2014 生命物理化学 問題解説5章

生命物理化学
問題解説
5章
5-6 尿素 0.010 mol は 0.60 g であるから、0.010 M 溶液は溶液 1 L 中に尿素を 0.60
g 含む。溶液の密度が溶媒である水の密度(1.0 kgL-1)に等しいとすると、0.010
M 尿素溶液中の水の量は 999.40 g である。これから計算される質量モル濃度
は 0.010 mol/ 0.99940 kg = 0.010006 mol kg-1 となり、有効数字 2 桁では 0.010
mol kg-1 であって、モル濃度に等しい。
5-7 解
グルコース量
mol/mL 血液
g/mL 血液
mol/全身の血液
g/全身の血液
摂取前
7.78 ×10-6
1.40 ×10-3
3.89 ×10-2
7.00
摂取後
13.3 ×10-6
2.40 ×10-3
6.67 ×10-2
12.0
5-10 一定温度、一定圧力での理想気体の混合によるエントロピー変化
(a) 理想気体の混合は 2 種の気体の膨張を合わせたものと考えられる。
2V0 1
q
−wrev $
'
ΔSN2 = rev =
= & nRT ∫
dV ) T = nR ln 2 V
%
(
0
V
T
T
ΔSO2 も同じ値になる。全体のエントロピー変化は ΔSmix = ΔSN2 + ΔSO2
(b) Ar 2 mol, He 1 mol, H2 3 mol を混合すると、全体では 6 mol の気体になる。
上の問題 (a) と同様に Ar は 3 倍、He は 6 倍、水素は 2 倍に膨張したと考え
る。それぞれのエントロピー変化は
ΔSAr = nR ln 3 = 2 × 8.314 × 1.099 = 18.27 JK -1
ΔSHe = nR ln 6 = 1 × 8.314 × 1.792 = 14.90 JK -1
ΔSH2 = nR ln 2 = 3 × 8.314 × 1.099 = 17.29 JK -1
5-11 メタンとエタンの混合気体(溶体)のエントロピー(絶対エントロピー)
はそれぞれの物質のエントロピー(教科書付録2)に混合エントロピー(混
合によるエントロピー変化)を加えたものである。1 mol 同士の混合なので、
混合過程の体積変化は 2 倍である。解 427.21 JK-1
5-12 化学ポテンシャルの高低
(a) 水の融点においては氷 H2O(s) と水 H2O(l) は平衡にある。したがって、
µH2 O(s), 273K = µH2 O(l ), 273K 。
" ∂µ %
(b) $
= −S であり、一般に固体のエントロピー Ssolid は液体のエントロ
# ∂T '& P
ピー Sliquid より小さい。したがって、µ-T プロットは図 5・9(68−69 ページに
詳しい説明あり)のようになり、融点以下では液体すなわち水の化学ポテン
シャルの方が固体すなわち氷より高くなる。このことは融点以下では水から
氷への変化が起こることを示している。
(c) ベンゼンを溶媒とする 0.1 M トルエン溶液中のベンゼンの化学ポテンシャ
*
ルは µbenzene ( l ) = µbenzene
(l ) + RT ln xbenzene である。右辺の第 2 項は負の値なので溶
*
液中のベンゼンの化学ポテンシャルは純溶媒の化学ポテンシャル µbenzene
(l ) よ
り低い。
5-18 血液中の N2 にヘンリーの法則が適用できるとすると、血液中の N2 濃度は
平衡にある N2 の分圧に比例する。0.8 atm の分圧で 5.0 L の血液に溶けている
N2 の物質量は 5.6 × 10 −4 × 5.0 = 0.28 × 10 −2 mol 。分圧 4.0 atm で 5.0 L の血液に
溶けている N2 の物質量は 5.6 × 10 −4 × ( 4.0 0.8 ) × 5.0 = 1.4 × 10 −2 mol 。4 atm から
0.8 atm に移ったときに血液から放出される N2 ガスの物質量は 1.12 × 10 −2 mol
である。全圧 1.0 atm の大気圧下においてその体積は
(
)
V = 1.12 × 10 −2 × 0.0812 × 310 / 1.0 = 0.29 L
5-22 尿素は気化しないと考えてよい。平衡ではガラス鐘(ガラス板などの上に
かぶせて密閉するための器具)内の水の蒸気の化学ポテンシャルは両方のビ
ーカー中の水の化学ポテンシャルと等しい。したがって、両方のビーカー中
の水同士の化学ポテンシャルも等しいので、そのモル分率も等しい。それは
取りも直さず、両方の液の組成が同じになることを意味する。有効数字2桁
の計算をするので、水の蒸気の量は無視できる。したがって、2つのビーカ
ーの液を混合した液の組成を求めればよい。混合液は 15 mmol の尿素が 100
mL に含まれている。尿素の水への溶解の際の体積変化は無視してよい。尿素
のモル質量 60 g mol-1, 密度 l.32 g cm-3 を用いる。
5-27 カルボキシル基同士の水素結合はどのような条件下にその形成が促進され、
また抑制されるのだろうか。
5-28 水のモル凝固点降下定数 Kf は 1.86 K mol-1 kg である(表 5−2)。氷点下 20°C
で凍らないためには凝固点降下 ΔT は 20°C 以上でなければならない。
ΔT = K f ⋅ m2 = 1.86 ⋅ m2 > 20
これから、m2 = 10.8 mol kg-1 以上。6.5 L の水に加えるエチレングリコールの
量は、水 1 L = 1 kg として、エチレングリコールの分子量 62 から 62×10.8×
6.5 = 4.4 ×103 g 以上。エチレングリコールの密度 1.11 g/mL から、エチレン
グリコールの mL 数は 4.4×103 / 1.11 = 3.9×103 mL 以上である。
加えたエチレングリコールは水の沸点を上げることになり、それ自身も水
より気化しづらいので、夏に入れたままにしておいて不都合はない。
5-31 理想的なふるまいを示す溶液は、平衡にある蒸気の分圧 (PA) の純溶媒の
蒸気圧 (P*A) に対する比が、溶液中のその成分のモル分率に等しい。すなわ
ち、
PT = PA + PB = PA* ⋅ xA + PB* ⋅ xB
ここで、PT は蒸気の全圧を示す。2種類の溶液組成について式を立て、連立
方程式を解けばよい。問題では、蒸気圧が有効数字3桁、モル数が2桁で与
えられているが、モル数の有効数字も3桁とみなして計算する。
(解答:純粋
な A と B の蒸気圧はそれぞれ 197 mmHg と 401 mmHg)
5-32 298 K の水に対する酸素と窒素のヘンリー係数は表 5・1 から,それぞれ
773 および 1610 atm mol-1 kg である.0.20 atm の酸素分圧での酸素の濃度は
0.20 / 773 = 2.6 x10-4 mol kg-1,
0.80 atm の窒素分圧での窒素の濃度は 0.80 / 1610
-4
-1
= 5.0 x10 mol kg である.水 1 kg のモル数は 55.5 mol なので,酸素のモル
分率は 0.00026 / (0.00026 +0.00050 + 55.5) = 0.00026 / 55.5 = 4.7 x10-6, 窒素のモ
ル分率は 0.00050 / (0.00026 +0.00050 + 55.5) = 0.00050 / 55.5 = 9.0 x10-6 である.
コメント:(1) 水への溶解度は極めて小さく,モル分率は小さい.水中生物は
極めて効率よく酸素を取り込む仕組みを持っていると考えられる.(2) 酸素
の窒素に対するモル分率の比は空気中より水中の方が高い(酸素の方が溶
けやすい).
5-69 K+ イオン 1 mol の細胞外から細胞内
への輸送については
0.400
ΔG = RT ln
+ FΔV
0.020
= 7720 − 6760 = 960 Jmol−1
Na+ イオン 1 mol の細胞内から細胞外へ
の輸送については
0.440
ΔG = RT ln
+ FΔV
0.050
= 5600 + 6760 = 12400 Jmol−1
細胞内
細胞外
[K+]= 400 mM
[K+]= 20 mM
[Na+]= 50 mM
[Na+]= 440 mM
− 70 mV
0 mV
5-82 輸送によるギブズエネルギー変化は
0.12
= 3 × 8.314 × 310 × (−4.63)
12.3
= −35800 J
ΔG = nRT ln
細胞内
[Glc]= 0.12 mM
細胞外
[Glc]= 12.3 mM
Glc
3 mol