円錐曲線について

第 5 章 質点力学(その2)— 5.4. 中心力による運動 付録
円錐曲線について
担当:荒井 正純
配布:2014/10/30
極座標表示の円錐曲線の方程式,
r=
l
1 + e cos θ
(5.59)
の性質について説明する.まず,(5.59) を,
x = r cos θ,
y = r sin θ,
(1.5)
に従って,デカルト座標で書き換える.(5.59) を変形する.
r = l − er cos θ = l − ex
ここで両辺を 2 乗し,r2 = x2 + y 2 であることを適用すると,
x2 + y 2 = (l − ex)2
(A5.2)
x2 + y 2 = l 2
(A5.3)
となる.
(i) e = 0 の場合
(A5.2) は,
に帰着する.これは,原点を中心とした半径 l の円である.
(ii) 0 < e < 1 の場合
(A5.2) は,
(
)2
(
)2
le
y2
l
x+
+
=
1 − e2
1 − e2
1 − e2
(A5.4)
なる形に変形できる.これは,長軸の長さ A, 短軸の長
さ B の楕円である.ここで,
A=
l
,
1 − e2
B=√
と表される.
楕円の中心 C の x 座標は,
xc = −
le
,
1 − e2
A5.1
l
1 − e2
(A5.5)
である.又,1 つの焦点 F1 は原点 O,もう 1 つの焦点 F2 の x 座標は,
xf = −2|xc | = −
2le
,
1 − e2
(A5.6)
である.楕円の性質は,楕円上の任意の点を P とした時,各焦点から P までの距離の和,F1 P + F2 P が
一定値となることである.このことを確かめる.まず,
F1 P =
√
x2 + y 2 = r,
F2 P =
√
(x − xf )2 + y 2 ,
(A5.7)
である.後者の式の 2 乗を更に変形する.
2
F2 P = x2 + y 2 − 2xf x + x2f = r2 − 2xf r cos θ + x2f
r
ここで.(5.59) より r cos θ = l −
e であるから,
2
F2 P = r2 +
2xf
r + xf
e
(
)
2l
xf −
e
と変形される.これに (A5.6) を代入し,整理すると,
2le
4l
r+
F2 P = r −
1 − e2
1 − e2
2
(
2
2le
2l
+
1 − e2
e
)
(
=
2l
−r
1 − e2
)2
に帰着する.右辺の (· · · ) 内の符号を評価する.まず,r の最大値 rmax は
l である.これより,不等式,
θ = π の時に得られ,rmax = 1 −
e
2l
2l
2l
l
l
−r ≥
− rmax =
−
=
>0
1 − e2
1 − e2
1 − e2
1−e
1+e
が成り立つ.従って,
F2 P =
2l
−r
1 − e2
(A5.8)
となる.(A5.7) と (A5.8) の和を取ると,
F1 P + F2 P =
2l
= 2A
1 − e2
(A5.9)
となる.即ち,楕円の各焦点から 楕円上の任意の点までの距離の和
は一定値で,長軸の長さの 2 倍となることが示された.
(iii) e = 1 の場合
(A5.2) は,
x=
l2 − y 2
2l
に帰着する.これは x 軸を軸とする放物線である.
A5.2
(A5.10)
(iv) e > 1 の場合
(A5.2) は,
(
x−
le
2
e −1
)2
−
y2
=
e2 − 1
(
l
2
e −1
)2
(A5.11)
なる形に変形できる.これは双曲線を表す.
x 軸との交点の座標は,上式に y = 0 を代入すること
l , l と得られる.この 2 点のうち,左
で,x = e +
1 e−1
側の交点を Z1 , 右側の交点を Z2 と置く.
双曲線の 1 つの焦点 F1 は原点 O である.もう 1 つ
の焦点 F2 の x 座標は,
xf
= OZ2 + F2 Z2 = OZ2 + F1 Z1
=
l
l
2le
+
= 2
,
e−1 e+1
e −1
(A5.12)
である.双曲線の性質は,双曲線上の任意の点を P とし
た時,各焦点から P までの距離の差,F2 P − F1 P が一
定値となることである.このことを確かめる.楕円の場
合と同様,
F1 P = r,
(
2
F2 P =
(A5.13)
2l
+r
2
e −1
)2
(A5.14)
となる.e > 1 の場合,(A5.14) 右辺の (· · · ) 内は正値であるから,
F2 P =
e2
2l
+r
−1
(A5.15)
となる.(A5.15) と (A5.13) の差を取ると,
F2 P − F1 P =
2l
e2 − 1
(A5.16)
となる.即ち,双曲線の各焦点から 双曲線上の任意の点までの距離の差は一定値となることが示された.
双曲線は,F1 (原点 O)を焦点とする分枝と,F2 を焦点とする分枝の 2 つの曲線が存在する.実際の
運動の軌道は,F1 (原点 O)を焦点とする分枝になる.e > 1 の場合,(5.59) で r > 0 であるためには,
(
)
−θm < θ < θm でなければならない.ここで θm = cos−1 − 1e で,角度は 0 < θm < π の範囲で定義し
た.(5.59) で,F1 (原点 O)を焦点とする分枝は,角度が −θm < θ < θm の場合(r > 0 の場合)に対応
する.一方,F2 を焦点とする分枝は,角度が θm < θ < 2π − θm の場合(r < 0 の場合)に対応する.
A5.3