航空機のしくみ(復習と続き) 半田利弘 理学部物理科学科 機体+取込外気 ■ ■ 基礎方程式:推力 噴流 機体+噴流 運動量保存則 (M+Dm)(v+Dv)-Dm u = (M+Dm) v ここから、推力 f = Δ𝑣 M Δ𝑡 =u 対気噴流速度 Δ𝑚 = Δ𝑡 (vj-v) Δ𝑚 噴射流量 Δ𝑡 噴射流量 対機体噴流速度 流量が大きいほど、噴射速度が大きいほど推力大 低速時:vj-vが大、高速時:Dm/Dtが大推力変化小 経過時間Dt 機体+取込外気 ■ 基礎方程式:推進効率 噴流 機体+噴流 エネルギー保存則 1 2+ 1Dm u2= 1(M+Dm) v2+DE (M+ D m)(v+ D v) 2 2 2 先ほど得た f=M Δ𝑣 Δ𝑡 必要なエンジン出力 生成エネルギーDE 経過時間Dt =u Δ𝑚 Δ𝑡 を代入すると DE =f Dt(v+ 12 u) 基礎方程式:推進効率 ■ ■ 推進力(エンジン)が機体に対してする仕事DW DW= f Dx = f vDt ここから、推進効率 h = h= 𝑓𝑣 Δ𝑡 𝑓 1 Δ𝑡(𝑣+ 𝑢) 2 = 2 𝑢 2+ 𝑣 Δ𝑊 Δ𝐸 = 機体速度を単位とした対気噴流速度 を求めると 2 1+ 𝑣𝑗 𝑣 機体速度を単位とした対機噴流速度 u が小さい(vjが小さい=vに近い) ほど高効率 操縦翼面 ▶ 進行方向の変更 ■ 方向舵、補助翼(エルロン) ▶ 仰角の変更 ■ 昇降舵 エルロン ロー 方向舵 ヨー ピッチ 昇降舵 ヨー(進行方向)を変えるための操縦 ▶ ヨー(進行方向)の操縦 ■ ■ きっかけは方向舵で 主に補助翼(エルロン)で 揚力 揚力の鉛直成分 (高度を維持する力) 旋回運動の向心力 重力 超音速 ▶ 対気速度が音速を超える ■ 圧力変化が上流へ伝わらない衝撃波の発生 流れの剥離=抗力の急増、揚力の急減 ■ “音の壁” 気体の1次元定常流(1) ▶ 1次元定常流を考える ▶ 質量当たりの基礎方程式(w:エンタルピー) r1v1= r2v2=j 連続の式 p1+r1v12= p2+r2v22 運動量保存則 r1v1(w1+v12/2)=r2v2 (w2+v22/2) エネルギー保存則 ▶ 第3式は第1式を使うと w1+v12/2=w2+v22/2 ベルヌーイの定理 w1, r1 p1 v1 p2 v2 w2, r2 気体の1次元定常流(2) ▶ 単位体積当たりだったので、V=1/r ■ ここから j2=(p2-p1)/(V1-V2) pの増減とVの増減は常に逆 ■ これとベルヌーイの定理とe=w+pVから e1-e2+(p1+p2)(V2-V1)/2=0 1での量から2での量に制限が加わる ■ ランキン・ユゴニオの断熱曲線・衝撃波断熱曲線 Rankine-Hugoniot 衝撃波圧縮 ▶ 理想気体なら、e=pV/(g -1) ■ ランキンユゴニオの式に代入 V2/V1=[(g +1)p1+(g -1)p2]/ [(g -1)p1+(g +1)p2] ランキン・ユゴニオの式 ■ ■ 圧力比が決まれば密度比が決まる! p2≫ p1の極限では V2/V1=r1/r2=(g -1)/(g +1) 単原子気体ならg =5/3より、V2/V1=1/4, r2/r1=4 ► 一般に1<g ≦5/3なので、r2/r1≧4 どんなに強い衝撃波でも密度の増加に上限がある ► ガスの種類にも依るが、せいぜい数倍 衝撃波加熱 ▶ 理想気体なら、T∝pV ■ したがって、先の結果を利用して T2/T1=(p2V2)/(p1V1) =(p2/p1) [(g +1)p1+(g -1)p2] / [(g -1)p1+(g +1)p2] ランキン・ユゴニオの式 ■ ■ 圧力比が決まれば温度比が決まる! p2≫ p1の極限では T2/T1=[(g -1) p2]/[(g +1) p1] 衝撃波面が強ければ温度はいくらでも上昇する 衝撃波面の速度 ▶ 媒質1が静止している=波面v1がで移動 w1, r1 p1 -v1 p2 v2-v1 w2, r2 ▶ マッハ数M=v/c ■ 理想気体の音速c=(r/p)1/2 ▶ V2/V1などはMで表現可:衝撃波の強さはM で V2/V1=[(g -1)M12+2]/[(g +1)M12] T2/T1=[2gM12-(g -1)] [(g -1)M12+2 ]/[(g +1)M12] p2/p1=(2gM12-g +1)/(g +1) ヘリコプター ▶ 回転翼機 ■ ■ 回転による気流で主翼としての揚力を得る 回転翼=ローター アウグスタウェストランド AW-109 ボーイングバートル 234 (民航用チヌーク) ベル47 (川崎航空機ライセンス生産) ヘリコプター ホッケウルフ Fw-61:世界初のヘリ ミルMi-12:世界最大のヘリ ロケットのしくみ 半田利弘 理学部物理科学科 ロケット ▶ 輸送手段としてのロケット ■ ■ 宇宙への輸送手段 宇宙での輸送手段 ▶ 宇宙で使える2つの特徴 ■ 真空中でも動作する動力源 熱機関としては、ロケット固有 ■ 真空中でも駆動力が得られる 推進力を得るための反動物質を内蔵している ジェットエンジンの反動物質は吸入した空気 初期の有人ロケット飛行機 ▶ 過去には、航空機動力としても使用 秋水 (日本) Me163 コメート(ドイツ) 桜花 (日本) 人間爆弾 マーチンマリエッタX-24(米国) ベル X-1(米国) ノースアメリカン X-15(米国) 初期の近代的ロケットと研究者 オーベルト(ドイツ) ゴダード(米国) ツィオルコフスキー(ロシア) ペンシルロケット(日本) 糸川英夫(日本) 近代的ロケットの開発者 フォンブラウン(ドイツ→米国) コリョロフ(ソ連) 歴史的なロケット R7/ボストーク(ソビエト) V2(ドイツ) サターンV(米国) ラムダ-4S(日本) M-V(日本) 歴史的なロケット スペースシャトル(米国) エネルギア+ブラン(ソ連) 最近のロケット ソユーズ (ソビエトロシア) アリアンV(欧州) デルタVI(米国) H-II(日本) 最近のロケット PSLV-XL(インド) 長征2(中国) ツィクロン3(ウクライナ) 最近のロケット ペガサス(オービタルサイエンシズ) ファルコン9(スペースX) スペースシップ2+ホワイトナイト2 (バージンギャラクティック) ロケットと大砲 ▶ 大砲 ■ 筒内で生じる火薬の爆発力で弾を飛ばす ▶ ロケット ■ 本体内から吹き出したガスの反動で飛ぶ ロケットと大砲 ▶ ロケットと大砲の加速 ■ ■ 最終速度 v、加速区間長 L 加速度aは? 加速度の式:v =a t + v0; ここで、tは加速時間 最初は止まっているから ■ v0=0 tが短ければ、大きな加速度が必要 L= 1 2 𝑣(𝑡) 𝑑𝑡 = 𝑎𝑡 𝑑𝑡 = a t2 𝑣2 a= 2𝐿 ■ 同じLでは、最終速度vの2乗に比例した加速度 ■ 大砲の加速度では人間は耐えられない! ロケット燃料と火薬 ▶ 燃焼とは ■ ■ 発熱を伴う急激な化学反応、酸化反応が多い 発熱をエネルギー源とする熱機関 ▶ 酸化反応 ■ ■ 大気中の酸素を利用蒸気機関、内燃機関 酸化剤を内包していれば大気は不要 ▶ 酸化剤+燃焼物 ■ 火薬:酸化剤と燃焼物が一体化した粉末 黒色火薬:硫黄、木炭粉末、硝石 ■ ロケット燃料:酸化剤と燃料 化学燃料ロケット ▶ 液体燃料 ■ 酸化剤と推進剤 液体酸素、過酸化水素、硝酸、四酸化二窒素 液体水素、ケロシン、アルコール、ヒドラジン ▶ 固体燃料 ■ 火薬、専用燃料 コンポジット燃料(合成ゴム+Al+過マンガン酸カリ) ▶ ハイブリッド燃料 ■ 主流は、固体推進剤+液体酸化剤 ▶ どんな燃料が理想的か物理学で考える 化学燃料ロケット ▶ 液体燃料ロケットの利点 ■ ■ 燃焼の調整が容易 最終到達速度が高い ▶ 固体燃料ロケットの利点 ■ ■ すぐに発射できる 大きな推力が得られる 無重力下でのロケット(1) ▶ 無重力≠衛星軌道上 ■ ■ 無重力とは、どの天体の重力の影響もない 宇宙空間に宇宙船1隻しかない場合 ▶ ロケットの運動を考える ■ ■ 噴射速度uで噴射 時間dtの間に出る噴射ガスの質量はdm 推力:飛行機の場合(復習) ■ ■ 運動量保存則 (M+Dm)(v+Dv)-Dm u = (M+Dm) v ここから、推力 f = Δ𝑣 M Δ𝑡 =u Δ𝑚 = Δ𝑡 (vj-v) Δ𝑚 Δ𝑡 流量が大きいほど、噴射速度が大きいほど推力大 低速時:vj-vが大、高速時:Dm/Dtが大推力変化小 経過時間Dt 無重力下でのロケット(2) ▶ ロケットの基礎方程式運動量保存則 ■ ガスの噴射速度はu mv dt後 (-dm)(v-u) (m+dm)(v+dv) 運動量保存則 -dm(v-u)+(m+dm)(v+dv)=mv ツィオルコフスキーの公式 ▶ 基礎方程式 ■ -dm(v-u)+(m+dm)(v+dv)=mv ▶ 計算すると… ▶ ■ udm+mdv=0 ■ 1 u dm=-dv 𝑚 ■ ここから、t=0でm=m0,v=v0=0として 𝑚 v=u ln :ツィオルコフスキーの公式 𝑚0 最終速度は:噴射速度より大きくできる ■ よいエンジンや燃料=uが大きなエンジンや燃料 ロケットの推力 ▶ ロケットを加速する力=推力 ■ ■ ∴ udm+mdv=0 ←先ほどの式 𝑑𝑣 時間dtの間での変化なので、速度変化は 𝑑𝑡 𝑑𝑣 𝑢 𝑑𝑚 =𝑑𝑡 𝑚 𝑑𝑡 速度の時間変化=加速度 ■ ■ つまり、a ニュートンの運動方程式f=m f= - 𝑑𝑚 𝑑𝑡 推進剤消費率 u :ロケットの推力 噴射速度 𝑑𝑣 𝑑𝑡 𝑑𝑣 = 𝑑𝑡 より 比推力 ▶ ロケットの能力 𝑑𝑚 𝑑𝑡 𝑚 𝑚0 ■ 推力 f= - ■ どちらでも、噴射速度uが大きいほど高性能 u、速度v=u ln ▶ 比推力 ■ ■ ■ 噴射速度uを地表の重力加速度gで除したもの 単位:秒 1G下で自重を支える推力を維持できる時間 ▶ 比推力が大きな=噴出速度が大きな燃料 ■ 質量当たりの発熱が大、生成物の分子量が小 地上から打ち上げる ▶ 推力 ■ 噴射ガスが及ぼす力 f=- 𝑑𝑚 𝑑𝑡 u ▶ 地表重力の下での運動方程式 ■ f=- 𝑑𝑚 𝑑𝑡 ロケット推力 ■ ■ ■ u - mg = 𝑑(𝑚𝑣) 𝑑𝑡 :実効的な加速力 地球重力 加速上昇するためには、推力>重力 - 𝑢 𝑑𝑚 𝑚 𝑑𝑡 >g 単位質量単位時間当たりの推進剤消費率 × 噴射速度 加速がいいロケットとは 軽量、噴射速度が速い、燃料を短時間で使う 化学反応:液体燃料 ▶ 燃焼:急速な発熱を伴う化学反応 ■ 酸素 O2+水素 H2 発熱量:15.8kJ/g (H2 2g+O2 16gで284kJ) 燃焼生成物:H2O 分子量18 点火操作が必要、貯蔵には極低温 ■ 酸素O2 +ケロシン(灯油) 発熱量:約10kJ/g (灯油のみで約44kJ/g) 燃焼生成物:H2O, CO2 ■ 四酸化二窒素N2O4 +ヒドラジンN2H4 燃焼生成物:窒素酸化物系有毒ガス 混合しただけで燃焼、常温で保存可、劇薬 化学反応:固体燃料 ▶ 黒色火薬 ■ 硫黄+木炭粉末+硝石 ▶ ダブルベース火薬 ■ ニトロセルロースとニトログリセリンが主体 ▶ コンポジット推進薬 ■ 合成ゴム+金属粉末+酸化剤 合成ゴム:ブチルゴム、ポリウレタン、ポリブタジエン 金属粉末:アルミニウム粉末、酸化鉄 酸化剤:過塩素酸アンモニウム、過マンガン酸カリ ロケットの姿勢制御 ▶ 推進方向の維持 ■ ■ 力点が重心より下:回転モーメント 不安定平衡点フィードバックが必須 ▶ 飛行方向の安定化 ■ ■ 空力安定翼 回転角運動量による安定化 回転軸の方向は変わりにくい ■ フィードバックによる安定化 推力 重力 噴射方向の制御 ▶ 空力制御 ■ 空力翼 ▶ 推力偏向制御 TVC ■ ■ ■ 噴流翼 可動ノズル ノズル内ガス噴射 ▶ 横推力制御 SJ ■ ■ 副エンジン 副ノズル 多段式ロケット ▶ 不要部分を切り捨てる ■ 直列 ■ 並列 クラスターロケット ▶ 多数のエンジンを束ねて使う ■ 小推力エンジンで大推力を達成する方法 非クラスターロケットの例:エンジン1個 補助ロケット(ブースター) ▶ 仕組みとしては多段式の一種 ■ ■ 初期加速を向上させる推力補助 推力が大きなロケット固体燃料が適している
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