数理統計学 演習問題解答 木村泰紀∗ 2014 年 10 月 10 日出題 問題 1. P (F ) > 0 をみたす事象 F のもとでの条件付確率 PF は次の条件をみたすことを示せ. (i) PF (Ω) = 1, (ii) 任意の事象 E に対して 0 ≤ PF (E) ≤ 1, (iii) 事象 E1 , E2 が E1 ∩ E2 = ∅ をみたすならば PF (E1 ∪ E2 ) = PF (E1 ) + PF (E2 ). 解答 (i) 条件付確率の定義より PF (Ω) = P (Ω ∩ F ) P (F ) = = 1. P (F ) P (F ) (ii) 事象 E に対し, P (E ∩ F ) ≥ 0, P (F ) > 0 より PF (E) = P (E ∩ F ) ≥ 0. P (F ) また, F = (E ∩ F ) ∪ (E C ∩ F ) で, (E ∩ F ) ∩ (E C ∩ F ) = ∅ であることから, P (E ∩ F ) ≤ P (E ∩ F ) + P (E C ∩ F ) = P (F ) が成り立ち, よって PF (E) = P (E ∩ F ) ≤1 P (F ) を得る. (iii) E1 ∩ E2 = ∅ ならば (E1 ∩ F ) ∩ (E2 ∩ F ) = ∅ であるから PF ((E1 ∩ F ) ∪ (E2 ∩ F )) = PF (E1 ∩ F ) + PF (E2 ∩ F ). よって P ((E1 ∪ E2 ) ∩ F ) P (F ) P ((E1 ∩ F ) ∪ (E2 ∩ F )) = P (F ) P (E1 ∩ F ) + P (E2 ∩ F ) = P (F ) = PF (E1 ) + PF (E2 ) PF (E1 ∪ E2 ) = が得られる. ∗ 東京農工大学工学部非常勤講師, 東邦大学理学部情報科学科. http://www.lab2.toho-u.ac.jp/sci/is/kimura/yasunori/ 1 問題 2. ある病気の試薬は, その病気を患っている人の 95% に対して陽性を示し, 病気を患っていない人の 5% にも陽性を示す. また, 試薬による検査を受けた人の 3% が病気を患っていることがわかっている. 検査を 受けた人の中からランダムに 1 人選んだところ, 検査結果は陽性を示していた. この人が実際に病気を患って いる確率を求めよ. 解答 ランダムに選ばれた人が実際に病気を患っているという事象を A1 , 患っていない事象を A2 とし, 検査 により陽性を示す事象を B とすると, A1 と A2 は全事象 Ω の分割となっている. 求める確率は PB (A1 ) なの で, ベイズの定理を用いると PB (A1 ) = PΩ∩B (A1 ) = P (A1 )PA1 (B) . P (A1 )PA1 (B) + P (A2 )PA2 (B) ここで, P (A1 ) = 3/100, PA1 (B) = 95/100, P (A2 ) = 97/100, PA2 (B) = 5/100 より, 95 3 · 100 100 PB (A1 ) = 3 95 97 5 · + · 100 100 100 100 3 · 95 = 3 · 95 + 97 · 5 57 = + 0.3701. 154 問題 3. さいころを 2 回ふる試行において, 1 回目に偶数の目が出る事象を A とする. 事象 A と次のそれぞれ の事象との独立性を調べよ. (i) 目の数の合計が 8 になる事象 B, (ii) 目の数の合計が 9 になる事象 C. 解答 標本空間を Ω = {(1, 1), (1, 2), . . . , (6, 5), (6, 6)} のようにあらわすことにする. P (A) = 3/6 = 1/2 で あることは容易にわかる. (i) B = {(2, 6), (3, 5), (4, 4), (5, 3), (6, 2)} であるから, P (B) = 5/36. また, A ∩ B = {(2, 6), (4, 4), (6, 2)} より P (A ∩ B) = 3/36 = 1/12. よって, P (A)P (B) = 5 1 1 5 · = 6= = P (A ∩ B) 2 36 72 12 となるので, A と B は独立でない. (ii) C = {(3, 6), (4, 5), (5, 4), (6, 3)} であるから, P (C) = 4/36 = 1/9. また, A ∩ C = {(4, 5), (6, 3)} より P (A ∩ C) = 2/36 = 1/18. よって, P (A)P (C) = 1 1 1 · = = P (A ∩ B) 2 9 18 となるので, A と B は独立である. 2
© Copyright 2024 ExpyDoc