単結晶試料 RRu2Al10 (R = La, Pr, Sm)の育成と結晶磁気異方性 磁気低温物理学研究室 安藤翔 RRu2Al10 は斜方晶 YbFe2Al10 型構造を持ち、希土類原子を Al 原子で囲むカゴ状構造 を形成している。RRu2Al10 (R = Pr, Sm)は既に多結晶の磁化、比熱および電気抵抗の温 度依存性が報告されている。PrRu2Al10 は磁気転移せず、結晶場基底状態が非磁性であ り、SmRu2Al10 は T = 12.5 K で反強磁性転移点が確認されている[1]。我々はまだ報告 されていない単結晶 RRu2Al10 (R = La, Pr, Sm)の作製を行い、磁化、比熱を測定した。 試料の作製はフラックス剤として Al を用いた自己フラックス法で行った。試料の評 価は粉末 X 線回折法で行い、結晶構造が斜方晶 YbFe2Al10 型であることを確認した。 また、背面ラウエ法により結晶軸方位を確定するとともに、単結晶試料であることを 確認した。PrRu2Al10 に関しては、帯磁率の温度依存性のグラフから、高温側でキュリ ー・ワイス則に従った振る舞いが見られ、T = 15 K 付近より低温では帯磁率が一定値 となっていることから、T = 15 K 付近から、結晶場分裂による非磁性の基底一重項状 態が実現していると考えられる。SmRu2Al10 に関しては、帯磁率の温度依存性から b 軸方向に T = 12.1 K で大きな折れがある。比熱の測定結果では同じ温度で型のシャ ープな転移が観測されていることから、T = 12.1 K は磁気転移温度と考えている。ま た、同様に b 軸方向の帯磁率の温度依存性において T = 5.0 K にも小さな折れがあり、 比熱のグラフでも同様に T = 5.0 K で折れがあることが分かった。Peratheepan [1]は この折れはスピン再配列に起因するものと報告している。 0.06 0.005 b 0.05 PrRu2Al10 H = 0.1 T w = 27.7 mg 0.03 0.02 (emu/mol) (emu/mol) H // a 0.04 0.004 c 0.003 a 0.002 SmRu2Al10 H // c 0 w = 18.894 mg 0.001 0.01 H // b 0 50 H = 0.1 T 100 150 200 250 300 T (K) 図: 単結晶 PrRu2Al10 の帯磁率の温度依存性 0 0 5 10 15 20 T (K) 25 30 図: 単結晶 SmRu2Al10 の帯磁率の温度依存性 [1] P. Peratheepan, Thesis of Ph.D. (2012), University of Johannesburg.
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