2014 年度前期
脂肪族求核置換反応 (SN1, SN2)
有機化学演習 第5回
1. (1) 2-Chlorobutane と I– の SN2 反応について、遷移状態の分子モデルを作成
し、図示しなさい。(2) SN2 反応が立体反転で進む理由を、(1) の遷移状態の
構造を使って説明しなさい。
(1)
(2) メチル基、エチル基、水素の作る平面の反対側に
CH3
Cl
C
脱離基の Cl と求核剤の I が位置しているため、反応
I
前後で炭素の立体配置が逆転する。
H CH2CH3
2. 以下の化合物を、ハロゲン化アルキルを使った SN2 反応で合成する方法を提
案しなさい。反応条件(溶媒、使う反応試薬)を明記すること。
H3C
OCH3
OH
H3C
ONa
O
CH2CH3
CH3I
K2CO3
OCH3
DMF
CH3CH2Br
H3C
AcOH
O
Br
CN
O
O
CH2CH3
O
NaCN
CN
DMSO
3. Bromoethane と HO–との SN2 反応は、エタノール中と DMSO 中ではどちら
が速いか、理由をつけて説明しなさい。
DMSO 中の方が速い。エタノール中では HO– は水素結合で安定化されているが、
DMSO はアニオンを溶媒和する力が弱いため、HO– の安定化が弱く、従って求
核性が強い。
4. アルコールの OH 基を求核剤で SN2 反応させるためには、先にスルホン酸エ
ステルに変換するのが有効である。
O
CH3CH2OH + Cl
S
CH3
O
p-toluenesulfonyl chloride
Base
O
CH3CH2O S
CH3 + BaseH+•Cl–
O
ethyl p-toluenesulfonate
(スルホン酸エステル)
(1) エタノールよりも p-トルエンスルホン酸エチルの方が SN2 反応しやすいの
はなぜか。(2) p-トルエンスルホン酸エチルを上式で合成する際には、反応
温度を低温に保つ必要がある。温度が上がると、クロロエタンが副生するた
めである。この副反応が起きるのはなぜか。
(1) HO– は塩基性が強く悪い脱離基だが、TsO– は塩基性が弱く良い脱離基であ
るため。(2) 上の反応で生成した Cl– が求核剤として働き、SN2 反応で TsO– と
置換するため。
5. 以下の化合物を、ハロゲン化アルキルを使った SN1 反応で合成する方法を提
案しなさい。反応条件(溶媒、使う反応試薬)を明記すること。
CH3
OCH3
CH3
Ph
H
Ph C N CH2CH3
Ph
Ph =
CH3
CH3OH
OCH3
Cl
(※ CH3O– は不可。脱離反応が優先する)
CH3CH2NH2
Ph
+ Ph C Cl
Ph
Et3N
CHCl3
Ph
H
Ph C N CH2CH3
Ph
(※ Et3N は発生する HCl を中和するのに必要だが、原料の CH3CH2NH2 を過剰
に使えるのであれば省略してよい。溶媒は、極性で、かつ求核性を持たないも
のを使う必要がある。DMF などでもよい)
6. 次の2つの反応のうち、速いのはどちらか。理由をつけて説明しなさい。
CH3
CH3
CH3OH
Cl
CH3
H3CO
OCH3
CH3OH
CH3
H3CO
OCH3
Cl
下の方が速い。この反応は SN1 で、カルボカチオン中間体を経由する。メトキ
シ基がついている方は、下の共鳴によってカルボカチオンが安定化されるため、
反応が加速される。
CH3
H3CO
CH3
CH3
H3CO
H3CO
7. (1) (S)-2-Butanol を希硫酸中で放置するとラセミ化した。ラセミ化の機構を
説明しなさい。(2) (S)-2-bromobutane を DMSO 中 NaBr で処理するとラセ
ミ化した。ラセミ化の機構を説明しなさい。
+ H+
H OH
– H2O
H OH
2
– H+
+ H2O
H
+ H2O
– H2O
– H+
H2O H
HO H
+ H+
Br!–
H Br
H
Br H
Br!–
8. 下のハロゲン化アルキルは、SN1 反応も SN2 反応もしない。なぜか。
Br
3級でかつ Br の背面がブロックされているため SN2 反応は起きない。また、Br
が脱離してカルボカチオンが生成すると立体歪みが非常に大きくなるため、カ
ルボカチオンが生成しにくく、従って SN1 反応も起きない。
9. 構造のわからないアルケンがある。このアルケンに水中で臭素を反応させ、
生成物を NaOH で処理したところ、下のエポキシドが得られた。最初のアル
ケンの構造を推定し、下のエポキシドに至る反応式を図示しなさい。
O
H
CH3CH2
H
CH3CH2
–OH
H
CH2CH3
H
Br+
CH3CH2
CH2CH3
CH3CH2
H
Br
H
H
H2O CH3CH2
H
CH2CH3
Br
+
Br
O–
H
CH2CH3
OH2
H
CH2CH3
– H+ CH3CH2
H
Br
OH
H
CH2CH3
O
H
CH3CH2
H
CH2CH3
+ Br–
10. ジアゾメタン CH2N2 はカルボン酸と速やかに反応して、メチルエステルを
生成する。
CH2N2 + CH3COOH
CH3COOCH3 + N2
(1) ジアゾメタンの共鳴構造を書きなさい(ヒント:C-N-N は直線状に並んで
いる)。(2) ジアゾメタンは C 上にプロトン化を受けて CH3N2+ になる。この
物質の共鳴構造を書きなさい。(3) CH3N2+ と CH3COO–(酢酸の共役塩基)
が SN2 反応を起こして CH3COOCH3 が生成する。反応機構を巻き矢印で図示
しなさい。(4) (3)の反応は、たとえば CH3Br と CH3COO– の SN2 反応と比べ
て非常に速い。なぜか?
(1)
(3)
CH2 N N
H3C
O
O
CH2 N N
+ CH3 N N
(2)
H3C
CH3 N N
O
CH3 + N2
O
(4) 脱離基である N2 が、中性分子で極めて安定であるため。
CH3 N N