6
1
1
1
1
1
1
E = 1⋅ + 2 ⋅ + 3 ⋅ + 4 ⋅ + 5 ⋅ + 6 ⋅
6
6
6
6
6
6
1+ 2 + 3+ 4 + 5 + 6
… ①
6
7
=
2
=
例2
2 枚の硬貨を投げたとき, 硬貨の表面が出る枚数の期待値 E を求めよ.
右の表のように,表の枚数を記してみると 4 通りの結果が考えられ,
・表が 0 枚 … 1 通り
・表が 1 枚 … 2 通り
・表が 2 枚 … 1 通り
であるから
表
裏
表
2
1
裏
1
0
E = 0⋅
1
2
1
+ 2⋅ + 2⋅
4
4
4
0 ⋅1 + 1⋅ 2 + 2 ⋅1
… ②
4
=1
=
①, ②からも分かるように, 期待値は平均値となっている.
この性質を利用して, 和の期待値の問題を考えてみよう.
例3
さいころを 2 回投げたとき, 出た目の値の和の期待値 E を求めよ.
例 1)より, 1 回投げて出る目の期待値(平均値)は
7
である.
2
よって, 2 回投げたときの目の和の期待値(平均値)はその 2 倍となるので
E = 2⋅
例4
7
=7
2
白玉が 5 個, 赤玉が 4 個入った袋がある. この袋の中から無作為に 3 個の
玉を取り出したときに, 赤玉がの取り出される個数の期待値 E を求めよ.
9 個の玉のうち, 4 個が赤玉であるから,
袋から 1 個の玉を取り出したとき,赤玉の取り出す個数の期待値(平均値)は
4
個
9
である.
よって, 3 個の玉を取り出したときの, 赤玉の取り出す個数の期待値(平均値)は
その 3 倍となるので
E = 3⋅
4 4
=
9 3
と考えることができる.
本質的なことを述べると, 例 4)では,まず 9 個の玉を同じ玉に平均化して, どの玉を
とっても, 赤玉
4
個 となるようにしてしまっているのであり,これが期待値の本質的
9
な意義である. つまり,期待値とは, 未来のことを平均化して予測した数値なのである.
この解法は使える場合とそうでない場合がある.(でなければ定義の計算が不要…)
次の問題 A, B のうち, 1 回ごとの期待値を利用して解くことができる問題はどっち
であるか考えてほしい.
問題 A
コインを 2 回投げる.
表が出た回数だけ 100 円, 裏が出た回数だけ 50 円がもらえるとき, もらえる金額の
期待値を求めよ.
問題 B
コインを 2 回投げる.
表が 2 回出たとき 200 円, 表と裏が 1 回ずつ出たとき 100 円, 裏が 2 回出たとき 50
円がもらえるとき, もらえる金額の期待値を求めよ.
似た問題であるが, 1 回ごとの期待値を利用して解くことができる問題は問題 A
のみである.
問題 A は 1 回ごとの結果で,もらえる金額が決まっている, つまり,コインを 1 回投げ
るごとに得られるお金(結果)が確定する試行である.
問題 B は 2 回の結果が出て初めて金額が確定する. つまり,コインを 2 回投げること
て初めて得られるお金(結果)が確定する試行である.
問題 A の解答
コインを 1 回投げて得られる金額の期待値(平均値)は
100 + 50
= 75 円
2
よって, コインを 2 回投げて得られる金額の期待値は
2 ⋅ 75 = 150
問題 B の解答
例 2 同様に考えると,各確率は右のようになり,
コインを 2 回投げて得られる金額の期待値は
200 ⋅
1
2
1 225
+ 100 ⋅ + 50 ⋅ =
4
4
4
2
結果
表2回
各1回
裏2回
確率 p
1
4
2
4
1
4
金額 x
200 円
100 円
50 円
入試例題
赤玉 3 個,白玉 4 個,青玉 5 個が入っている袋から,同時に 4 個取り出す. (中略) また,
同時に 4 個の玉を取り出すとき, そこに含まれる青玉の個数の期待値は
6
である.
(2013 福岡大学 抜粋)
[解答]
袋の中には全部で 12 個の玉が入っていて,そのうち 5 個が青玉であるから,
袋から玉を 1 個取り出したときの青玉を取り出す個数の期待値は
5
12
よって, 袋から玉を 4 個取り出したときの青玉を取り出す個数の期待値は
4⋅
5 5
=
…
12 3
6
比較のため, 一般的な解法を次ページに載せる.
正攻法
袋の中には全部で 12 個の玉が入っていて,そのうち 5 個が青玉であるから,
袋から玉を 4 個取り出したとき
(ⅰ) 青玉が含まれない確率は
C4
35
7
=
=
495 99
12 C 4
7
(ⅱ) 青玉が 1 個含まれている確率は
7
C 3 ⋅5 C1 175 35
=
=
495
99
C
12 4
(ⅲ) 青玉が 2 個含まれている確率は
7
C 2 ⋅5 C 2 210 42
=
=
495 99
12 C 4
(ⅳ) 青玉が 3 個含まれている確率は
7
C1 ⋅5 C 3
70 14
=
=
495
99
C
12 4
(ⅴ) 青玉が 4 個含まれている確率は
C4
5
1
=
=
495 99
12 C 4
5
よって, 袋から玉を 4 個取り出したときの青玉を取り出す個数の期待値は
0 ⋅ 7 + 1 ⋅ 35 + 2 ⋅ 42 + 3 ⋅ 14 + 4 ⋅ 1
99
=
35 + 84 + 42 + 4
99
165
99
5
=
…
3
=
6