第六回 重心の運動 物理学講義 I 2014 年 5 月 27 日 ✓ 前回のポイント ✏ • 剛体または質点系の質量中心(重心)の計算法を学んだ。 ✒ 1 • 質点系が重力によって質量中心のまわりに回転することはない。 ✑ 質点系と剛体の運動法則 質量中心の定義 M R = m1 r1 + m2 r2 + · · · + mN rN = N ∑ mi ri (1) i 両辺の時間による1階、2階微分を取れば、 ˙ = m1 r˙1 + m2 r˙2 + · · · + mN rN ˙ = MR N ∑ mr˙i = i ¨ = m1 r¨1 + m2 r¨2 + · · · + mN r¨N = MR N ∑ ∑ Pi = P (2) Fi = F (3) i mr¨i = i ∑ i となる。 2 F2 1 3 F1 F3 図 1: 3質点系の各質点に働く力。 簡単のため図 1 のような3つの質点系を考えよう。質点 i(i = 1, 2, 3) はそれぞれ外力 Fi (i = 1, 2, 3) 1 を受けており、更に他の質点からの内力 Fi←j (j = i) を受けている。各質点の運動方程式は、 m1 ¨r1 = F1 + F1←2 + F1←3 (4) m2 ¨r2 = F2 + F2←1 + F2←3 (5) m3 ¨r3 = F3 + F3←1 + F3←2 (6) となる。内力に関して作用反作用の法則より、Fi←j = −Fj←i であることに注意して、式(4)、 (5)、(6)の辺々を足せば、 m1 ¨r1 + m2 ¨r2 + m3 ¨r3 = F1 + F2 + F3 (7) となる。式(7)は式(3)を用いて ¨ =F MR (8) と書ける。ここで右辺の F は、質点系に働く外力の総和 F = F1 + F2 + F3 である。これより、剛 体あるいは質点系がいくつもの力を受けて運動しているとき、質量中心は全質量 M と同質量の質 点が、外力 F を受けるときと同じ運動を行うということが言える。第 4 回の講義ノートの冒頭で考 えた系を思い出してほしい。棒の質量中心 G を支えるのに必要な力の大きさは、各質点 m1 、m2 に働く重力の合力の大きさに等しかったはずである。 ✓ ✏ 例1:伸縮する軽いばねの両端に2つのおもりをつけて、引っ張った後に自由落下させる。こ のとき重心の軌跡はどうなるか? ✒ ✓ ✑ ✏ 例2:手榴弾をピンを抜いて投げた。最初手榴弾は放物線を描いて飛んだが、ある地点で爆発 し、たくさんの破片に分解して地上に落下した。破片の重心はどのような運動をするか? ✒ 2 ✑ 運動量保存則 質点系の全運動量は P = m1 v1 + m2 v2 + · · · (9) と表される。一方で重心の定義は M R = m1 r1 + m2 r2 + · · · ∑ M = mi (10) (11) i である。式(11)を時間微分して、 P = MV (12) を得る。V は重心速度である。質点系の全運動量は全質量に重心速度をかけたものに等しい。 式(12)を時間で微分すると、 dV dP =M =F dt dt 2 (13) となり、これは重心の運動方程式である。もし外力の総和がゼロならば dP =0 dt (14) となる。系の外部から力が働かない質点系の運動量の和は時間変化しない。これを運動量保存則と いう。 ✓ 運動量保存則 ✏ 外力を受けずに運動している物体の運動量は時間変化しない。 ✒ ✓ ✑ ✏ 例3:連結された二つの台車の連結部分を爆竹で爆破する。爆破の衝撃で二つの台車がレール の上を走りだした。最初二つの台車は静止していたとして、この二つの台車の運動を議論し なさい。 ✒ ✓ ✑ ✏ 例4:質量 M の宇宙船が運行速度 vi で一直線上を進行している。進行中に積み荷モジュー ル(質量 0.2M )を分離した。このときの積み荷モジュールと本体の分離後の速さはどれだけ になるか。 ✒ ✓ この回のまとめ ✑ ✏ • 質点系がいくつもの外力を受けて運動しているとき、その質量中心は、全質量 M が外 力の総和 F を受けるときと同じ運動をする。 • 系の外部から働く合力が 0 のとき、質点系の運動量の和は時間変化しない。これを運動 量保存則という。 ✒ ✑ 3
© Copyright 2025 ExpyDoc