2015 年 1 月 14 日 第 22 回 操作変数法(6.1, 8.2–8.4) 村澤 康友 目次 1 説明変数と誤差項の相関 2 2 欠落変数(p. 107) 6 3 観測誤差(p. 174) 10 4 操作変数法 15 1 1 説明変数と誤差項の相関 線形モデル (y, X) を大きさ n の無作為標本とする. yi と xi に次の線形モデルを仮定する. yi = x′i β + ui E(ui ) = 0 E(ui |xi ) = 0 なら線形回帰モデル. 2 一致推定量(p. 276) 定義 1. 母数に確率収束する推定量を一致推定量という. 注:良い推定量の必要条件. 3 OLS 推定量の一致性(p. 173) β の OLS 推定量を bn とする. 定理 1. E(xi ui ) = 0 ⇐⇒ plim bn = β n→∞ 注:すなわち説明変数と誤差項が無相関であることが OLS 推定量の一致性の必要十分条件(回帰モデルなら必ず成立). 4 証明: ( bn = n ∑ )−1 xi x′i i=1 ( =β+ n ∑ xi yi i=1 1 n n ∑ )−1 xi x′i i=1 n ∑ 1 xi u i n i=1 大数の法則より plim bn = β + E(xi x′i )−1 E(xi ui ) n→∞ 5 2 欠落変数(p. 107) 線形回帰モデル (y, X, Z) を大きさ n の無作為標本とする. yi の (xi , zi ) 上への線形回帰モデルは yi = x′i β + zi′ γ + ui E(ui |xi , zi ) = 0 6 欠落変数(p. 107) zi が欠落すると,yi と xi の線形モデルは yi = x′i β + vi ただし vi := zi′ γ + ui . 7 ここで E(xi vi ) = E(xi (zi′ γ + ui )) = E(xi zi′ )γ + E(xi ui ) = E(xi zi′ )γ したがって E(xi zi′ ) = O または γ = 0 でなければ OLS 推定 量は一致推定量でない. 8 欠落変数バイアス(p. 108) 定義 2. 説明変数の欠落によって生じる OLS 推定量の偏り を欠落変数バイアスという. 注:すべての説明変数を観測できない限り必ず発生する. 9 3 観測誤差(p. 174) (y, X) を大きさ n の無作為標本とする. xi は x∗i の誤差 vi を含んだ観測値とする. xi = x∗i + vi E(vi ) = 0 E(x∗i vi′ ) = O 10 yi の x∗i 上への線形回帰モデルを仮定する. yi = x∗i ′ β + ui E(ui |x∗i ) = 0 回帰誤差と観測誤差は無相関とする. E(ui vi′ ) = 0′ 11 線形モデル yi と xi の線形モデルは yi = (xi − vi )′ β + ui = x′i β − vi′ β + ui = x′i β + wi ただし wi := −vi′ β + ui . 12 ここで E(xi wi ) = E((x∗i + vi )(−vi′ β + ui )) = − E(x∗i vi′ )β − E(vi vi′ )β + E(x∗i ui ) + E(vi ui ) = − E(vi vi′ )β したがって E(vi vi′ ) = O でなければ OLS 推定量は一致推定 量でない. 13 観測誤差バイアス(p. 174) 定義 3. 説明変数の観測誤差から生じる OLS 推定量の偏り を観測誤差バイアスという. 注:観測誤差の欠落による欠落変数バイアスとも解釈で きる. 注:被説明変数の観測誤差なら偏りは生じない. 14 4 操作変数法 操作変数(p. 181) (y, X, Z) を大きさ n の (1 + 2k) 変量無作為標本とする. 定義 4. E(zi x′i ) が非特異で E(zi ui ) = 0 なら zi は β の推定 に関する操作変数(instrumental variable, IV)ベクトルと いう. 15 注:線形回帰モデルなら逐次期待値の法則より E(ui |xi ) = 0 =⇒ E(xi ui ) = 0 また正規方程式が解けるなら E(xi x′i ) は非特異.したがって xi が IV ベクトルとなっている. 16 IV 推定量(p. 185) 定義 5. β の IV 推定量は bIV,n := (Z ′ X)−1 Z ′ y 注:OLS 推定量は xi を IV ベクトルとした IV 推定量と解釈で きる. 17 IV 推定量の一致性 定理 2. plim bIV,n = β n→∞ 18 証明: ( bIV,n := n ∑ )−1 zi x′i i=1 ( =β+ n ∑ zi yi i=1 1 n n ∑ )−1 zi x′i i=1 n ∑ 1 zi ui n i=1 大数の法則より plim bIV,n = β + E(zi x′i )−1 E(zi ui ) n→∞ 19 識別(p. 189) (y, X, Z) を大きさ n の (1 + k + l) 変量無作為標本とする. E(zi ui ) = 0 とする. 定義 6. 母数の一致推定量が存在するとき母数は識別可能と いう. 20 階数条件と次数条件(p. 189) 定義 7. β の識別の階数条件は rk(E(zi x′i )) ≥ k 注:このとき zi から k × 1 の IV ベクトルがつくれる.すなわ ち識別の必要十分条件. 定義 8. β の識別の次数条件は l≥k 注:識別の必要条件. 21 2 段階最小 2 乗法(p. 190) l > k なら次のように IV ベクトルをつくる. y と X の線形モデルは y = Xβ + u E(u) = 0 X と u の相関を取り除くには X を Z 上に射影すればよい. 定義 9. 各説明変数を IV ベクトルに回帰して回帰予測を求 め,それに被説明変数を回帰する方法を 2 段階最小 2 乗法 (2-stage least squares, 2SLS)という. 22 2SLS 推定量(p. 190) 定義 10. β の 2SLS 推定量は ( b2SLS,n := X̂ ′ X̂ ただし ′ X̂ := Z(Z Z) 23 )−1 −1 ′ X̂ ′ y ZX 注:書き換えると b2SLS,n ]−1 [ ′ ′ −1 ′ ′ −1 ′ = X Z(Z Z) Z Z(Z Z) Z X X ′ Z(Z ′ Z)−1 Z ′ y [ ′ ]−1 ′ ′ −1 ′ = X Z(Z Z) Z X X Z(Z ′ Z)−1 Z ′ y ( )−1 = X̂ ′ X X̂ ′ y したがって X̂ を IV とした IV 推定量と解釈できる. 24 今日のキーワード 一致推定量,欠落変数バイアス,観測誤差バイアス,操作変 数,IV 推定量,識別,階数条件,次数条件,2 段階最小 2 乗 法,2SLS 推定量 25
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