2014 年 10 月 22 日 第 7 回 OLS の幾何学(3.3–3.4) 村澤 康友 目次 1 OLS と射影 2 残差回帰(p. 65) 11 3 適合度(p. 67) 16 2 1 1 OLS と射影 線形回帰モデル 大きさ n の (1 + k) 変量データを (y, X) とする. y の X 上への線形回帰モデルは E(y|X) = Xβ 実現値として y, Xβ ∈ Rn . 2 OLS OLS 問題は min β (y − Xβ)′ (y − Xβ) ユークリッド・ノルムを用いると min β ∥y − Xβ∥2 3 OLS 推定量 β の OLS 推定量を b とする. 1 階の条件は −X ′ 2(y − Xb) = 0 したがって b = (X ′ X)−1 X ′ y 4 残差ベクトルの性質(p. 58) 残差ベクトルを e := y − Xb とする. 定理 1. X ⊥ e. 証明:1 階の条件より X ′ e = 0. 5 系 1 (ピタゴラスの定理). ∥y∥2 = ∥Xb∥2 + ∥e∥2 証明:前定理より ∥y∥2 := y ′ y = (Xb + e)′ (Xb + e) = (b′ X ′ + e′ )(Xb + e) = b′ X ′ Xb + b′ X ′ e + e′ Xb + e′ e = (Xb)′ (Xb) + e′ e 6 OLS と射影(p. 58) X の列空間を M ,その直交補空間を M ⊥ とする. • Xb は y の M 上への射影 • e は y の M ⊥ 上への射影 7 OLS の幾何学(p. 58) M’ I-P P y e Xb X 8 M P := X(X ′ X)−1 X ′ とすると, Xb = X(X ′ X)−1 X ′ y = Py e := y − Xb = y − Py = (In − P )y P は y を M 上に,In − P は y を M ⊥ 上に射影. 9 射影行列(p. 63) P , In − P を射影行列という. 定義 1. A′ = A なら A は対称という. 定義 2. A2 = A なら A はべき等という. 定理 2. 射影行列は対称でべき等. 注:射影されたベクトルをもう一度射影しても変わらない. すなわち P (P y) = P y . 10 2 残差回帰(p. 65) y の X 上への線形回帰モデルを次のように書く. E(y|X) = X1 β1 + X2 β2 β1 のみに関心がある. (β1 , β2 ) の OLS 推定量を (b1 , b2 ) とする. 残差の定義より y = X1 b1 + X2 b2 + e 11 X2 の列空間への射影行列は P2 := X2 (X2′ X2 )−1 X2′ y, X1 の射影残差は y ∗ := (In − P2 )y X1∗ := (In − P2 )X1 12 補題 1. y ∗ = X1∗ b1 + e 証明: y ∗ := (In − P2 )y = (In − P2 )(X1 b1 + X2 b2 + e) = (In − P2 )X1 b1 + (In − P2 )X2 b2 + (In − P2 )e = (In − P2 )X1 b1 + e 13 補題 2. X1∗ ⊥ e. 証明: X1∗ ′ e = X1′ (In − P2 )e = X1′ e =0 14 定理 3 (残差回帰). b1 = ( ) ∗′ ∗ −1 X1 X1 ∗′ ∗ X1 y 証明:補題より ∗′ ∗ X1 y = = = ∗′ X1 (X1∗ b1 + e) ∗′ ∗ ∗′ X1 X1 b1 + X1 e X1∗ ′ X1∗ b1 15 3 適合度(p. 67) y の X 上への線形回帰モデル: E(y|X) = ıα + Xβ (α, β) の OLS 推定量を (a, b) とする. 残差の定義より y = ıa + Xb + e ı の列空間への射影行列は P := ı(ı′ ı)−1 ı′ 16 y の射影残差は y∗ = y − P y ı′ y =y−ı n y1 − y¯ .. = . yn − y¯ 17 X の射影残差は X∗ = X − P X ı′ X =X −ı n ′ ¯′ x1 − x . .. = ¯′ x′n − x 18 先の補題より y∗ = X ∗ b + e ただし X ∗ ⊥ e. ピタゴラスの定理より ∥y ∗ ∥2 = ∥X ∗ b∥2 + ∥e∥2 19 決定係数(p. 68) 定義 3. 決定係数は ′ e e 2 R := 1 − ∗ ′ ∗ y y 注:説明変数を増やせば R2 は大きくなる. 定義 4. 自由度修正済み決定係数は ′ e e/(n − k) 2 ¯ R := 1 − ∗ ′ ∗ y y /(n − 1) 20 注:(y, X) を無作為標本とすると, ( E ∗′ ∗ y y n−1 ) = var(yi ) 古典的線形回帰モデルなら ( E ′ ee n−k ) = var(ui ) ¯ 2 は 1 − var(ui )/ var(yi ) の推定量. したがって R 21 今日のキーワード 射影,射影行列,対称行列,べき等行列,残差回帰,決定係 数,自由度修正済み決定係数 22
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