5 水星の近日点移動 その1 シュワルツシルド時空の原点のまわりを一個の質点が運動する場合を考える。対称性よ り一般性を失うことなく、粒子の軌道面を θ = π/2 と選ぶことができるので、次の作用: % ! ! " # rs $ 2 ṙ2 2 2 S = L dτ ≡ − 1− ṫ + + r ϕ̇ dτ (5.1) r 1 − rs /r を変分すれば、運動方程式が得られる。ここで、rs = 2GM はシュワルツシルド半径、ま た · ≡ d/dτ とする。以下同様。 問 5.1 次式で定義される ε と j ε ≡ # 1− j ≡ r2 ϕ̇ rs $ ṫ r (5.2) (5.3) がいずれも運動の定数であることを示せ。 S を r について変分すれば運動方程式が得られるのだが、以下ではその代わりに # rs $ 2 dr2 dτ 2 = 1 − dt − − r2 dϕ2 r 1 − rs /r (5.4) に (5.2) 式と (5.3) 式を代入して得られる rs 1− = ε2 − r を考える。ここで E≡ ε2 − 1 , 2 & U0 ≡ − U = U0 + δU, dr dτ '2 # rs $ j 2 − 1− r r2 rs GM =− , 2r r δU ≡ − (5.5) rs j 2 GM j 2 = − 2r3 r3 (5.6) とおけば、(5.5) 式はニュートン力学の結果と類似した & dr dτ '2 = 2(E − U ) − j2 r2 (5.7) に変形できる。さらに、(5.3) 式を (5.5) 式の平方根で辺々割り算すれば、軌跡の方程式: dϕ j/r2 = ±( dr 2(E − U ) − j 2 /r2 (5.8) が得られる。以下、δU ≪ U0 かつ E < 0 の束縛軌道を考える。 問 5.2 δU を無視した時、質点は & ' j2 GM j2 2(E − U0 ) − 2 = 2 E + − 2 =0 r r r 17 (5.9) をみたす 2 つの実数解 rmax と rmin のあいだの周期運動をする。このケプラー運動が 軌道長半径 a、離心率 e の楕円軌道: r= a(1 − e2 ) 1 + e cos ϕ (5.10) となることを既知として、(5.9) 式から a、e、a(1 − e2 ) の表式を求めよ。 問 5.3 δU を考慮した場合には、近似的な楕円運動の1周期に回転する角度の大きさは (5.8) 式より ! rmax j/r2 ∆ϕ ≈ 2 dr ( (5.11) 2(E − U ) − j 2 /r2 rmin で与えられる。さらに (5.11) 式の被積分関数を展開すれば、δU の最低次で ! rmax ! rmax j/r2 jδU/r2 ∆ϕ ≈ 2 dr ( +2 dr [2(E − U0 ) − j 2 /r2 ]3/2 2(E − U0 ) − j 2 /r2 rmin rmin (5.12) となることを示せ。 問 5.4 (5.12) 式の右辺の第一項は、通常のケプラー運動の場合に対応する。その値はいく らか。 問 5.5 (5.12) 式の右辺の第二項が、一般相対論による補正項を与える。その被積分関数が ) * jδU/r2 ∂ 1 ( dr = δU (5.13) [2(E − U0 ) − j 2 /r2 ]3/2 ∂j 2(E − U0 ) − j 2 /r2 と変形できることを利用して、 ! rmax jδU/r2 2 dr [2(E − U0 ) − j 2 /r2 ]3/2 rmin )! * rmax ∂ dr 6πGM ( = − 2GM j 2 = ∂j rmin r3 2(E − U0 ) − j 2 /r2 a(1 − e2 ) (5.14) となることを示せ。 問 5.6 水星の軌道長半径は a = 0.387AU、離心率は e = 0.2056、公転周期は 0.24 年であ る。問 5.5 の結果は c = 1 の場合の表式であることに注意して、水星が太陽の周りを 公転する際に、一般相対論的効果によってその近日点が1世紀あたり移動する角度を 求めよ。 18
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