6. エレクトロスプレーマイクロリアクターを用いた金属ナノ粒子の合成

環境管理技術研究部門
Research Institute for Environmental Management Technology
エレクトロスプレーマイクロリアクター
エレクトロスプレ
マイクロリアクタ
を用いた金属ナノ粒子の合成
脇坂昭弘1、兵藤豊1、小原ひとみ1、内田邦夫1、遠藤茂寿1、大古善久1、
小野泰蔵2、早川由夫2、松浦一雄3
1環境管理技術研究部門、
環境管理技術研究部門 2計測フロンティア研究部門、
計測フロンティア研究部門 3ナノミストテクノロジーズ株式会社
ナノミストテクノロジ ズ株式会社
エレクトロスプレーとは、サンプル溶液を電場
サンプル
溶液
高電圧
対向電極
+
+
+
+
+
荷電液滴
ナノ ~ 10 μm
図1 エレクトロスプレ
エレクトロスプレー概念図
概念図
の中に導入し、電荷を有する微小な液滴に断片化して噴霧
する現象のことで、静電塗装やコーティング、繊維状物質を
生成するエレクトロスピニング、脱臭・除菌に効果を示す荷
電液滴生成法等に広く利用されている
電液滴生成法等に広く利用されている。
図1のように、注射針と対向電極の間に電場を形成すると、
サンプル溶液が正電荷を有するナノサイズ~10 μmの液滴
に断片化されて、負極の対向電極に向かって飛行する。
この特徴を利用して、正及び負に帯電した液滴間の静電的
相互作用によって化学反応を起こさせるエレクトロスプレー
マイクロリアクターを開発し、金ナノ粒子の合成反応に適用し
た
た。
エレクトスプレーマイクロリア
クターの写真及び概念図を図2に示す。左
右のシリンジからエタノールを0.02 mL/min.で
流し 注射針に+3 kV(左)及び
流し、注射針に+3
kV(左)及び-33 kV(右)を印
加することにより、正及び負に帯電した液滴が
噴霧され、2本の注射針間の電気力線に沿っ
て荷電液滴が飛行し、電場の中央で衝突・融
合が起こる。これにより、液体の混合体積を極
限まで小さくして、混合効率を最大化し、化学
反応を制御することが可能になった。
+
+
金ナノ粒子を下記の二液混合によって
合成する反応に対して、エレクトロスプレーマイ
クロリアクターを適用した。
第一溶液(正電位印加):
第
溶液(正電位印加): [HAuCl4] = 0
0.1
1 mol/L
mol/L,
エタノール溶媒.
第二溶液(負電位印加): [アスコルビン酸] = 0.1
mol/L, エタノール90/水10vol%混合溶媒.
衝突・融合した液滴内の酸化還元反応により、
平均粒径4 nmの金ナノ粒子が生成した(図3)。
一方、二液を単純混合すると平均粒径は300
nmとなった。エレクトロスプレーマイクロリアク
となった。 レクト スプレ
イク リアク
ターにより反応体積を極微小に制限したことが
金ナノ粒子の粒径制御に寄与した。
他の金属ナノ粒子の合成や溶液中の様々な
連鎖的・連続的反応の制御に適用できる。
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図2 エレクトスプレーマイクロリアクター:
写真(上)及び概念図(下).
図3 エレクトロスプレ
エレクトロスプレーマイクロリアクターに
マイクロリアクタ に
よって合成した金ナノ粒子の動的光散乱スペク
トルとTEM像(挿入).