Page 1 Page 2 学位(専攻分野) 博 士 、 (工 学) 学位授与の日付 平成ー

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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無定形高分子とそのブレンド系の力学特性と構造緩和(
Abstract_要旨 )
荒木, 修
Kyoto University (京都大学)
2000-03-23
http://hdl.handle.net/2433/180976
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
氏
名
あら
き
おさむ
荒
木
修
学位 (
専攻分野)
博
士
学 位 記 番 号
工
博
学位授与の 日付
平 成 1
2年 3 月 2
3日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 4 粂 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
工 学 研 究 科 材 料 化 学 専 攻
学位論文題 目
無定形高分子 とその ブ レン ド系の力学特性 と構造緩和
論文調査委員
教 授 升 田利 史 郎
(
主
(
工
学)
9
4
9号
第 1
査)
輸
本論文 は,ポ リメタク リル酸 メチル
教 授 小 林 四 郎
文
内
容
の
要
教 授 木 村 俊 作
旨
(
PMMA)
,α-メチルスチ レンーアク リロニ トリル共重合体 (
αMS
AN)などの無定
LCST)型の高分子 ブ レン ドの力学特性 について,非平衡構造の緩和 と
形高分子及 びそれ らを成分 とす る下限臨界共溶温度 (
0章か らな っているO
高分子鎖間の相互作用の観点か ら研究 した成果をまとめた ものであ り,1
第 1葦 は序論であ り,本研究の背景及 び本論文の構成 につ いて述べている。
第
2葦では,PMMAの徐冷過程で起 る構造変化 と体積変化 につ いて述べている
O
徐冷過程でガラス転移温度 (
Tg) よりも
低温 (
TQ)か ら急冷 された試料 の動的粘弾性関数の温度分散曲線 は,室温 まで徐冷 された試料 のそれ と T
Q以上の温度領域
で一致す ることを兄いだ しているO この結果 と密度の測定か ら徐冷過程では高分子鎖の大 きいスケールの運動か ら凍結 され
ると結論 している。
第 3葦では,P
MMA溶融物 を急冷 した試料 (QU 試料) のTg 以下の温度での経時平衡化過程
(
p
hy
s
i
c
a
la
gi
n
g
)につい
て述べている。熱処理試料の動的粘弾性関数の温度分散曲線 は,低温側で徐冷試料の もの,高温側で QU試料 の ものと一致
し, その クロスオーバー領域 は熱処理時間 とともに高温側 に移動することを観測 しているo この ことか ら,経時平衡化過程
は高分子鎖の小 さいスケールの運動 か ら起 こると結論 している。 また, この結論が密度の測 定結果 と矛盾 しないことを示 し
ている。
第 4章では,P
MMAと同様 に代表的な無定形高分子であるポ リスチ レン (
PS
)を用いて,高分子 ガラスの構造緩和が動的
S試料の動的粘弾性関数の温度分散曲線が熱処理時
粘弾性関数の温度分散 に及ぼす影響 について調べている。 急冷 された P
間 とともに変化 し,前章で得 た P
MMAの結果 と極 めて類似 していることを示 している。 また, これ らの挙動が分子量分布
に も依 らないことを示 している。
章では,ランダム共重合体の無定形高分子である α
MS
ANを用 いて,高分子 ガラスの動的粘弾性関数の温度分散 に及
第5
ぼす熱履歴の影響 について述べている。
αMS
ANについて得 られた結果 は,PMMAと PSについて述べた結果 と類似 してい
ることか ら,動的粘弾性か ら見た P
hy
s
i
c
a
la
g
i
n
gの挙動 は高分子 ガラスに共通す るものであることを示 している。
6章では,単一相状態 にある PMMA/
αMS
ANブレン ド系試料 を用 いて, ブレン ドした効果がガラス領域 での物性値 に
どのよ うに影響す るか述べている.ブレン ド試料 は単一の α緩和温度 (
Ta
)を もち Ta対 a
MS
AN分率曲線 は上 に凸にな り,
同時に密度 は低下す みことを兄 いだ し, P
MMAと αMS
ANが相溶すると高分子鎖の運動が拘束 されると推論 しているO さ
MMA鎖 と αMS連鎖 の相互作用を用 いて説明 している.
らに,成分高分子が柏溶す るメカニズムを P
第7
葦では, P
MMA/
aMS
ANブ レン ドの相構造が動的粘弾性 に及ぼす影響 について述べている 相分離試料の動的粘弾
第
o
性関数の温度分散曲線 には α緩和 は一つ しか現れず,相分離試料 の 告 は単一試料の 先 よ り低下す るが,密度 は高 くなるこ
とを兄 いだ している。相分離試料が低 い Taを与え る原因 は,ブレン ド試料 の Taが LCSTよ りも低 いため,相分離試料 は非
平衡状態 にあ り,動的に不安定 になることであると推論 している。
第 8葦では,ガラス状態 にある P
MMA/
aMS
ANブ レン ドの相構造が引張特性 に及ぼす影響 について調べているo単一相
-9
3
4-
ブレンド試料では初期弾性率対 αMSAN分率曲線 は上に凸になることを示 している。この結果は,この系が相溶状態におい
て成分高子鎖間に相互作用が働いていることに起因するものであると推論 しているO 単一相試料を相分離 させると初期弾性
率 は低下することを示 し, これは PMMAr
i
c
h相 と poor相 との界面部分で変形が大 きくなり, 塑性変形が生 じることなど
に起因すると結論 している。
第 9章では,LCST型の高分子 ブレンドの 1つである PMMA/
αMSAN のブレンドを用いて,その相分離温度近傍での溶
融状態で動的粘弾性 について述べている。 相分離す る温度を境に して高分子 ブレンドの動的粘弾性の周波数依存性曲線の形
が大 きく異なることを明 らかに し,動的粘弾性の周波数分散の測定が相分離温度を評価する有効な方法であることを示 して
いる。
最終章では,本研究で得 られた成果を総括 しているO
論 文 蕃 糞 の 結 果 の 要 旨
本論文は,ポ リメタクリル酸 メチル (
PMMA)
,a-メチルスチ レン-アク リロニ トリル共重合体 (
a・
MSAN)などの無定
形高分子及びそれ らを成分 とする高分子 ブレン ドについて,動的粘弾性の温度分散 と密度の測定結果か ら,非平衡構造緩和
と高分子鎖間相互作用について研究 ・考察 した結果をまとめたもので,得 られた主 な成果は次のとお りである。
1.PMMA の徐冷過程において,動的粘弾性 と密度が系統的に変化することを見出 し,内部構造の凍結過程を解明 した0
2.経時平衡化 (
phys
i
c
alagi
ng)過程における動的粘弾性の測定か ら,非平衡内部構造の平衡化に寄与する高分子鎖の
運動 とセグメ ントスケールの関係を明 らかに した。
3.無定形高分子の構造緩和は,分子鎖の化学構造,分子量,分子量分布などに依存 しないことを示 した。
4. PMMA/
αMSAN ブレンド系においては, 相溶状態では PMMA鎖 と a・
MSAN鎖車の αMS連鎖 との間に強い相互
作用が存在す ること,及び相分離状態ではそれが消滅することを示 した。 この結果 は,密度の測定及 び引張特性の測定 に
よっても確かめ られた。
5.高分子 ブレンド系の溶融状態における粘弾性関数の測定が相分離温度の評価に極めて有用であることを見出 した。
以上要するに本論文は,無定形高分子 ガラスとそのブレンド系における内部構造 とその緩和及び高分子鎖間相互作用に関
して基礎的知見を与えるものであり,その成果は学術上,実際上寄与するところが少な くないOよって,本論文は博士 (
工
学)の学位論文 として価値あるもの と認める。 また平成 1
2年 2月 2
1日,論文内容 とそれに関連 した事項 について試問を
行 った結果,合格 と認めた。
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