A→C B→C a, c b, c A→C B→C a/2, b/2, c

平成 25 年度 M1「代謝生化学A」 再試験(1)・田原担当(1 枚目/全 2 枚)
解答
14.
代謝
整理番号
2014.2.13
氏名
答案作成にあたっては、誠実で丁寧な記述を心がけること。記述問題において明らかに無
関係な事実や創作とみなした不誠実な答案は配点分を減点する。
1.細胞内区画は、細胞内の代謝を構成する要素の一つである。区画の存在が自由エネル
ギ ー の 観 点 か ら も 有 利 で あ る こ と を 計 算 に よ っ て 確 か め て み よ う 。体 積 2 の 細 胞 が 体 積 1
ず つ の 2 つ の 区 画 に 区 切 ら れ 、 反 応 A→ C と 反 応 B→ C が 別 々 の 区
画 で 起 こ る と す る 。 そ れ ぞ れ の 濃 度 は a,b,c と す る (右 図 )。
( 1 ) 反 応 A→ C、 B→ C の 標 準 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 を そ れ ぞ れ ∆G0'A→ C
A→C
B→C
a, c
b, c
と ∆G0'B→ C と し て 、 右 図 の よ う に 区 画 化 さ れ た 細 胞 に お け る 両 反 応 の
自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 ∆G(1)A→ C と ∆G(1)B→ C を R, T, a, b, c を 使 っ て 表 せ 。
等しい体積に区画化された細胞において、
反 応 A→ C の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 : ∆G ( 1 ) A → C = ∆G 0
A→ C
反 応 B→ C の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 : ∆G ( 1 ) B → C = ∆G 0
B→ C
+ RT ln(c/a)
+ RT ln(c/b)
(2)区画がなくなった一様な細胞質で同じ反応が起こるとする(右
れ ぞ れ a/2、 b/2 と な る が 、 生 成 物 C の 濃 度 は c で 変 わ ら な い 。 こ の
A→C
B→C
区 画 の な い 細 胞 で の 反 応 A→ C と B→ C の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 ∆G(2)A→ C
a/2, b/2, c
図 )。 こ の と き 、 A と B の 濃 度 は 体 積 2 の 細 胞 全 体 に ひ ろ が る の で そ
と ∆G
(2)
0
B→ C
0
を 前 問 同 様 に ∆G 'A→ C , ∆G 'B→ C , R, T, a, b, c を 使 っ て 表 せ 。
区画化されていない細胞において、
反 応 A→ C の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 : ∆G ( 1 ) A → C = ∆G 0
A→ C
反 応 B→ C の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 : ∆G ( 1 ) B → C = ∆G 0
B→ C
+ RT ln(2c/a)
+ RT ln(2c/b)
( 3 ) 区 画 化 さ れ て い る と き の 2 反 応 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 の 和 ∆G(1)と 区 画 が な い と き の
2 反 応 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 の 和 ∆G(2)の 差 を 計 算 し 、 そ の 意 味 す る と こ ろ を 考 察 せ よ 。
R=8.315J/mol・K、 T=37℃ ( 0℃ = 273.1K) を 用 い て 有 効 数 字 3 桁 で 計 算 す る こ と 。
∆G ( 1 ) = ∆G ( 1 ) A → C + ∆G ( 1 ) B → C = ∆G 0 A → C + RT ln(c/a)+ ∆G 0 B → C + RT ln(c/b)
∆G ( 2 ) = ∆G ( 2 ) A → C + ∆G ( 2 ) B → C = ∆G 0 A → C + RT ln(2c/a)+ ∆G 0 B → C + RT ln(2c/b)
か ら 、 両 者 の 差 ∆G ( 2 ) ­ ∆G ( 1 ) を 計 算 す る と
∆G ( 2 ) ­ ∆G ( 1 ) = ­ RT ln4= ­3573 (J/mol)
つ ま り 、区 画 化 さ れ て い る 場 合 、1 モ ル ず つ の A、B か ら C へ の 化 学 変 化 で 約
3.6kJ 余 分 に 自 由 エ ネ ル ギ ー が 解 放 さ れ る 。 有 利 で あ る 。 し た が っ て 、 細 胞 内
を区画に分けて別々の反応に特化するとエネルギー的には有利となる。
平成 25 年度 M1「代謝生化学A」 再試験(1)・田原担当(2 枚目/全 2 枚)
解答
14.
代謝
整理番号
2014.2.13
氏名
2.代謝経路には「調節反応は経路の始めにある」という特徴がある。もし調節反応が経
路の終わりにあったとするとどのような不具合が生じるか想像して述べよ。
調節段階に負の制御(阻害)がかかったとすると、経路の終わりの方にある
この段階に至る全ての反応の中間代謝物が細胞内あるいはその反応の起こる
細胞小器官内に蓄積することになり、その分基質を浪費する。
3 . 細 胞 内 の 代 謝 で 得 た エ ネ ル ギ ー は 、 最 終 的 に AD P を リ ン 酸 化 し て AT P 合 成 す る た め
に 使 わ れ る 。 動 物 の AT P 合 成 に は 「 基 質 レ ベ ル の リ ン 酸 化 」 「 酸 化 的 リ ン 酸 化 」 が あ る 。
問 基質レベルのリン酸化は、解糖系とクエン酸回路にそれぞれ 2 反応、1 反応含まれる。
a. 解 糖 系 第 7 反 応 : 1,3­ビ ス ホ ス ホ グ リ セ リ ン 酸 → 3­ホ ス ホ グ リ セ リ ン 酸
b. 解 糖 系 第 10 反 応 : ホ ス ホ エ ノ ー ル ピ ル ビ ン 酸 → ピ ル ビ ン 酸
c. ク エ ン 酸 回 路 第 5 反 応 : ス ク シ ニ ル CoA→ コ ハ ク 酸
上 記 左 辺 か ら 右 辺 へ の 変 化 は い ず れ も 大 き な 負 の ∆ G が 伴 い 、 そ れ に よ っ て AD P リ ン 酸 化
が 起 こ る 。 次 の 記 述 は 生 体 反 応 で 大 き な 負 の ∆G が 得 ら れ る 反 応 つ い て 述 べ た も の で あ る 。
該 当 す る 反 応 a , b , c を 冒 頭 の ( ) に 入 れ よ( 複 数 の 場 合 あ り )。該 当 し な い 場 合 は
(
c
) チ オ エ ス テ ル 結 合 の 解 離 に 伴 う ∆G
(
X
) 隣 接 す る リ ン 酸 基 同 士 の 静 電 反 発 が 解 消 す る こ と に よ る ∆G
を入れよ。
( a,b ) 不 安 定 な リ ン 酸 化 合 物 か ら リ ン 酸 基 を 切 り 離 す こ と に よ る ∆ G
(
(
(
a
a
b
) カ ル ボ ニ ル 酸 素 と リ ン 酸 基 の 静 電 反 発 が 解 消 す る こ と に よ る ∆G
) 脱 リ ン 酸 化 に よ り 、 カ ル ボ キ シ 基 の 電 子 が 非 局 在 化 す る こ と に よ る ∆G
) ケ ト ・エ ノ ー ル 平 衡 に お い て 、 ケ ト 側 へ 強 く 偏 ろ う と す る こ と に よ る ∆G
4 . オ キ サ ロ 酢 酸 の N AD H に よ る 還 元 ( リ ン ゴ 酸 酵 素 反 応 ) の ∆ G 0 ' を 有 効 数 字 3 桁 で 求 め
よ 。 フ ァ ラ デ ー 定 数 F= 96485 J/mol・V と す る ( ∆G0'= ­nF∆E0'っ て 何 だ っ け ? )
オ キ サ ロ 酢 酸 + 2H+ + 2e­→ リ ン ゴ 酸 ( E0' = ­0.166 V)
N AD + + H + + 2 e ­ → N AD H ( E 0 ' = ­ 0 . 3 1 5 V )
還 元 剤 ( 電 子 供 与 体 ) が NADH、 酸 化 剤 ( 電 子 受 容 体 ) が オ キ サ ロ 酢 酸 と な
る反応を書くと、
オ キ サ ロ 酢 酸 + NADH+ H + → リ ン ゴ 酸 + NADH +
こ の 反 応 の ∆E 0 'は
∆E 0 '= E 0 ' 受 ­ E 0 ' 供 = ­0.166­(­0.315)= 0.149
し た が っ て 、 こ の 反 応 の 標 準 エ ネ ル ギ ー 変 化 ∆G 0 'は
∆G 0 '= ­n F∆E 0 '= ­2 96485 0.149
= ­28752.… ( J/mol)
∆G 0 '= ­28.8 kJ/mol